賃貸住宅では、貸主である大家さんから立ち退きを求められることがあります。
もちろん立ち退きとなればあなたは新しい住居を探さなければいけなくなりますし、長く住み続けていれば環境が変わることに対して不安を感じることもあるでしょう。
では借主であるあなたが大家さんから立ち退きを求められたとき、どんな場合であれば「正当な事由」として受け入れる必要があるのでしょうか?
今回は賃貸の立ち退きの正当な事由の具体例を挙げながら、立ち退きを求められたときの対応の仕方や立ち退きまでの期間、さらに立ち退きに関する相談先についても詳しく説明していきます。
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1. 賃貸立ち退きの正当事由とは?
賃貸住宅であっても、大家さんから入居者であるあなたに「この部屋を立ち退いてほしい」という申し出がある場合があります。
もちろんその中には「これは求めに応じなくても問題にならない」とい事由もあります。
ただし次のような事由の場合は「立ち退きの正当事由」として認められます。
この場合は入居者であるあなたは大家さんの求めに応じる必要があります。
あなたが家賃を滞納し続けている
賃貸住宅ですから、毎月の家賃をきちんと支払うことは入居者であるあなたの義務です。
もちろんそのことは賃貸契約を交わす時にもきちんと説明があったことでしょうし、契約書にも「毎月〇日までに家賃○○万円を支払うこと」という一文も含まれています。
それなのにあなたが家賃を支払わないだけでなくその状態が続いているのだとすれば、明らかな「契約違反」となります。
これは立ち退きの正当な事由として認められますから、速やかに立ち退きに応じなければいけません。
ちなみに「家賃の支払い期日を数日過ぎてしまった」「家賃を1度だけ滞納してしまったがすでに滞納分は支払いが済んでおり、その後は契約通りに支払いを続けている」という場合は、大家さんとあなたとの間の信頼関係が壊れるほどの状況とは言えません。
このようなケースで大家さんから家賃の滞納を理由に立ち退きを求められた場合は、「立ち退きの正当な事由」として認められることはほとんどありません。
契約内容と違う目的で賃貸住宅を利用している
賃貸住宅では、「住宅として利用する」を目的として賃貸契約をしています。
ところが住居として借りている賃貸住宅を契約者であるあなたが住居以外の目的で使っているのだとすれば、これは大家さんサイドから見れば「立ち退きの正当な事由」と判断できます。
たとえば「住居として借りている部屋で民泊を運営している」「住居のはずなのに商業用店舗として利用している」などの場合は、明らかに住居以外の目的で使用しているといえますよね?
この場合はあなたが契約違反をしているということになりますので、立ち退きを求めらても仕方ありません。
建物の老朽化で建て直しが必要な場合
築年数が数十年単位の賃貸住宅の場合、住人の安全が確保できないほど建物が老朽化している場合があります。
建物の老朽化は見える部分以外にも起こります。特に柱や梁などの腐食・破損は目に見えない部分です。
もちろんこのような建物は、耐震性・耐火性が国の定めた基準を大幅に下回っている場合があります。
このような状況の建物では、部屋のリフォームのような見える部分の修繕だけでは問題が解決しません。
建物そのものを取り壊し、新たに建て直すなど大掛かりな工事が必要になります。
このように建物の老朽化が原因で大規模な修繕または建て替えを行うという場合は、大家さんから立ち退きを求められます。
この場合は「立ち退きの正当な事由」として認められます。
もちろん長年住み続けたあなたとしては「このままでも十分に住むことが出来る」と思うでしょうが、住み続けることはあなた自身にも命の危険にさらされるリスクがあります。
ですから立ち退きに応じることが、将来的に考えればあなたにとってもメリットとなります。
長期転勤先から大家が戻ることになった
戸建て住宅を賃貸住宅として貸している大家さんの中には、長期転勤を理由に持ち家を賃貸住宅として貸し出している場合があります。
大家さんも転勤中は転勤先で会社から社宅が提供されていたでしょうが、転勤期間が終われば持ち家があるのですから当然社宅の提供はありません。
このようなケースで大家さんから立ち退きを求められた場合には「正当な事由」として応じるのが一般的です。
その理由としては、「転勤先から戻った時、大家さんの住む家がない」という点です。
「転勤先から戻る」という具体的な理由がある上に「持ち家以外に住む場所がない」という状況では、大家さんの申し出には「立ち退きにおいて正当な事由がある」と判断されることが多いです。
大家さんの経済的な理由で建物を維持できなくなった場合
大家さんが建物を売却するということもあります。
その中には「経済的な理由からやむなく建物を手放さなければならなくなった」というケースもあります。
さすがにこの場合は「立ち退きの正当な事由」として認められるケースが多いです。
特に最近は相続税の基礎控除額が大きく変わったこともあり、相続の関係で賃貸受託を手放さなければならないケースが増えています。
かつての相続税は「お金持ちの税金」でした。
でも法律の改正によって現在の相続税は「みんなの税金」になっています。
しかも家屋・土地は不動産としての価値があります。
いくら老朽化している古いアパートであっても不動産としての価値を評価されますので、相続税の対象となります。
そのためどんなにボロボロのアパートでも死亡した大家さんの家族が相続すれば、相続した大家さんの家族は相続税の納付義務が出てきます。
さらに不動産が関係すると、預貯金の相続よりもはるかに相続税の額はあがります。
その上相続を放棄することが出来る期間を過ぎてしまえば、相続人である大家さんの家族は「正当な相続人」となり相続税を納付する義務が出てきます。
そのため高額な相続税を支払うために、やむなく賃貸住宅を手放すというケースが今増えています。
このようなケースで大家さんが立ち退きを求める場合は、「危機的な経済状況を改善する」という具体的な理由が示されていますので立ち退きの正当な事由となります。
2. 賃貸立ち退きまでの期間
契約違反による立ち退きの場合
あなたが賃貸契約を違反したことが理由で立ち退きを求められた場合、大家さんが求める期日までに立ち退く必要があります。
もともとあなたの契約違反がなければ立ち退きとならなかったケースですし、他の住人の安全を守るために一刻も早く状況を改善しなければならないこともあります。
ですから、契約違反が発覚してから短期間のうちに立ち退きを完了させなければならないこともよくあります。
立ち退きの正当な事由として認められる場合
立ち退きの正当な事由として大家さんサイドから入居者であるあなたに契約の解約を求める場合、契約終了(立ち退きが完了する日)の6か月前までに申し入れがあります。
これは「借地借家法」の中できちんと決められており、最低でも6か月前までに解約の申し入れがなければ正当な立ち退きの請求として法律上認められません。
本来であれば賃貸契約の解約は、契約期間が満了となった時に初めて発生するものです。
ところが立ち退きの正当な事由があって大家さんサイドから解約を申し入れるのであれば、入居者であるあなたが新しい住居を見つけ退去するまでの時間が必要になります。
正当な事由があるといってもあくまでも「大家さんからの申し入れ」なのですから、入居者であるあなたに負担のかからないように最低限配慮するということが大家さんの義務にあります。
そのため立ち退きを求められたとしても、最低6か月は退去までの猶予期間としてそのまま住み続けることが出来ます。
3. 賃貸の立ち退きに関する相談先
「立ち退きの正当な事由」の判断は、入居者の契約違反が原因の場合はトラブルになりません。
違反したあなたが悪いのですから、求めに応じて速やかに退去するだけです。
でも大家さん側からの要望で立ち退きを求められた場合、その理由が「正当な事由」として認められるかどうかを判断するのはとても難しいです。
立ち退きに応じたとしても立ち退き料を支払ってもらえないケースもありますし、立ち退きに応じる条件があまりにも契約者であるあなたに不利な内容の場合もあります。
でも賃貸住宅の場合、大家さんが直接交渉にあたるということはほとんどありません。
あくまでも管理を委託されている不動産会社が立ち退き交渉にあたります。
こうなると不動産会社に相談しても、何の意味もありません。
このような場合は、やはり法律に詳しい弁護士に相談するのが一番です。
でも弁護士に相談するとお金がかかりますよね?
そんな時には「法テラス」を利用するのがおすすめです。
法テラスは国が設立した団体で、正式名称を「日本司法支援センター」といいます。
ここでは立ち退きなどのトラブルも相談することが出来ます。
的確な対応の仕方を教えてもらうこともできますし、立ち退きトラブルに関する情報や役立つサービスについて教えてもらうこともできます。
また経済的な余裕がない場合は、弁護士費用の立て替えをしてくれるサービスもあります。
ただ法テラスは利用者が多いため、利用するには相談日の予約を取ることから始めます。
また相談時間は1回30分となっていますので、出来るだけ時間内に的確なアドバイスをもらうためにもあらかじめ相談内容をまとめておくことが重要です。
4. まとめ
賃貸住宅の立ち退きには、「借主であるあなたが原因の立ち退き」と「大家の都合による立ち退き」の2タイプに分かれます。
大家さんの都合による立ち退きの場合は、正当な事由でなければ応じる必要はありません。
ただ、賃貸住宅や契約に関する細かなことは専門的な知識が必要です。
突然立ち退きを迫られて困った時は、安心して相談できる機関を利用することがおすすめです。




