賃貸契約のトラブルを回避するために連帯保証人には印鑑証明が求められる理由

入学や入社などで生活環境が変わる春先は引っ越しも多く、賃貸に関連する悩みや不安も増える季節です。

初めて賃貸契約を結ぶ新社会人や大学生は、賃貸契約時に求められる書類の多さに驚くこともあると思います。

特に、連帯保証人や印鑑証明を求められることには「引っ越すだけなのに…?」と驚きと疑問を持つのではないでしょうか?

そんな疑問にお答えしつつ、連帯保証人や印鑑証明に関連するトラブルについて、わかりやすく解説します。

1. 賃貸の連帯保証人が印鑑証明を必要とする理由は?

まず多くの人が持つのが「連帯保証人なのに印鑑証明がなぜ必要なの?」という疑問だと思います。

借主の本人確認は理解できても、連帯保証人までなぜ?となるのも無理はありません。

連帯保証人は、借主とほぼ同等の責任を負う重要な立場なので、同等の信用も必要になると考えると少し理解出来るでしょうか?

連帯保証人というのはただの保証人とは全く違い、借主と同等の非常に大きな責任を抱えることになります。

そのため、連帯保証人には親族がなることが一般的ですが、それでもなりたがらない人が多く、連帯保証人が見つからずに困り果ててしまうというケースも少なからずあります。

こうした理由から、連帯保証人の"なりすまし"という行為が発生してしまうことがあります。

連帯保証人が見つからないので、架空の人物を記載したり、本人の了承を得ずに勝手に誰かの住所氏名等を記載してしまうのです。

もしもそうなった場合、連帯保証人に請求をしても費用の回収が非常に困難になり、借主本人も見つけられない場合は、貸主が泣き寝入りするしかなくなってしまいます。

こうした理由から、連帯保証人のなりすましを回避するために、本人確認が出来る印鑑証明が求められるようになったのです。

2. 賃貸のトラブルと連帯保証人の関係

連帯保証人は、借主と同等の義務を負うことになる重要な立場です。

借主が賃料や共益費などを支払えなくなり、未払いが続いた場合に貸主は、連帯保証人に同額の請求が出来ます。

連帯保証人になった以上は、自分に全く関係のないトラブルであろうとも、支払わなくてはいけなくなります。

では、どのようなトラブルによって、連帯保証人に請求がいくことが多いのでしょうか?

よくあるトラブルと連帯保証人の関係について説明していきます。

・賃料や共益費の未払い時

これが最も多いケースです。

借主が何らかの理由で、毎月支払うべき費用を支払えなくなった場合、貸主は連帯保証人に請求を行います。

多くの場合、未払いが溜まって額が大きくなってからまとめて連帯保証人に請求がいくので、突然高額の請求をされて驚く、ということが多いようです。

契約時に、連帯保証人が責任を負う期間が2年間と記載されていて、契約期間が終了した後でも連帯保証人に未払い分の家賃の請求がされます。

契約期間終了後でも、高額の未払い家賃を連帯保証人が支払うように裁判所が判決を下したケースもあります。

連帯保証人になった以上は、借主次第では大きな負債を抱える可能性が出てくるというわけです。

・修繕費の支払い

賃貸契約では、賃料の他にも様々な費用がかかってきます。

具体的には、据え置きの家具や内装を住民の過失により破壊してしまったり、ガラスを割った場合の修繕費や退去時の清掃費用などが挙げられます。

突発的な費用は支払いが滞るケースが多く、特に退去時の費用は、後から請求しても支払われないことが多いのです。

こうした様々な費用も、連帯保証人に請求することが出来ます。

借主と同じ支払い義務を負うわけなので、借主に行った請求のすべてを連帯保証人に出来ると考えて間違いありません。

3. その他のリスク回避~印鑑証明書の意味とは~

前述したよくあるトラブルの他にも、賃貸契約には様々なトラブルがついて回ります。

その多くは、借主や連帯保証人の印鑑証明を要求することで、リスクを下げることが出来ます。

・借主失踪時の未払金のリスク回避

たとえば、物件を借りた本人が突然失踪して、すべての支払が滞ったとします。

単純な未払いではなく、借主が行方不明になると勝手に退去させることも出来ないので、借主側には大きなマイナスになります。

別の借主を探すことも出来ないので死活問題になりますし、強制退去させるにしても家財の処分費用や清掃費などがかかってきます。

そんな時に請求する先が連帯保証人になるわけですが、もしもこの連帯保証人までがなりすましだったらどうなるでしょうか?

借主本人もいない、連帯保証人も存在しないとなると、未払い分の家賃やかかった費用の請求が非常に困難になります。

こうしたリスクを回避するために、連帯保証人が実在する本人であるという確認が、非常に重要になるのです。

・住民死亡時の様々な費用の未回収リスクの回避

借主の過失(火の不始末など)により、借りていた物件が家事になったり、隣の部屋まで燃やしてしまったとします。

そして借主が死亡してしまった場合、保険で賄えなかった分の修繕費は、連帯保証人がしっかりと存在していれば請求することが出来ます。

また、自殺や病死の場合の清掃費や修繕費も、連帯保証人に請求が可能です。

この場合も、連帯保証人がなりすましであった場合は請求が困難です。

保険で賄うことができれば問題ありませんが、不足分が出た場合に連帯保証人にも請求が出来ずに修繕が出来ない、という状態になってしまいます。

・不正利用やイメージ低下リスクの回避

大切な物件に他人を住まわせることになるので、住人の素性というのは貸主にとって非常に重要になります。

貸した相手が反社会的勢力や、狂信的で危険行為を行うような宗教団体だったらどうなるでしょうか?

周辺住民からの苦情が出たり、もしかしたら物件内で犯罪が発生してしまうこともあるかもしれません。

近年はネットでの情報拡散力が非常に高いので、一度でも危険な人物や集団を住まわせてしまうと、物件のイメージが一気に低下します。

退去する住人が出たり人気が低下するので、賃料を下げて結果的に収益が減り、更に質の悪い住人が集まるということになりかねません。

借主がどのような人物かを確認することはなかなか困難ですが、印鑑証明があれば本人確認は出来るので、リスクを下げることが可能になります。

借主本人はもちろん、連帯保証人の印鑑証明も提出してもらうことで、少なくとも本名や住所の確認ができるので、明らかな危険人物は回避することが出来ます。

このように印鑑証明によって、連帯保証人や借主の本人確認をすることはリスクを大きく下げることにつながります。

なりすましを避けることが最も大きな印鑑証明の役割ですが、借主や連帯保証人の素性を調べることにも役立つのです。

4. まとめ

このように連帯保証人の印鑑証明は、貸主のリスクを回避するために必須と言えます。

借主側としては連帯保証人を探すだけでも大変なのに…と思うかも知れませんが、信用を得られるのでメリットにもなります。

もちろん、印鑑証明なしの借主と連帯保証人すべてが信用できないわけではありません。

しかし貸主にしてみれば、印鑑証明を取るのはさほど時間もかからないので用意してもらう方が賢明ですし、不安なく大切な物件を貸し出すことが出来ます。

連帯保証人と印鑑証明が用意できない場合は、保証会社を利用するという手段もあります。

保証会社は連帯保証人と同等の役割を担ってくれるので、どうしても物件を貸したい相手が連帯保証人と印鑑証明を用意出来ない場合は、これを利用するという道もあります。

様々な詐欺や犯罪が横行する近年なので、収入源と不動産を守るためにも、必ず貸主と連帯保証人の本人確認は行うようにしましょう。

不景気・低収入・雇用の不安定が続くほど賃貸物件のトラブルは増えてしまうので、大切な物件は自分の手で守っていく必要も出てくるでしょう。