引越しをすることになったら、住民票の異動や各種手続き、色々なお役所関連の手続きが必要になります。
中でも「健康保険証の手続き」は、引越し後14日以内にしなければならない、という決まりがあります。
国民健康保険(国保)に加入している人は、引越し手続きは早急にしなければなりません。
そこで、引越しの際に気をつけなければならない「健康保険証の手続き」について詳しくご説明します。
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このページでわかること
1. 健康保険と国民健康保険の違い
健康保険証と言っても、健康保険と国民健康保険では、手続きに大きな違いがあります。
自分の健康保険証を見てみると、自営業者であれば「国民健康保険」、大手企業グループのサラリーマンなら「〇〇健康保険組合」、公務員であれば「〇〇共済組合」と書かれているでしょう。
事業経営、個人事業主、フリーランス、アルバイトの場合は、国民健康保険に加入することになります。
健康保険と国民健康保険は、保険料にも違いがありますが、他にも様々な違いがあります。
1-1. 健康保険
健康保険は、会社勤めをしている人が加入する医療保険になります。
中小企業等で働く従業員やその家族が加入する協会けんぽ、大手企業やグループ企業で運営している健康保険組合などがあります。
保険料は、会社(事業主)が半分負担してくれるので、加入者の出費も半分で済みます。
・協会けんぽ(全国健康保険協会)
中小企業などで働く従業員とその家族が加入することができる健康保険です。
以前は政府管掌健康保険という名称で、社会保険庁が運営していました。
ですが、平成20年10月1日からは「全国健康保険協会」が運営しています。
・健康保険組合連合会
大手企業等が独自に各健康保険組合を設立し、保険組合の連合会に加入しています。
<健康保険組合の一例>
- IHIグループ健康保険組合
- 電力総連関係の各電力会社の健康保険組合
- 新日鐵住金健康保険組合
- あいおいニッセイ同和健康保険組合
など
・人材派遣健康組合
人材派遣社員のために設立された組合で、平成14年5月1日に設立されました。
派遣社員の雇用契約が終了後に、次の契約までの間「被保険者資格」を喪失することになってしまいますが、一定の要件を全て満たす場合は被保険者として資格を継続することができます。
・共済組合
国家公務員、地方公務員、私学の教職員が加入する医療保険です。
各種共済組合が運営しています。
・船員保険
船員として船舶所有者に雇用される人が加入する健康保険です。
1-2. 国民健康保険
国民健康保険は、個人事業主や事業経営をしている人、フリーランスの人、健康保険・船員保険・共済組合等に加入していない人が加入する医療保険になります。
市区町村が保険者となり運営を行っています。
保険料は、加入者が全額自己負担します。
1-3. 国民健康保険組合
国民健康保険と名前が似ていますが、国民健康保険組合という医療保険もあります。
国民健康保険組合も、国民健康保険法をもとに運営されています。
国民健康保険組合は、社団法人などの組織が保険者となって運営している医療保険団体です。
こちらは、一般社団法人日本建設組合連合、公法人東京美容国民健康保険組合団体、公法人東京都医師国民健康保険組合、公法人東京芸能人国民健康保険組合など、全国で100以上の団体が加入しています。
国民健康保険組合には、312万人が加入しています。
1-4. 高齢者医療
75歳以上の方および、65~74歳で一定の障害の状態にあることにつき後期高齢者医療広域連合の認定を受けた人が、後期高齢者医療制度を利用しています。
2. 会社員の場合
会社員の場合は、引越しの時健康保険証の住所変更などの手続きとして、自分で役所に出向くことなどはありません。
会社勤めをしていて社会保険に加入している人は、引越しの時の保険・年金の手続きは、雇用主がまとめて代行してくれます。
引越しで住所を変更した時も、個人で保険協会に連絡を取って手続きしなくても、会社の人事担当者や事務員さんが手続きをしてくれるので、必要書類に記入して提出するだけで済みます。
保険証や年金手帳の提出なども必要なく、同じものをそのまま継続して使用します。
それぞれ住所を記入する欄がありますが、二重線を引いて手書きで変更して使います。
何度も引越しをして、新しい住所を書くスペースがない場合は、上からシールを貼ってその上に記入しましょう。
基本的に会社からもらった保険証は、会社の保険証のスタイルが変更にならない限り自分で修正してずっと同じものを使うことができるので、その点は気楽です。
かかりつけの医療機関では、住所変更をしたことを伝えてくださいね。
3. 国民健康保険の被保険者で、同一市区町村内での引越しする場合
国民健康保険の被保険者の場合は、引越しをする時はきちんとした手続きをしなければなりません。
市区町村をまたがない引越しの場合は、転居届の提出をすれば手続きは完了です。
手続きには期限があり、引越しをした日から14日以内に転居届を提出します。
市区町村の役所で転居届を提出する時に、「国民健康保険の手続きも一緒にお願いします」と申請すれば、窓口で対応してくれます。
転居届や国民健康保険の変更手続きは、役所以外にも各出張所でも受け付けてもらえます。
・国民健康保険の住所変更をしなかった場合のデメリット
市町村をまたぐ住所変更の場合は、住所変更をきちんとするという意識があっても、同一市町村の中での引越しだから、そのまま同じ保険証が使えるのではないかと思う人もいるでしょう。
実際、医療機関で保険証をそのまま使うことは可能です。
しかし、保険証の切り替えで新たに発行された場合、転送不要郵便で届くため、新しい保険証が自分の手元に届かない可能性があります。
また、保険料についてのお知らせなどの重要な郵便物が、変更前の住所に届いてしまい、受け取れなくなってしまいます。
何より、保険証が必要だという時に手元に保険証がなければ、医療機関での受診は実費になってしまいます。
その場合、役所で新たに手続きをしなければならないのですが、「いつから引越しをしていたのか」など遡ることになり、かなりややこしい手続きが必要です。
同一市町村の中での引越しの際も、国民健康保険の住所変更は必須です。
きちんと転居届を提出して、国民健康保険の住所変更手続きをしましょう。
4. 国民健康保険の被保険者で、他の市区町村内へ引越しする場合
国民健康保険の被保険者で、市町村をまたぐ引越しの場合の手続きは以下の通りです。
4-1. 転居前の市町村での手続き
どんな時も、引越しとなったらまずは役所へ行きます。
そして転出届、または転居届を出さなければなりません。
転出届や転居届は「これまで住んでいた市町村から別の市町村や場所へ引越しします」という手続きです。
転居届を出さなければ、引越しに関する住所変更や健康保険証の手続きなどもできなくなります。
最優先事項として、忘れないように手続きしましょう。
・引越しが決まったらすること
引越し先が決まったら、まずは最寄りの市役所・区役所の窓口で「転出届」の申請をします。
転出届の受理が済んだら、「転出証明書」を発行してくれます。
この「転出証明書」が、引越し先での色々な手続きをする際に必要になります。
転出証明書は必ず大事に保管しておきましょう。
転居届の手続きは、引越しの14日前からすることができます。
また転出届を提出する時は、他にもいくつか必要な書類を提出するように言われる場合があります。
市役所・区役所で本人、または世帯主が届け出をする場合、以下のものは必ず持って行きましょう。
・市役所・区役所の手続きで必ず必要な持ち物
- 本人確認書類(免許証・健康保険証・パスポートなど)
- 印鑑
その他、人によっては高齢者医療の受給者証、介護保険関係の受給者証、障害者福祉サービスの受給者証、乳幼児医療証なども求められることがあるので、該当者が家族にいる場合は事前に準備しておきましょう。
印鑑登録をしている人は、「印鑑登録証」の住所変更手続きもしなければならないので、窓口で一緒に申請しましょう。
ちなみに届け出を行うのは、本人以外に世帯主や委任状を立てた代理人でも可能です。
また転出届は、郵送の手続きも可能です。
この場合、インターネット環境とパソコン、プリンターが必須になります。
・転出届の郵送手続きの方法
1. 転出届は、市区町村役場のホームページにある申請書をダウンロードする
2. 必要事項を記入して郵送で提出する
申請書とともに、本人確認書類のコピー、自分の宛名を書いて切手を貼った返信用封筒を同封してからポストに投函します。
窓口での手続きは代理人にしてもらうことも可能ですが、郵送手続きの場合は、本人以外は申請できません。
送った内容に不備があった場合は受理してもらえないので、封筒に封をする前に必ず中身を確認して、漏れがないか確認しましょう。
転出届の申請書を郵送してから「転出証明書」が手元に届くまでに1週間前後ほどかかってしまいます。
そんなに日数を待てない時や、急いで転出証明書が欲しい時は、窓口で手続きをする方が早いですね。
市役所・区役所など役所の窓口は、休日・夜間も対応している場合もあります。
最寄りの役所に問い合わせてみてください。
転出届を出すことで、その市区町村での国民健康保険の資格を喪失し、脱退することになります。
引越しの際は、世帯全員の国民健康保険証を返納します。
転出届を出したら「転出証明書」を受け取ります。
転出証明書は、引越し先での手続きに必要になります。
国民健康保険は、居住地の市区町村役場が管轄しています。
引越しによって国民健康保険の管轄である市区町村役場が居住地区でなくなる場合、元の市区町村役場で国民健康保険の「資格損失手続き」を行い、一度脱退した後、転居後の市区町村役場で加入手続きを行なう必要があります。
4-2. 引越し先の市町村での手続き
引越しが済んだら、引越し先の市役所・区役所で転入届を提出します。
引越し後の14日以内に、引越し先の市役所または区役所で「転入届」を提出します。
転入届を提出する際に、「国民健康保険の手続きも一緒にお願いします」と窓口で伝えると、国民健康保険の手続きをしてくれます。
・保険料の払い込み方法
手続きの際、新住所でこれから保険料の支払いをどうするかを決めます。
多くの場合は、保険料の納付書が自宅宛に郵送されます。
「今後は口座振替を希望する」という場合は、引越しの手続きの際に窓口で申請することが可能です。
5. 月の途中で引越しの場合、保険料はどうなるの?
月の途中で引越しした場合、保険料は引越し元に払うのか、引越し先に払うのか気になりますね。
「前のところと新居の市町村とで、二重払いにならないのか」という心配もあるかと思われます。
国民健康保険の保険料は月ごとの請求なので、基本的に引越しの手続きによって二重払いになってしまうようなことはありません。
例えば、1月10日に国民健康保険の手続きを行ったら、前年度12月分までは転居前の市区町村役場に支払います。
そして、1月分からは転居後の市区町村役場に支払うことになります。
しかし万が一、何かの手違いで二重払いになってしまった場合は、遡って2年までは返金してもらえるので、きちんと計算して請求しましょう。
6.国民健康保険の保険証はいつもらえる?
国民健康保険の場合、保険証は原則当日発行してもらえるようになっています。
転出届や転入届の手続きが全て終わったら、本人確認とともにその場で新しい保険証がもらえる場合と、後日新しい保険証が郵送される場合とがあります。
国民健康保険の場合、自分で手続きをすること、市役所で直接取り扱う保険になるので対応が早いということは、大きなメリットです。
7.まとめ
引越しの時はただでさえバタバタしてしまいますが、役所の転入届・転出届と同じく健康保険証の手続きも必須です。
会社で働いているサラリーマンやOLさんは社会保険に入っているため、会社が手続きを代行してくれるので、自分で特に手続きをすることはありません。
でも国民健康保険に入っている人は、転入届とともに国民健康保険の手続きをしなければなりません。
特に、同一市町村内で引越しをした場合は、転居届や国民健康保険の住所変更の手続きを後回しにしがちです。
しかしそうすると、保険証の切り替え時期に保険証が受け取れなくなることもあるので、必ず住所変更をしておきましょう。
きちんと変更の手続きができていない場合、病院に行ったら実費で支払わなければならない場合もあるので、気をつけて下さいね。




