「3LDKの退去費用の相場はいくら?」
「床に傷をつけてしまったけど、敷金は返ってこない?」
「退去費用をめぐって、どんなトラブルがあるの?」
このようなお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、3LDKを退去する前に知っておきたい、3LDKの退去費用の相場・内訳、退去費用が高くなるケース、修繕費用の相場、「原状復帰」の考え方、退去費用についてのよくあるトラブル事例について解説します。
このページでわかること
1. 3LDKの退去費用の相場はいくら?
まずは、3LDKの退去費用の相場はいくらなのでしょうか?
結論からいうと、借主側の落ち度で傷や汚れができた場合は、修繕費用を払う必要があります。
普通に暮らしていたなら、退去費用を払う必要はありません。
しかしたいていは、後述する事情により、ハウスクリーニング代を払うことが多いようです。
ハウスクリーニング代は、地域や経年劣化などによっても変わってきますが、3LDKなら50,000~90,000円程度が相場になります。
退去費用は、一般的には敷金から差し引かれて、修繕費用などで上回った場合は、その分が新たに請求されます。
1-1. ハウスクリーニングとは?
賃貸における「ハウスクリーニング」とは、入居者が入れ替わる前後で、部屋をクリーニングすることです。
一言でハウスクリーニングといっても、管理会社や大家さんによって内容は全く異なります。
単に部屋を掃除するだけの場合から、壁紙やクロスの張替え・フローリングのワックスがけ・畳の交換まで行う場合もあります。
1-2. ハウスクリーニング代は払わないといけないのか
ではハウスクリーニング代は、借主が払わないといけないのでしょうか?
実は、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(法的拘束力はありません。詳しくは後述します。)には、ハウスクリーニング代は貸主が負担するという旨が明記されています。
ただしたいていの場合、ハウスクリーニング代は借主が負担するという内容の特約が、賃貸借契約書には記載されています。
仮にハウスクリーニング代の負担について裁判を起こした場合、ガイドラインに従っているので勝つ可能性もありますが、裁判にはお金や労力がかかります。
またハウスクリーニング代については、借主にも「退去する際に掃除をしなくてよい」というメリットがあります。
そのため、貸主が一方的に利益を得ているとも断言できないことから、特約が有効であると考えられる可能性もあります。
ハウスクリーニング代を払いたくない、または安くしたい場合は、まずは賃貸借契約書に特約があるか確認することです。
特約がない場合は、払う必要はありません。
特約がある場合も、ガイドラインを盾に、管理会社や大家さんに交渉する余地があります。
2. 3LDKの退去費用の内訳
3LDKの退去費用の内訳ですが、下記のものが入ってくる可能性があります。
- ハウスクリーニング代
- エアコンクリーニング代
- クロスの全面張替え代
- エアコンなどの設備の交換代
- 修繕費用
この中には、払うのが妥当なものと、そうでないものとがあります。
ハウスクリーニング代は解説したので、以下、エアコンクリーニング代から解説していきます。
2-1. エアコンクリーニング代は払わないといけないのか
まずエアコンクリーニング代ですが、先述のガイドラインによれば、退去時のエアコンクリーニング代は払う必要がありません。
ただし賃貸借契約書に、退去時のエアコンクリーニング代は借主が負担するという内容の特約がないかを確認し、特約がある場合はガイドラインを盾に交渉してみましょう。
2-2. クロスの全面張替え代は払わないといけないのか
次にクロスの全面張替え代ですが、退去費用が高くなるケースは、この費用が入っていることが多いのです。
先述のガイドラインによれば、普通に暮らしている限り、クロスの全面張替え代を借主が負担する必要はありません。
ただし、壁の釘穴やネジ穴(下地ボードの張替えが必要な程度)、結露の放置によるカビやシミ、台所のひどい油汚れ、喫煙(程度による)などによる損傷や汚れに対しては、借主が負担する必要があります。
ですがこの場合も、該当する部分のクロス張替え代だけで、全面張替え代を負担する必要はありません。
そして、クロスの全面張替えについては仮に特約があっても、過去の判例から、裁判を起こせば特約が無効と判断される可能性は高いようです。
管理会社や大家さんは、特約が記載された契約書に押印したのだから有効と主張するでしょうが、不当な請求については特約があっても無効とみなされることがあるのです。
クロスの全面張替え代は3LDKだとかなり高額になるため、管理会社や大家さんに交渉した方がよいでしょう。
2-3. エアコンなどの設備の交換代は払わないといけないのか
次にエアコンなどの設備の交換代ですが、これも先述のガイドラインによれば、払う必要はありません。
クロスの全面張替え代と同じく、大きな設備の交換代は仮に特約があっても、不当な請求として特約が無効と判断される可能性は高いのです。
2-4. 退去費用が高くなるケース
一般的に退去費用が高くなるケースとは、借主側が不注意などでつけてしまった傷や損傷に対して、修繕費用がかかる場合です。
具体例としては、下記などが考えられます。
- 壁の釘穴やネジ穴
- 引っ越しなどでできた、床の引きずり傷
- 結露やこぼれた水などの放置でできたカビやシミ
- 飲みこぼしなどでできたカーペットのシミ
- ペットがつけた壁・床・柱などの傷や臭い
- 掃除をしなかったためにできた台所のススや油汚れ
- タバコのヤニでできたクロスの変色や臭い
- 掃除をしなかったためにできた風呂・トイレの水垢や赤カビ
- 鍵の破損や紛失による取り替え
- 庭に生い茂った雑草の除去
いずれも、家をキレイに保つ義務を怠ったためにできたか、ミスや故意による傷や汚れになります。
修繕費用の相場は、傷や汚れの程度によって異なります。
3. 賃貸退去時の「原状復帰」とは?高額な費用請求にはご注意を!
「原状復帰」とは、賃貸マンションなどを退去するときに、入居時と同じ状態に部屋を戻して返すことです。
どこまで原状復帰するのかについて、範囲や箇所、貸主と借主の間での負担割合などを定めたルールが、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。
ただし、これは法律ではなく指針のため、法的拘束力はありません。
しかし、過去の判例などを踏まえて作られているため、裁判などでは有効な判断基準となります。
このルールにおいては、下記のように定義されています。
- グレードアップ:貸主が負担
- 経年変化や通常損耗:賃料に含まれる部分
- 善管注意義務違反(一般的に求められる程度の注意を払わなかった)・故意(わざと)・過失(不注意)による損傷:借主が負担
つまり普通に暮らしていれば、自然についてしまう傷や汚れ、劣化してしまう消耗分を回復する費用は、既に賃料に含まれているので、借主が退去時に負担しなくてよいことになります。
そのため、先述したようなクロスの全面張替え代などは、原状復帰の域を超えた、不当な請求とみなされることがあるのです。
費用請求があまりにも高額だったら、退去費用の内訳を調べて、管理会社や大家さんに交渉し、国民生活センターに相談してみるとよいでしょう。
4. 退去費用に関するよくあるトラブル事例
では、退去費用に関する具体的な事例を紹介していきます。
4-1. 壁にカレンダーを貼っていた跡(変色差)がある
Q.壁にカレンダーを貼っていたら、その部分だけ周りと比べて色が変わってしまいました。
A.カレンダーやポスターなどを壁に留めることは、通常の使用の範疇とされます。
そのために生じる壁の変色差は通常の損耗とみなされるため、修繕費用は貸主が負担すると考えられ、敷金は戻ってきます。
4-2. 床に家具を置いていた跡(へこみ)がある
Q.ベッドを置いていたら、床にベッドの脚のへこみができてしまいました。
A.ベッドを置いていたことで生じた床のへこみは通常の損耗とみなされるため、修繕費用は貸主が負担すると考えられ、敷金は戻ってきます。
4-3. 壁に冷蔵庫焼けがある
Q.冷蔵庫を置いていたら、その部分だけ壁が黒ずんでしまいました(冷蔵庫焼け)。
A.冷蔵庫を置いていたことで生じた壁の黒ずみ(冷蔵庫焼け)は通常の損耗とみなされるため、修繕費用は貸主が負担すると考えられ、敷金は戻ってきます。
4-4. クロスが少し剥がれてしまった
Q.家具がクロスにあたって、その部分だけポコッと剥がれてしまいました。
A.クロスはちょっとしたことで剥がれたり、傷がついたりしてしまうものです。
そのため経年劣化に含まれると基本的にはみなされるので、修繕費用は貸主が負担すると考えられ、敷金は戻ってくることが多いようです。
ただ、損傷具合によってケースバイケースではあるため、貸主との交渉が必要な場合も多くなっています。
4-5. 入居時の引越し作業で、床に傷がついてしまった
Q.入居時の引越しで、冷蔵庫を運ぶ際にフローリングに傷がついてしまいました。
A.冷蔵庫は脚が小さく重いので、比重がある一点にドッとかかり、床に深い傷がつきがちです。
床やフローリングについた大きな傷は借主負担となってしまうため、引越しの際には大きな傷がつかなかったかを必ず確認しましょう。
引越し時に確認して即交渉すれば、引越し業者に修繕費用を請求できることもあります。
4-6. 入居時からあった傷・汚れの修繕費用を求められた
Q.入居する前からあった傷や汚れについての修繕費用を請求されました。
A.自分がつけた傷や汚れではないので、本来は修繕費用を払う必要がありません。
ただし、その傷や汚れが入居前からあったものだと証明することが難しいため、トラブルになりがちです。
ガイドライン等がきちんと整備された現在では、このような「元々あった傷や汚れ」に関するトラブルが増えている傾向にあります。
そのため入居前には必ず、床や壁、ドアなどの目立つ場所、クローゼットや押入れなどの中、靴箱の中、キッチンのシンク下や棚の中など、室内の写真を日付入りで撮っておくようにしましょう。
特に、引越し時に床などに傷がつきやすいため、その際の証拠写真にもなります。
可能なら、入居時に貸主・借主がともに立ち会って、部屋の状況を確認できれば最善です。
さらに、管理会社によっては「現状確認報告書」という書類があります。
これは、入居時点での傷や汚れについて、借主が点検して記載し、管理会社に提出する書類です。
そういった傷や汚れがない場合も、個人的に日付入りで報告書を作成し、管理会社が受け取ってくれる場合は提出した方が、トラブルを避けるためにはよいかもしれません。
4-7. 退去するまでに時間がかかった
Q.すぐに引越したかったのですが、退去申請や手続きなどに、思った以上に時間と手間がかかりました。
A.通常、退去の何日前までには管理会社や大家さんに連絡するという内容が、賃貸借契約書には書かれています。
退去には、費用の精算や各種手続きなど思ったよりも時間と手間がかかるため、管理会社や大家さんへの退去の連絡・相談は早めにした方がよいでしょう。
5. 3LDKの退去費用の相場とトラブル事例まとめ
これまで解説したことをまとめてみます。
- 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、普通に暮らしていれば、退去費用を支払う必要はない。
- ただし、借主に落ち度がある傷や汚れについては、修繕費用を支払う。
- 賃貸借契約書に特約がある場合は、ハウスクリーニング代を支払うことが多い(3LDKの相場は50,000円~90,000円)。
- クロスの全面張替え代・エアコンなどの設備交換代は、特約があっても不当な請求により無効とみなされる可能性がある。
- 「原状復帰」とは、入居時と同じ状態に部屋を戻すことで、経年変化や通常損耗はすでに賃料に含まれていることから、借主がさらに負担する必要はない。
退去費用をめぐってはトラブルが起こることが多いので、不安に思ったり分からなかったりすることがあれば、1人で悩まずに国民生活センターや消費生活センターなどに相談するようにしましょう。
また、契約書をきちんと確認しておけばトラブルを避けられる事例も多いため、退去後に新たな家に入居するときには、賃貸借契約書に退去費用についてどんな特約が記載されているかを確認し、不明な点があれば交渉する習慣をつけましょう。




