不動産取引のうち、土地の賃貸契約書には「印紙税」が必要です。
ただ「税」とついていることからわかるように、これは税金です。
ですから「面倒だから貼らない」とか「ちょっと多めに貼っておこう」ということはできません。
では不動産の賃貸契約の「印紙税」にはどんな意味があるのでしょうか?
そこで今回は土地・建物の賃貸契約書に関する印紙税について分かりやすく解説!
「そもそも印紙税とは何?」という疑問から実際の使い方・額などまでわかりやすく解説していきます。
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1. 印紙税とは?
印紙税は、経済活動にともなって作成される文書(課税文書)に課せられる税金のことです。
課税文書を作成した人が支払う必要があり、文書に切手のような印紙を張り付けて納付します。
この印紙税は不動産の取引でも必要になり、とくに「契約書」に関して課税が問題になります。
どうして契約書に税金が必要なの?
税金の納付の仕方というと「お金を払う→納付書が発行される」が一般的ですよね?
ところが印紙税は税金なのに領収書や契約書のような文書に張り付けて支払います。
でもこれが正し印紙税の納付の仕方です。
印紙税を張り付けなければいけない書類は、領収書や契約書のほかにもあります。
そしてこのような文書のことを「課税文書」と言います。
もちろん不動産においても領収書・契約書以外に課税文書となるものはあります。
課税文書は実際には保管しておくものが多いので「印紙を貼らなくてもバレなければ問題ないのでは?」と思うかもしれません。
でもこれはダメです。
印紙税は税金なのですから、課税の対象となる場合は正しく納付(貼り付け)しなければいけません。
もちろん税金ですから正しく納付されなかった場合にはペナルティがあります。
特に不動産の契約は取引金額が大きいですから、「知らなかった」「うっかり忘れていた」では済まされません。
不動産で課税文書の対象となるもの
不動産の取引といえば「土地・建物を買う(売る)」「土地・建物を借りる(貸す)」「建物を建てる」「住宅ローンを組む」「建物の設計をお願いする」があります。
これらの取引に課税文書が必要になります。
土地・建物を買う(売る)に関する課税文書
印紙が必要になる書類(課税文書)は、「売買契約書」「売渡証明書」があります。
契約が成立しお金が支払われたならば、「領収書」に印紙が必要になります。
「建物を建てる」に関する課税文書
印紙が必要になる書類(課税文書)は「注文請書」「建築請負契約書」になります。
契約が成立しお金が支払われたならば「領収書」に印紙が必要となります。
「住宅ローンを組む」に関する課税文書
印紙が必要になる書類(課税文書)は「金銭消費賃借契約書」になります。
「建物の設計をお願いする」に関する課税文書
印紙が必要になる書類(課税文書)は「注文請書」「設計契約書」になります。
契約が成立しお金が支払われたならば「領収書」に印紙が必要となります。
2. 土地の賃貸契約書と建物の賃貸契約書の印紙税について
建物の賃貸契約書の場合
賃貸物件の契約書(賃貸借契約書)は課税文書ではありません。
つまり「印紙税がかからない書類」となります。
ただし建物が建っている敷地について「借りる」「貸す」の契約が加わる場合は、「土地の賃借権の設定に関する契約書」とみなされます。
これは国税局が示す「印紙税額一覧表」に記載された文書とみなされ、印紙税がかかります。
土地の賃貸契約書の場合
土地の賃貸物件契約書(土地賃貸借契約書・土地賃料変更契約書)は、課税文書です。
これは国税局が示す「印紙税額一覧表」の第一号文書にあたります。
3. 土地の賃貸契約書の印紙税の額について
土地の賃貸契約書にかかる印紙税は、取引金額(契約書に書かれている契約金額のこと)によって違いがあります。
印紙税が1万円未満の場合
第一号文書とみなされる課税文書(土地賃貸借契約書を含む)には、印紙が必要です。
契約書に書かれた金額が1万円未満であれば課税の対象ではありませんから印紙は不要です。
ただし次の場合は、以下の印紙税がかかります。
| 契約書に書かれた契約金額 | 印紙税 |
| 1万円以上10万円以下 | 200円 |
| 10万円を超え 50万円以下 | 400円 |
| 50万円を超え 100万円以下 | 1,000円 |
| 100万円を超え 500万円以下 | 2,000円 |
| 契約金額が書かれていない場合 | 200円 |
印紙税が1万円以上の場合
一般的な土地の賃貸借契約では、印紙税が1万円を超えることがほとんどです。
これは契約書に書かれている契約金額が高額であることが関係します。
ただしこれも正しく納付しなければ、借りる側・貸す側の両方にペナルティが課されます。
| 契約書に書かれた契約金額 | 印紙税 |
| 500万円を超え 1,000万円以下 | 1万円 |
| 1,000万円を超え 5,000万円以下 | 2万円 |
| 5,000万円を超え 1億円以下 | 6万円 |
| 1億円を超え 5億円以下 | 10万円 |
| 5億円を超え 10億円以下 | 20万円 |
| 10億円を超え 50億円以下 | 40万円 |
| 50億円を超えるもの | 60万円 |
税務上の措置が受けられる場合がある
土地の賃貸借契約書にかかる印紙税については、特別措置によって非課税となることがあります。
例えば東日本大震災で被災した人が契約書を作る場合は、非課税の対象となるケースがあります。
また自然災害などで被災した人が契約書を作る場合も対象となることがあります。
ただし被災したのが平成28年4月1日以降であるという条件が付きます。
そのほかにも特別措置によって契約書を作るときに印紙税の対象から外れるケースがあります。
詳しくは国税局ホームページを確認するか、直接管轄の税務署でご相談ください。
印紙税を納付せずに契約書を作った場合のペナルティ
あらかじめ決められた印紙税の納付をせずに賃貸借契約書を作った場合には、厳しいペナルティが待っています。
そのペナルティは通常の印紙税額の3倍というものです。
ちなみにどれくらい金額に違いが出てくるのか、一覧にしてみました。
| 契約書に書かれた契約金額 | 通常の印紙税 | 過怠税(ペナルティを受けた場合) |
| 1万円以上10万円以下 | 200円 | 600円 |
| 10万円を超え 50万円以下 | 400円 | 1,200円 |
| 50万円を超え 100万円以下 | 1,000円 | 3,000円 |
| 100万円を超え 500万円以下 | 2,000円 | 6,000円 |
| 500万円を超え 1,000万円以下 | 1万円 | 3万円 |
| 1,000万円を超え 5,000万円以下 | 2万円 | 6万円 |
| 5,000万円を超え 1億円以下 | 6万円 | 18万円 |
| 1億円を超え 5億円以下 | 10万円 | 30万円 |
| 5億円を超え 10億円以下 | 20万円 | 60万円 |
| 10億円を超え 50億円以下 | 40万円 | 120万円 |
| 50億円を超えるもの | 60万円 | 180万円 |
印紙税を多く払い過ぎた場合
ミスがあってはいけないと思って多めに印紙税を納付してしまった場合、印紙課税過誤納確認申請をすれば過払い分が返金されます。
納付額と納付した額が数百円程度の誤差であればそれほど気にならないかもしれませんが、土地の契約金は高額ですから印紙税も高額になります。
本来1万円で済むところを2万円納付したとなればそれは大きな問題ですよね?
もちろんこのようなケースの場合には、きちんと手続きをすることで過払い分は戻ってきます。
ちなみにこの手続きは契約書を作った日から5年以内が申請期限となっています。
4. まとめ
不動産の賃貸借契約には、必ず賃貸借契約書が作られます。
この契約書には課税文書として印紙税を納めなければならないケースがあります。
しかも課税文書の場合は、契約書の数だけ印紙税が発生します。
不動産関係では通常借主・貸主の2通が必要ですので、それぞれの契約書に印紙税がかかります。
また納付に関するペナルティは双方ともに受けます。
ですから少しでも費用を抑えようとして片方だけ印紙を貼るなんてことをすれば、印紙が貼られていない契約書を持っている側だけがペナルティを受けるのではなく共同でそのペナルティ(過怠税)を支払うことになります。
建物に関しては原則として非課税ですが、契約の内容によっては課税対象となります。
ちょっとややこしくて面倒な話ですので、分からないことがある場合は契約の仲介をしてくれる不動産会社に相談してみるといいですよ。




