固定資産税は建物の評価や用途地域によって税額は異なります。
更地のまま所有していると固定資産税が高くなる傾向があり、節税対策に頭を悩ませる人は多いでしょう。
空いたままの土地を利用する方法のひとつに駐車場経営があります。
節税の面で考えた場合、果たして駐車場として経営することはお得なのか、固定資産税の計算方法やメリット、デメリットについて解説してきます。
このページでわかること
使わない土地の税金対策として駐車場経営は有効的?
所有している土地に住居を建てる予定がない場合には、更地のままで遊ばせておくより駐車場経営をしたほうが税金対策として有利だと考える人は多いかもしれません。
たしかに、駐車場にしておけば毎月収益をあげることが期待できます。
きれいに整備されていれば、雑草対策にもなりますし、不法に利用される心配も少なくなり、防犯の面でも安心できるでしょう。
ただ注意したいのは、駐車場は更地と同じくらい固定資産税が高いということです。
しかし、これは税金という側面だけで見た場合で、収益さえ見込めればマイナスになるということではありません。
つまり、駐車場にした場合でも固定資産税は高いことに変わりはないものの、更地とは違って収益が見込めるため、そのぶんを税金に充当できる可能性があるということです。
土地の固定資産税を低く抑えるためには、そこに何かしらの建物が建っていることがポイントになります。
更地は、建物のある土地に比べて、およそ6倍もの固定資産税がかかるといわれています。
こうした理由から、誰も住んでいない空き家でもなかなか解体しない人が増えているのです。
しかし、固定資産税対策として空き家のまま長いあいだ放置しておくのは、あまり好ましいとは言えません。
所有者の目が届きにくい場所であれば放火やイタズラも心配されます。
老朽化による外壁の剥がれや倒壊などの可能性も高くなり、周囲への安全配慮から解体するのが理想的と言えるでしょう。
また、はじめから建物がない更地であっても、長年そのままにしておくと固定資産税がかさむだけになります。
税金の問題だけではありません。
使わないままの土地は雑草も生い茂り、景観を損ねることもあります。
場所によっては無断駐車や不法投棄などをされる心配も出てくるでしょう。
すぐに拾えるような生活ゴミ程度なら気にならないかもしれませんが、リサイクル法で定められているような家電品や車の部品などを投棄された場合には、自費で処分する可能性が高くなります。
有害物質などを投棄されてしまえば土壌まで汚染され、土壌を洗浄する必要性まで出てきます。
税金対策を考えつつ、自分の大切な資産を守るうえでも駐車場経営は有効的な手段のひとつです。
駐車場を作るといっても、契約者の確保や実際の経営についてノウハウを持っていないとどうしたらいいかわからないかもしれません。
駐車場経営は大きく分けると、自分で整地もすべて行って経営する方法と、フランチャイズ契約をする方法の2種類があります。
フランチャイズ契約の場合だと、整地から機器類の設置、管理に至るまでフランチャイズ本部が行ってくれるのが一般的です。
もちろん、実際の契約内容によって変わってきますが、素人ではわからないノウハウや機器類の手配までやってもらえるというメリットが期待できます。
商標を使えるというのも集客を考えるうえではメリットと言えるでしょう。
ただし、そのぶん商標使用料など毎月一定の契約料などはかかります。
自分ですべて行う場合は、駐車場の整地から看板などを含む機器類の手配までの一切を行うことになります。
ただし、月極めの駐車場にする場合や企業と契約して専用の駐車場として使う場合には、整地するだけでも十分経営は可能です。
コインパーキングのように機器類を設置する必要性もありません。
フランチャイズ契約のように商標使用料を払うことがないのもメリットです。
駐車場経営でかかる税金は? 固定資産税の計算方法
自分で直接駐車場を経営する場合はもちろんですが、フランチャイズ契約をして駐車場を経営するとしても、固定資産税は土地の所有者が支払います。
そもそも、更地を駐車場にするのは固定資産税対策が一番の目的なので、駐車場を作っただけで安心してはいけません。
できるだけ収益をあげることが大切です。
最低でも、固定資産税や月々の経費をまかなえる程度は利益を出す必要があります。
料金設定や駐車台数など、十分に試算し、損をしないように考えておくことがポイントです。
どの方法で駐車場を経営するかで初期投資や月々の経費は変わってきますが、固定資産税も駐車場のタイプで大きく変わるので注意しましょう。
リスクが高いのは、更地に砂利などを敷く程度で簡単に始める駐車場経営です。
経費を抑えることができるため、容易に収益を出せるという誤解をしがちですが、この方法では固定資産税は更地と同じに扱われてしまいます。
空き家を解体して砂利敷きの駐車場にする場合は特に注意が必要と言えるでしょう。
空き家があったときに比べて固定資産税が何倍にも上がってしまうこともあり、驚くことになるかもしれません。
土地にかかる固定資産税は評価額と税率で計算できます。
これは駐車場の場合も同様です。
ただ、注意が必要な点もあります。
不動産のなかには、「固定資産税」のほかに「都市計画税」が課せられる土地や建物があるのです。
都市計画税は、都市計画法にもとづく市街化エリア内にある土地や建物に課せられる税金です。
市街化区域とは10年以内に市街化を進めていくことが決まっている土地、または、すでに市街地化が完了している土地のことです。
つまり、駐車場が市街化区域にあるのならば、都市計画税がかかるのです。
一方、駐車場が市街化区域にないならば、都市計画税はかかりません。
この都市計画税は、住宅が建っている場合は軽減されます。
住居が建っている場合は住宅用地とみなされて「住宅用地の特例」が適用されるのです。
また、この住宅用地の特例は、固定資産税に関しても適用されます。
住宅用地の特例が適用されると、敷地面積が200平方メートル以下の固定資産税は6分の1まで減額されます。
敷地面積が200平方メートルを超える場合の固定資産税は3分の1となります。
しかし、同じ土地を住宅ではなく駐車場にした場合には住宅用地とみなされなくなるため、「住宅用地の特例」が適用されなくなります。
つまり、同じ土地であっても、空き家を解体して更地や駐車場にした場合、固定資産税が6倍になってしまうのです。
具体的に見てみましょう。
固定資産税は、所有している土地や建物の評価額に標準税率(1.4%)をかけて算出します。
たとえば、評価額が6000万円の土地や建物の場合は、6000万円×1.4%となり、84万円となりますが、これにさきほどの住宅用地の特例が適用された場合は計算法が変わります。
住宅などの敷地で200平方メートル以下であれば、6分の1となり、固定資産税は14万円になるのです。
しかし、更地のままや駐車場にした場合には住宅用地とみなされなくなるため、住宅用地の特例が適用されず、同じ土地であっても6000万円×1.4%で計算され、固定資産税は84万円のまま。
空き家を解体して更地や駐車場にした場合、固定資産税が6倍になるとはこういうことなのです。
駐車場経営で考えられる3つのメリットと2つのデメリット
駐車場を経営するメリット
- 収益で固定資産税を捻出できる
駐車場経営の大きなメリットは、収益が見込めることです。
先述したように、もともと空き家があった場合は固定資産税などが上がってしまいますが、そのぶん利益になるなら問題はありません。
経営が順調にいけば、固定資産以上の利益を出すことも十分可能です。
ゴミ拾いや無断駐車の確認など最低限の管理は必要ですが、副業として始めやすいというメリットもあります。
- 土地が荒れてしまうことを防げる
もうひとつのメリットは、土地が放置されて荒れてしまうのを防げることです。
更地の場合、雑草などの手入れはもちろんですが、不法投棄などの心配もなくなります。
駐車場の場所や作り方によっては必ずしもいたずら防止につながるとは限りませんが、人の目が届きやすくなることで不法投棄などの防止は期待できます。
- 特定空き家に指定されずに済む
長い間放置していた空き家がある場合は「特定空き家」に指定される場合があるので注意が必要です。
「特定空き家」とは、住居として使われていないだけでなく、倒壊の危険があったり、外観を損ねる状態だったりするなど、いくつかの条件を満たしている空き家を指します。
「特定空き家」に指定されてしまうと「住宅用地の特例」は適用されません。
https://www.akiya-akichi.or.jp/kanri/tax/
市区町村によって判断は異なりますが、あまりに空き家を放置してしまうと結局は税金が上がってしまうことになります。
一旦更地にして駐車場にしたほうが危険もなくなり、景観も損なわれずに済みます。
駐車場を経営するデメリット
- 思った通りの利益が出ない場合もある
一番のデメリットは、期待したような収益があげられない場合です。
このような失敗を防ぐためにも、無計画に駐車場経営を始めてはいけません。
まず周辺の駐車場をチェックし、妥当な料金設定が必要です。
土地面積から何台分の駐車スペースが取れるのかを計算し、周辺の料金相場を参考にして1カ月当たりの収益を試算しておきましょう。
高すぎると利用されないこともあるので、立地を考慮して料金を加減することも大切です。フランチャイズにする場合は、事前にじっくり説明を聞き、複数社で比較してみるといいかもしれません。
- 駐車場内の事故などトラブルの対処が大変
もうひとつのデメリットには、利用者同士の事故や機器類の破損、盗難などが起こった場合の対処があげられます。
トラブルを回避するために、多くの駐車場では免責に関する注意事項などを掲示しています。
また、住宅地に近い駐車場の場合は、近隣への騒音を配慮することも忘れないようにしましょう。
心配されることは、あらかじめ駐車場内に看板を設置しておくことで回避できる可能性があります。
土地の固定資産税を上手に節税する方法とは?
更地や、空き家を解体して駐車場経営を始める場合、全く節税できないというわけではありません。
節税対策のひとつに、何らかの建物の敷地としてみなしてもらう方法があります。
つまり、駐車場の敷地の中に建物を建ててしまうことで住宅用地として認めてもらい「住宅用地の特例」を受ければいいのです。
そしてもうひとつは、相続税の特例を受ける方法です。
条件としては構造物があることで、その構造物にはアスファルト塗装やフェンスなどが含まれます。
これらは駐車場として整地するうえで欠かせないものですし、利用者を獲得するためにも必要な経費と言えます。
このように、工夫次第では節税できる方法もいろいろ考えることができます。
駐車場経営の前にメリットとデメリットを押さえておこう
駐車場の固定資産税は基本的には更地と変わりません。
しかし、敷地内に住居などの建物を建てたり、何らかの構造物を作ったりすることで節税対策をすることも可能です。
経営手法によっては納税額を捻出できるだけではなく、それ以上の利益も見込めるかもしれません。
そのためには、事前にかかる経費や料金などを試算し、メリットとデメリットをしっかり把握しておきましょう。




