賃貸住宅の場合、退去をするときに原状回復をするのが入居者の義務です。
原状回復は「入居した時と同じ状態に戻すこと」を言いますが、どの範囲まで元に戻すのかが曖昧なためトラブルが起こることもあります。
特にガスコンロはコンロの汚れだけでなく、コンロ台や周辺の壁も油などの汚れもあります。
そのため「どこまでの範囲が入居者の負担なの?」と悩む人が多いです。
そこで今回は、退去時の原状回復でトラブルになるおそれがある「ガスコンロ」について解説! 借主であるあなたが負担しなければならない範囲や費用の相場などもまとめて紹介します。
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このページでわかること
1. 賃貸の原状回復の範囲はどこまで?【ガスコンロ編】
賃貸住宅では、退去する際に入居した当時と同じ状態に戻してから引き渡すというのが入居者の義務です。
この作業を「原状回復」というのですが、どの範囲まで入居者が負担しなければならないのかについては明確に決められていないのが現状です。
そこでまずはガスコンロの原状回復について、「貸主(大家さん)の負担になるもの」と「借主(入居者であるあなた)の負担になるもの」に分けて説明してみます。
1-1. 貸主負担になるもの
経年劣化によってついたキズ・汚れ
ガスコンロも使い続けていれば当然汚れやキズなどができます。
長く住み続けていれば、どんなに普段からこまめに手入れをしていたとしてもキズが付いたり汚れが付いたりします。
国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」というものがあります。
ガイドラインによると、原状復帰で大家さんが負担する対象は、基本的に「日常生活の中で一般的な使い方をしていれば当然できるキズ・汚れ」としています。
この考え方を原則とするならば、入居者であるあなたが必要最低限の掃除・管理をした上で付いてしまったキズや汚れについては大家さんである貸主が原状復帰の費用を負担するといえます。
経年劣化によって故障したガスコンロ
ガスコンロにも寿命があります。
ですから使い続けていれば故障することもあります。
国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、基本的には、経年劣化によって生じたキズなどは貸主の負担となりますが、例外があります。
住宅の「設備」として設置されているガスコンロが故障した場合は、そのことがわかった時点で管理者に連絡することが入居者の義務とされています。
この連絡があるのとないのでは、負担の割合が大きく変わることがあるのです。
住宅設備になっているコンロの故障を報告せず、放置していたのであれば、借主(あなた)にも費用負担の責任が生じる場合があります。
ですから、本来であれば設備として含まれるガスコンロが故障したのであれば、その費用の負担は「大家さん」にありますが、故障したことを報告せずそのまま放置していたのであれば、借主にも費用の請求がくる場合もあります。
また、故障を報告をしないで、原状回復の確認の時に「実は少し前から故障していたんですよ」とあなたが申し出たとしても、大家さんの立場から見れば「費用を負担したくないための言い訳なのでは?」と考える可能性もあるので、注意が必要です。
1-2. 借主負担になるもの
ガスコンロのクリーニング
設備としてガスコンロが含まれているのであれば、ガスコンロについた汚れをすべてきれいにするところまでは入居者であるあなたの義務になります。
少しでも費用を節約したいのであれば自分で汚れを落とす方法がありますが、どこまでの汚れを落とすことが負担とならない許容範囲なのかはっきりしません。
ですからあとから高額な修繕費用を請求されたくないのであれば、ピカピカになるまでガスコンロのクリーニングまで行うのがおすすめです。
コンロ台の汚れ
ガスコンロが設備に含まれていない場合は、入居者がガスコンロを準備し設置します。
あくまでも退去時の原状回復は「入居前の状態に戻す」が原則ですから、あなたが準備したガスコンロは撤去する必要があります。
でも撤去した後のコンロ台は、意外と汚れが溜まっています。
普段のお掃除ではガスコンロを移動して掃除することはほとんどありませんので、撤去して初めてその汚れのひどさに気が付く人も多いようです。
ちなみに規格の合わないガスコンロを持ち込んだ場合、コンロ台に焦げ跡がついてしまうことがあります。
この場合は、入居者であるあなたが修繕する必要がありますので、原状回復費用が発生します。
コンロから換気扇までの壁の油汚れ
換気扇はガスコンロの上に設置されています。
換気扇は空気の入れ替えをするために使うのですが、調理の際に起きる蒸気の中には油なども含まれます。
調理をする時は換気扇を使いますので、油などを含んだ蒸気は換気扇に向かって上がっていきます。
そのため普段は汚れが気にならない換気扇周辺の壁にも、実はガスコンロ周辺と同じように油汚れがついています。
こういった汚れをキレイに落とすことも、ガスコンロの原状回復では「借主が負担する範囲」と考えます。
2. 賃貸のガスコンロ修繕費用の相場
2-1. ガスコンロ本体の取り換え費用
ガスコンロといっても、使用しているガスの種類によって規定のガスコンロが違います。
ですからガスコンロ本体の取り換え費用を請求された時には、ガスコンロの種類によってはかなりの高額になることもあります。
賃貸住宅用のガスコンロといっても、2口のコンロと3口のコンロでは値段が違います。
また、トップ部分の素材によっても金額が違います。
最近では高級志向の賃貸住宅も増えていますので、ガスコンロもかなり高額なものを設置していることもあります。
またガスコンロを設置する場合、壁からの距離にも規定があります。
規定されたとおりの距離を守ってガスコンロを設置していないと、安全にガスコンロが使用できません。
場合によっては故障してしまいます。
そのため正しい使い方・規定を守らずにガスコンロを壊してしまった場合は「あなたが故意に壊してしまった」と判断されることがあります。
修理だけでなく取り換えが必要になった場合は、管理会社から請求された金額をあなたが支払うことになります。
壊れてしまったら、速やかに管理会社またはオーナーさんへその旨を連絡しましょう。
2-2. ガスコンロ周辺のクリーニング
ガスコンロなどのハウスクリーニングは「キッチンクリーニング」に分類されます。
キッチンクリーニングは、掃除をする箇所によって費用が変わるのが一般的です。
キッチンクリーニングをメインに取り扱っている業者であれば、1か所あたり1.5~2万円が相場です。
もちろんガスコンロの大きさや汚れ具合などによっても料金は変わりますので、「コンパクトなガスコンロ」「汚れが比較的目立たない」という場合は1万円前後で対応している業者も多いです。
退去時にキッチンクリーニングが必要ないと判断されるとほとんど請求されませんので、まずは退去前にご自身で隅々までキレイにすることを強くおすすめします。
キッチンがキレイなだけでも、退去時のクリーニング費用を算出してくれる担当さんの印象が全然違いますよ。
3. 賃貸退去時のガスコンロ修繕でよくあるトラブル
ガスコンロ周辺の汚れに関するトラブル
ガスコンロが設備に設置されている・されていないにかかわらずトラブルになりやすいのが「ガスコンロ周辺の汚れ」です。
ガスコンロそのものの汚れについては設備に含む・含まないにかかわらず入居者の負担ということはわかるはずですが、「ガスコンロ周辺の汚れも入居者の負担になる」というのはあまり知られていません。
ガスコンロは調理器具ですから、その周辺にはいろいろな汚れが付きます。
油汚れなどはわかりやすいのですが、汚れを避けるために設置した防火マットが焦げて壁に焦げ跡がついてしまうこともあります。
これも原状回復の対象となります。
ただ入居者であるあなたの立場に立って考えるならば、「毎日料理していればこれくらいの汚れが付くのは当然でしょ?」という気持ちもわかります。
とはいえ賃貸の原状回復においてはこうした汚れや焦げ跡は入居していたあなたが原因でできたものですから、退去する時にはきちんと修繕して引き渡しする必要があります。
こうしたトラブルは比較的多いのですが、「規格にあったガスコンロを使っている」「規定通りにガスコンロを設置している」であれば未然に防ぐことが出来ることがほとんどです。
ですから退去時にトラブルになりたくないのであれば、きちんと正しく安全にガスコンロを使うということが大事なのです。
4. まとめ
賃貸物件のガスコンロは、どこまでが入居者側が負担する範囲なのかがわかりにくいためトラブルになりやすいです。
でも基本的に「入居者が故意に壊した」「日常的な手入れを行っていなかった」ということでなければ入居者に対して原状復帰の負担を求めることはほとんどありません。
とはいえ貸していただいた大家さんへのお礼の意味も含め、きちんときれいな状態にしてから返却することは心がけておきたいですね。




