「特別区民税」という言葉をご存知ですか?
「区民税」という言葉から、“東京都の区民が払わなければいけない税金なのだろう”というイメージはできるものの、どんな税金なのか説明するのはむずかしいですよね。
しかも、「特別」とついているところがクセモノ。
「区民が払わなければならない特別な税金?」
と思う方もいらっしゃるかと思います。
結論からいいますと、特別区民税は、なんら“区民だけが払わなければいけない特別な税金”ではありません。
でも、そのことを納得するためには、特別区民税についてちょっと理解する必要があります。
ご安心ください。ポイントはとっても簡単です。
この記事では、特別区民税について、図を活用して、わかりやすく説明しています。
また、区民税や都民税とのちがいについても解説しています。
「特別区民税は特別な税金なのか」
「区民税とどうちがうのか」
「都民税とどうちがうのか」
以上のような疑問をもたれた方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
(2019年9月11日更新/2018年9月13日作成)
このページでわかること
1. 特別区民税とは
そもそも特別区民税とは何なのでしょうか?
まずはここからですよね。
特別区民税とは、東京23区に住んでいる人が納めなければいけない税金で、住民税の一種です。単に「区民税」と呼ばれる場合もあります。
つまり、港区や中央区に住んでいる人が納める住民税のことを「特別区民税」と呼ぶんですね。
ただし、一点だけ注意点があります。
通常、住民税は地域内の個人だけでなく企業などの法人も納める必要があります。
しかし、この特別区民税は、企業などの法人は納める必要がありません。
ですから、港区や中央区に本社を置いている企業は、住民税を区に納めることはないんです。
そうなると「都内にある企業は税金が安いの?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。
代わりに同程度の「都民税」を納める必要があります。
(参考:https://blogos.com/article/132629/)
1-1. 特別とは
それでは、いよいよ冒頭の疑問に迫ってみましょう。
なぜ「特別」区民税というのでしょうか?
単に「区民税」ではダメなのでしょうか?
法人が納める必要がないから「特別」なのでしょうか?
こうした疑問のヒントは国語辞典や百科事典のなかに見つけることができます。
辞書サービス「コトバンク」を活用してみましょう。
特別区民税(とくべつくみんぜい)
東京都の特別区が賦課する住民税。市町村民税に相当する。区民税。
(小学館「デジタル大辞泉」)
https://kotobank.jp/word/%E7%89%B9%E5%88%A5%E5%8C%BA%E6%B0%91%E7%A8%8E-582888
上述のとおり、東京都の「特別区」の住民税だと記載されていますね。
つまり、「特別区民税」の「特別」というのは、「特別区」の「特別」なんです。
では、特別区とは何でしょうか?
もうおわかりと思いますが、この特別区が「東京23区」のことなんです。
特別区(とくべつく)
東京都の23区。特別地方公共団体の一つで、原則として市に準ずる扱いを受ける。区議会を置く。
(小学館「デジタル大辞泉」)
1-2. 区民税とのちがい
特別区民税とは、東京都の特別区の住民税のこと。
そして、特別区とは東京23区のことでした。
だから、特別区民税を「区民税」と呼ぶのもOKなんですね。
特別区民税と区民税という言葉のあいだに、ちがいはありません。
区民税のほうがわかりやすいかもしれませんね。
ただ、注意点があります。
特別区は特別地方公共団体の一つですから、べつに東京23区だけとは限らないという点です。
つまり、特別区の住民税である特別区民税も、必ずしも東京23区の住民税にとどまらない可能性があるんです。
じっさいに、大阪都構想では、複数の特別区を設置することが検討されています。
大阪都構想が実現したら、東京23区以外でも、区民税を納める必要のある地域がでてくるかもしれません。
(参照:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/43084)
1-3. 住民税とは
特別区民税とは、「東京23区の住民税」のことでした。「区民税」とも呼ばれます。
それでは、そもそも「住民税」とは何でしょうか。
この点に関しては、ご存知の方が多いと思いますが、ねんのため確認しておきますね。
住民税とは、市区町村などの地方自治体が徴収する税金(地方税)で、エリア内に住んでいる住民や、エリア内に事業所がある企業などに課されるもの。
納められた税金は、地域の行政サービスに活用されています。
特別区民税は、この住民税の一つ。
東京23区が区内の住民や企業から集めて、区内の行政サービスに活用しているんですね。
東京23区の住民税はこれだけではありません。
特別区民税のほかにもう一つ、都民税と呼ばれるものがあります。
つまり、東京23区の住民税には、①特別区民税と、②都民税の二種類があるんです。
一方、東京23区以外では、住民税は、またちがった形になります。
たとえば、大阪府や神奈川県などの道府県では、住民税として、①市町村民税と②道府県民税を納める必要があります。
また、八王子市や町田市といった東京23区以外ですと、住民税は①市町村民税と②都民税という構成になります。
各種住民税について表にすると以下のようになります。

もうおわかりですね。
特別区民税は、ほかの地域の「市町村民税」に相当し、都民税は、ほかの地域の「道府県民税」に相当するんです。
先に引用した辞典にも「市町村民税に相当する」と書かれていました。
特別区民税は、名前こそちがうものの、実質的には市町村民税とほぼ同じなんです。
大阪市や八王子市に住んでいる人が、大阪市や八王子市に市町村民税を納めるのと同じように、港区や中央区に住んでいる人は、港区や中央区に特別区民税を納める必要があるということなんです。
なお、特別区民税の税額は以下の二つの方法で計算されます。
所得割と均等割です。
所得割とは、前年の課税所得で計算される金額で、税率は6%です。
均等割は、定額で加算される金額で、一律3,500円です。
特別区民税=均等割(3,500円)+所得割(6%)
1-4. 都民税とは
それでは、都民税についても確認しておきましょう。
都民税も住民税の一つで、東京都内に住んでいる住民や、都内に事業所がある企業などに課される税金です。
さきの表でもわかるように、ほかの地域の「道府県民税」に相当するものですね。
ただ、企業(法人)の場合は、すこし事情がちがいます。
先に説明したように、23区内にある企業(法人)の場合、特別区民税(市町村税に相当)が課されません。
ですから、その分、同等の税金が都民税として課税されます。
つまり、23区内にある企業の都民税は、23区外にある企業の道府県民税に比べて多いんです。
それだけ、ほかの地域に比べて、東京都は多くの住民税収を得ていることになります。
なお、都民税も、特別区民税と同じように、均等割と所得割で計算されます。
所得割は4%、均等割は1,500円です。
都民税=均等割(1,500円)+所得割(4%)
2. 特別区民税・都民税がかかる場合
以上からわかるように、特別区民税と都民税、あわせて住民税となり、住民に課税されます。
それでは、どのような人に課税されるのでしょうか。
この点についても確認しておきましょう。
特別区民税・都民税は一定の所得がある方にかかります。
また、その年の1月1日に都内に住所がある方が課税対象です。
都内に事務所や家屋敷がある方は、均等割の税金を納めますが、所得割は住んでいる地域で納めることになります。
3. 特別区民税・都民税がかからない場合
ただし、“原則あるところに例外あり”。
特別区民税・都民税が非課税になる場合もあるんです。
以下の条件にあてはまる場合は、特別区民税・都民税が非課税になります。
- 生活保護法により生活扶助を受けている方
- 障がい者・未成年者・寡婦又は寡夫で、前年の合計所得金額が125万円以下、このうち給与所得者の場合は年収204万4000円未満の方
- 前年の合計所得が条例で定める額以下の方
「前年の合計所得が条例で定めた金額以下の方」というのは、具体的には、控除対象配偶者や扶養親族がいる場合、各35万円+本人分35万円+21万円の金額が所定金額以下の方です。
たとえば、本人と扶養家族の親族が3人いる4人世帯では、35万円×4人+21万円=161万円が所定金額になります。
つまり、この場合、個人年収が161万円以下であると、非課税になるんですね。
したがって、控除対象配偶者及び扶養親族がいないと、個人年収が35万円以下の場合も非課税になります。
また、特別区民税・都民税のうち、“所得割のみ”非課税になる方がいます。
- 控除対象配偶者又は扶養家族がいる場合、前年の所得金額が、35万円×本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計人数+32万円以下
具体的には、4人家族で本人と扶養家族の親族が3人いる家庭では、35万円×4人+32万円=172万円となります。
つまり、個人年収が172万円以下の場合は、所得割が非課税になるんです。
4. 特別区民税・都民税の申告をする人とは?
住民税は市区町村が確定申告書や給与支払報告書などを基に税額を計算し、納税者に通知し、納税します。
しかし、正確な課税を行うために住民税の申告を必要としています。
会社で給与所得を受けている人は会社で特別徴収をし、毎月の給与から税金分を差し引かれ、毎月納税しています。
それ以外の給与所得ではない個人事業主やフリーランスの方は確定申告を行わないとなりません。
この場合は申告したあとに納税金額の記載された納付書が送られてきますので、年4回に分けて指定の金融機関や役所にて納めます。
確定申告を行っていない方で、前年中に収入があった方は申告が必要で、
- 営業、不動産、配当による収入や他の収入があった方
- 給与収入の他に年間20万円以上の収入があった方
- 勤務先から給与支払報告書を提出されていない方
- 医療費控除、寄付金税額控除などの控除を受ける場合
- 公的年金を受給し、さらに年金以外の収入があった場合、源泉徴収票に記載された以外に控除を受ける場合
といったケースで申告が必要になります。
5. 特別区民税 都民税の支払い方法
納税方法には、普通徴収(納付書・口座振替による納付)と給与からの特別徴収、年金からの特別徴収があります。
5-1. 普通徴収による納税
事業所得者などが申告をした後に送られてくる納税通知書に納付金額が記載されています。
それを通常6月、8月、10月、翌年の1月の4回に分けて納税します。
支払い方法は口座振替、自動払込ができます。
納付書を金融機関、郵便局に持参し手続きをします。
支払い書を持参し納税金額が30万円以下の場合、コンビニでも支払い可能です。
支払い金額が30万円以下の場合はさらに、携帯電話を使ったモバイルレジでの支払いも可能です。
窓口でも支払い可能です。
金融機関・郵便局・区役所税務課・各地域の特別出張所の窓口でも納税ができます。
5-2. 特別徴収による方法
給与所得者の納税は、会社にて特別徴収額決定通知書により給与支払者(特別徴収義務者つまり会社)を通じて税金の金額が通知されます。
なので、毎月の給与から住民税分を差し引きされて各市区町村に納税します。
特別徴収は12回、毎月の給与から徴収されます。
年金受給者の方の住民税も公的年金の支払者から支払いの際に住民税分を差し引きされて各市区町村に納入します。
6. まとめ
特別区民税・都民税についてまとめました。
税金は分かりにくい部分が多いので、控除を受ける際に知っておいた方が良いことが多いこと、扶養家族や控除対象になるものは何なのかしっかりと把握しておくと毎年得するようになります。
仕組みをしっかり理解して生活に役立ててください。
身近な税務署に相談することも可能です。
各税務署で無料相談も行っているので是非興味ある場合は行ってみるのも価値があるでしょう。




