民法上、連帯保証人になれるのは一体誰でしょうか。
正解は、原則「誰でも」保証人になることができます。
たとえ収入が無かったとしても、全く関係のない第三者であったとしても、連帯保証人になることができます。
連帯保証人とは、あくまで債務者が債務を弁済できなかった場合に、代わりに債務を弁済する人ですから、債務者がきちんと弁済をしていれば、登場する機会はありません。
約束したことを履行するのは当たり前のことなので、基本的には債務者本人が弁済することになりますから、連帯保証人が支払うということは通常はありえないので、原則的には「誰でも良い」という結論に到達します。
しかしながら、自分自身に本来的な弁済義務はないのだから、連帯保証人になっても構わないと考えるのは少し危険な考え方になります。
ここで注意してほしいのが、民法上の「保証人」と「連帯保証人」の違いです。
この2つは法律的意味が大きく異なります。
まず「保証人」(以下、通常の保証人のことを「保証人」といいます)の場合、債権者から請求があった場合に「先に債務者本人に請求してください。」と言うことができますが、連帯保証人にはこれができません。
さらに、保証人であれば、「債務者の財産を簡単に処分することができるのだから、先に処分してください。」と言うこともできますが、連帯保証人にはできません。
これを、「補充性」といいますが、保証人には認められるのですが、連帯保証人にはありません。
他にも保証人が2人以上いた場合、保証人であれば分別の利益(例えば、2人で100万円の保証をしていた場合だと1人あたり50万円になります)があります。
しかし、連帯保証人にはこれもありません。
連帯保証人が2人以上いた場合、債権者は各連帯保証人もしくは全員に対して、全額もしくは一部の弁済を請求することができます。
(もちろん債権者が2倍額を受領できるわけではありませんが)
「連帯保証人」とは、それだけ責任の重い制度になります。
当たり前ですが、連帯保証人自身がお金を借りたわけではありませんが、法律的には「ほぼ同義」といった扱いをうけることになります。
次に、この制度は誰のための制度かを考えてみると、より理解しやすくなります。
この制度は、債権者のための制度です。
(この制度があることによって、債務者が物件を借りやすくなったりするということもあるので、債務者にとってもありがたい制度ではありますが)
たとえ収入のない人であったとしても、全く関係の無い第三者であったとしても、債権者さえ納得しているのであれば、連帯保証人になることはできます。
例えば、債権者が連帯保証人を用意した場合、もし債権を回収できなかったとしたら、困るのは債権者自身です。
その債権者が、それでも良いというのなら別にかまわないということになります。
しかしながら通常は、債権者は債権の回収をまず考えるので、債務者に連帯保証人を用意するように請求します。
この場合、債務者はきちんと弁済できる連帯保証人を用意しなければなりません。
そのため、収入が一定以上ある人や親族にお願いすることが多くなります。
収入やその他の条件は、法律において明確な基準があるわけではありませんが、各不動産会社や貸主会社は、ある一定以上の基準を設けていることがほとんどです。
今回は、賃貸借契約において妻が連帯保証人になれるのか、なるための基準について説明していきます。
このページでわかること
1. 賃貸の連帯保証人は自分の妻ではダメ?
妻を保証人で記載しようとしたら、不動産仲介会社の人に「別の方でお願いします」と言われた。
「なんで!?そもそも賃貸で連帯保証人になれる人ってどんな人なの?」
という方へ、法律的な面と、大家さん(管理会社)からの目線で解説します。
1-1. 賃貸契約で連帯保証人になるための基準とは
では、実際の賃貸契約の際、連帯保証人は妻にすることはできるのでしょうか?
連帯保証人とは、「借主が支払いできなかった場合に、代わりに連帯保証人が支払いをする人」です。
契約者に何かあった場合、その人に代わって支払いをしなければならないので、ある一定以上の収入は必要になってきます。
そして、責任をしっかりと取らなければならないのですから、「行為能力」が備わっていることが求められるので、「成年者」である必要があります。
「成年者」とは、現在の民法では、20歳以上もしくは結婚経験のある未成年者と定められています。
(結婚経験ということになるので、離婚し20歳未満の方は民法上「成年者」になります。)
未成年者や成年被後見人等の制限行為能力者は、連帯保証人になることができません。
ということは、法律的には妻も連帯保証人なれる、ということになりますね。
しかし、断られることがほとんどです。
1-2. 妻ではダメな理由
妻ではダメな理由は、連帯保証人としての責務を果たせない可能性が高いため、認めていないことが多くなります。
まず第一に、通常夫婦は同居する前提で、物件を賃貸借することになります。
しかし、「住む場所が同一の者は、保証人になることができない。」と定めている大家さんや不動産管理会社が多いため、同居するために借りるという場合においては、配偶者は保証人になることはできません。
次に、もし借主が家賃を支払えなくなって夜逃げした場合、妻だけは家にいるというのは少し考えにくいですよね。
通常は、一緒にいなくなっている可能性が高いものです。
そうなると、貸主は家賃の回収は困難になります。
さらに収入という面から考えても、通常は夫婦で一つのお財布になることが多いはずなので、もし夫が支払いができなくなったときには、妻も支払いができなくなっている可能性が非常に高いと思われます。
以上の点から考えてみると、大家さんや管理会社の判断次第ということにはなりますが、一般的には認められるケースはとても少ないといわざるを得ないでしょう。
これは、法律の問題とは違う面の話なのです。
2. 連帯保証人になるための収入基準とは
連帯保証人になるための収入の基準はあるのでしょうか?
こちらにおいても、明確な基準というものは存在しませんが、一般的にはある一定以上の収入が求められます。
借主が賃料を支払わなかった場合、代わりに保証人が支払わなければならないので、一般的には連帯保証人にはある一定以上の収入や資産が求められます。
ご高齢の方で、収入が年金のみの場合は、断られる可能性もあります。
2-1. 支払い能力の有無
これは貸主にとって一番重要な要素となるので、かなり厳格に判断されます。
ようやく見つかった連帯保証人候補の方が、残念ながら支払い能力の点でなれなかったという話もよく聞きます。
自営業の方等ですと、何年か分の確定申告書等の提出を求められることもあります。
2-2. 年収と賃料の相関関係
一般的には、年収の3分の1が賃料相当額といわれています。
なので、年収300万円の方であれば、年間100万円=月にすると約8万円が妥当な金額になります。
ただし、この基準のみをクリアしたからといって、必ずしも連帯保証人になれるとは限りません。
あくまで、一つの判断基準となります。
3 家族が外国人、または海外在住なら?
3-1. 家族が外国人の場合
家族が外国人であったとしても、法律上は問題なく連帯保証人になることはできます。
ただし、日本に常駐していることが条件として求められる可能性があります。
その方が本国に帰ってしまった後に債権を回収するのは非常に難しくなるので、貸主としてはそのリスクは避けたいと考えるのは当然です。
3-2. 家族が海外在住の場合
連帯保証人が海外在住の場合、貸主が緊急に連絡を取りたいとき等に連絡を取ることができない可能性が高いため、認められない可能性が高くなります。
4. まとめ
以上をまとめると、連帯保証人には、日本に住んでいる配偶者以外の親族で、なおかつ年間家賃の3倍以上の収入のある方がなれる、ということになります。
連帯保証人になれるかどうかで迷ったときには、自分自身が貸主の立場になって考えてみてください。
もし何かあったときに、その人から債権の回収が可能と考えることができるのなら、大丈夫かもしれませんが、回収不能と考えるのなら難しいでしょう。
どうしても連帯保証人が見つからない場合は、保証会社を利用するのが一般的な解決法になっています。
通常、家賃の30〜100%程度を最初に支払うことで、連帯保証人を用意しなくても、賃貸借契約を締結することのできる物件が多くあります。
現在、連帯保証人不要の物件が多数あります。
まずは不動産会社に相談してみましょう。
もしかしたらこれからは、不動産賃貸で連帯保証人の制度は少ない部類に入っていくかもしれませんね。




