PTA役員には強制力はない! 知っておくべきPTAの基礎知識と、上手な断り方

「PTA」と聞くと、みなさんはどんなイメージを持つでしょうか?

もちろん、子供の学習環境をより良くするために保護者同士で協力し合うという、明確な目的を持った歴史のある組織です。

しかしながら、現代になり働き方や家庭環境が多様化する中で、「現実的でない」「できれば役員はやりたくない」という意見も聞かれるようになりました。

そうなると、自らは望まないのにも関わらず、PTA役員に半ば強制的に選ばれてしまう方が出てきてしまいます。

では、PTA役員就任に強制力はあるでしょうか?

実は、PTAの組織の加入にも強制力はないのです。

今回は、PTAの知っておくべき基礎知識と役員に選出されてしまったときの上手な断り方についてまとめました。

しっかり読んで、PTAについての知識を身に付けておきましょう。

1. 断ることができない!? PTA役員の強制力とは?

2017年の話ですが、「PTA早くなくなれ、なくしてしまえ」の投稿事件のことはご存知でしょうか?

あるPTAの役員が、PTA集会に「仕事だから集会に出席できない」と発言したところ、「皆やってきたことなのに何故できないのか」と仕事の方を休むように言われたことを掲示板に書き込んだのです。

この投稿は、最初はライブドアニュースで取り上げられ話題になり、SNSなどを通じて拡散し、非常に大きい話題となりました。

そもそもこれは、きっかけの一つにしか過ぎませんが、「PTA役員を断ることができないのか」という議論はこれまで何度もありました。

海外と違って日本の風習は「和」を非常に重んじる文化であることもあり、「子供がお世話になっている学校に対して積極的に協力するのは当然」という「空気」に対して、こういった意見を表立って発言する親が少数派であり、また学校側に面と向かって発言するということはあまりなかったように思います。

インターネットの普及により、匿名で少数派の意見でも発言できるようになったため、表面化されたのです。

2. PTAは任意団体であり加入自体も強制ではない

では、PTA役員になることに対して強制力はあるのでしょうか?

結論から言いますと、「PTAは任意加入団体であり、保護者には入会の自由がある」ということになります。

一般的な加入団体と同様に、PTA役員になることに強制力はありません。

そういったことを行っているPTA団体があれば、それは誤りです。

しかしながら、保護者に対してわざわざ「PTAは一般団体と同様に任意団体であるため、入会を選べる自由がありますが、加入しますか?」と問うことの方がむしろ稀で、細かい字の説明文を1枚渡されて、「みなさん加入して当然ですし、積極的に役員をやるべきです」というケースの方がほとんどでしょう。

PTAについては、悪い噂だけが大きく聞こえてしまうことの方が多いため、あまり良いイメージを持っていない人もいるかと思いますが、まずは「役員を断ることはできるし、そもそも加入するのもしないのも自由」ということは基本知識として認識しておきましょう。

3. PTA役員の強制は違法?

続いて「PTA役員の強制は法的に違法といえるのか?」ということに触れてみたいと思います。

基本的には、PTA役員に立候補される方がいない場合は、投票により選出されるのが一般的です。

この場合、投票のときに参加できない方が選出されるケースも多く、「選ばれたのでぜひ頑張ってください」という通知を後から受けるという流れになってしまいます。

もちろん、ある程度の時間が作れる方であれば「前向きに頑張ろう」という気持ちになることもあるでしょう。

しかしながら、どうしても時間を作れない方は「今回は事情があるので、断らせてほしい」と嘆願すると、「投票の結果なので、平等の判断です。私たちも経験したのですからやっていただかないと困ります。いい経験になりますから」という状況に追い込まれる、というのは良く聞く話です。

では、この処置が法的に「違法」と言えるとしたら何か根拠はあるのでしょうか?

少しだけ難しくなりますが、憲法の考え方を基準として民法を見ていきましょう。

<憲法21条の考え方>

日本国憲法とは、国家と個人の関係性のルールを定めたものですが、当然ながらその考え方は民法にも当てはまります。

憲法21条には、いわゆる「基本的人権」の1つとして集会・結社の自由を定めています。

したがって、特定の団体に加入しなければいけない、ということはありません。

断ることができるのは、憲法上に保障された権利を持っていると考えられるからです。

<民法90条の「公序良俗」>

民法90条では、いわゆる「公序良俗」が定められています。

法律の内容は、反社会的なものであってはならないとする「公の秩序又は善良の風俗に反する」内容の法律行為は無効である、と定められているのです。

わかりやすく言うと「PTAが保護者に対して絶対参加」としていても、認められないということですね。

4. PTA役員を強制された場合の断り方

「できれば、波風が立たないように穏便にPTA役員を断りたい」ときには、どのような方法があるでしょうか。

・「他にも子供がいて、預かってくれる人がいない」

これは、現実的に難しいなと納得してもらえそうな理由です。

もちろん子育ての大変さは、保護者であれば皆理解しているだけに強い抗議となりそうです。

特に小さい子供がいる場合は、より効果がありそうですね。

・「夫の仕事の関係で引越ししなければならないかもしれない」

これは、言ってしまえばリスクを背負ってしまうことになるので、ある程度の現実性がある場合のみ有効です。

期中に引越しの可能性があるなら、再度誰かを選びなおす必要があるので、そのことを考えると納得してもらえそうです。

・「私がお金を稼がないと家計が成り立たない」

これは特に、「主たる生計者」である場合には非常に強い効果がありそうです。

誰もが「家計を削ってまでPTA役員をやるべきではない」、という常識はあるはずです。

・「両親、または義両親の介護の問題があるため」

これは、現実的に「なるほど」と言わざるを得ない説得力を持っています。

周囲でもそろそろ自分の両親も介護が必要になってくる方も多いでしょうから、共通の理解が得られそうですね。

以上に挙げたケースは、周囲の理解が得られそうな断り方と言えるでしょう。

しかしながら、事実として全く当てはまらない場合はどのような断り方があるでしょうか。

一番反論しにくいのは、「夫が反対している」でしょうか。

これは家庭の考え方なので、それを他人がなかなか口出しできない部分があるため、反論しにくいでしょう。

5. まとめ

これまで紹介してきたことをまとめると、以下のようになります。

・PTAは、一般団体と同様に加入の義務はない。

・PTA役員を強制されることは、憲法21条の考え方に反しており、民法90条の公序良俗に反するものである。

・PTA役員を波風立てずに断る方法は、「子供」「仕事」「介護」「転勤の可能性」「家庭の事情」などを客観的に述べるのが良いと思われる。

いかがでしたでしょうか?

ここまで、PTA役員になることに強制された場合の対処方法や知識を紹介してきました。

もちろん、PTA役員になることで得られるメリットもあります。

例えば「知り合い、友人が増える」「地域や学校に貢献したという達成感」などはその最たるものでしょう。

しかしながら、家庭によってはどうしてもPTA役員ができない場合もあるかと思います。

その際はしっかりとした知識を持ち、理論立てて自分の環境を周囲の方に説明できると良いですね。