賃貸物件を借りる契約をめぐり、不動産業者や大家、管理会社などとトラブルになる人が後を絶ちません。
特に、これまで実家から出たことがなく、初めて一人暮らしをする人にとっては、引っ越しの際の手続きは全てが初めてのこと。
知らず知らずに見落とした事項をめぐり、トラブルになりやすいと言えます。
本記事では、不動産賃貸契約の基本的な流れを説明し、引っ越し初心者の方でもスムーズに賃貸物件を借りる手続きを進められるようにアドバイスをしていきます。
1.不動産賃貸契約の流れを知ろう!
初めての一人暮らしでも、物件探しから部屋を借りるまでの流れを知っておくことで、手続きをスムーズに進められます。
1-1. 部屋の条件を考える
まずは賃貸物件の探し方です。
理想の部屋の条件は人によりさまざまですが、あまりにこだわりが多すぎると、選べる物件が少なくなったり、家賃などの費用が高くなってしまうことがあります。
まずは希望条件をリストアップし、優先事項を2つか3つに絞ることが大切です。
賃貸物件情報サイトでは、都道府県・沿線・最寄り駅と絞り込み、賃料、間取りタイプ (LDK)、築年数、バス・トイレ別、ペット可、オートロックといった詳細条件で絞り込むことができます。
1-2. 内見をして物件を決定する
物件を借りるときには、間取り図を見て判断するだけでなく、実際に借りたいと考えている部屋を見学する「内見」を行うことが大切です。
内見をすることにより、部屋の実際の広さや内装のデザインを確かめたり、置ける荷物の量や家財道具の理想的な位置などをイメージしたりすることができます。
1-3. 申し込み、入居審査を受ける
物件を決めたあとは、入居の申し込みをします。
このとき、実際に入居できるかどうかの審査が設けられています。
継続して家賃を支払えるかどうか見通しを計るため、収入などの査定があります。
その査定に、身分証明書や収入証明書が必要となるので、必ず用意しておきましょう。
1-4. 契約手続き
審査結果は遅くとも1週間後までに通知されます。
住民票、印鑑証明 (ともに3ヵ月以内に発行されたもの)、また連帯保証人がいる場合は、その同意書が必要になります。
初期費用として、以下の費用を事前に振り込む必要がありますので、金額は申し込みの時点で業者に見積もってもらいましょう。
- 敷金
- 礼金
- 仲介手数料
- 保証料 (保証会社を利用した場合)
- 火災保険料
- 前払い家賃 (1ヵ月分)
1-5. 物件の引渡し
契約が終わったら、いよいよ引っ越しです。
入居予定日当日に全ての荷物を搬入し終えられるように、時期を逆算して計画的に荷物をまとめておきましょう。
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2.賃貸契約をしよう!
賃貸契約をする際にも注意しなければならない点がいくつかあります。
保証人を決めること、そして契約書と重要説明事項の内容を把握したうえで、契約手続きを進めることが重要です。
2-1. 事前に保証人をお願いする人を決めておこう
賃貸物件を借りるにあたり、生活上の事情により家賃が支払えなくなる可能性があるかもしれません。
その場合は、保証会社に払えない分の家賃を保証してもらうか、代わりに支払ってくれる保証人および連帯保証人を立てておく必要があります。
保証人や保証会社は、本人が家賃を滞納した場合に請求されても、本人の支払い能力などを証明することで対応を免除される可能性がありますが、連帯保証人は請求されたら必ず応じなければなりません。
賃貸物件を借りるときは必ず保証人が必要になるため、最も信頼できる相手にお願いしておきましょう。
2-2. 賃貸借契約書と重要事項説明書の違い
二つとも重要書類であるということは同じですが、その内容に違いがあります。
賃貸借契約書は、家賃、更新料、契約(入居)期間、特約事項など、賃貸物件を借りるにあたり重要な内容が示されたもので、貸主から提示された条件を意味しています。
契約などをめぐるトラブルでは、この書面の内容が証拠に使われます。
重要事項説明書は、不動産会社に属する宅地建物取引士が、契約や住居の状態などに関して説明する内容を記した書類であり、契約欄は存在しません。
従って、トラブルを解決するための証拠に使われる可能性は低いです。
2-3. 重要事項説明を受けよう
重要事項説明は、不動産会社に所属する宅地建物取引士により、これから入居するにあたり契約する内容を記した説明書を入居者に渡したうえで、口頭でその内容を説明するものです。
つまり、書面だけでは分からない契約内容について、詳細説明を受ける大切な機会と言えます。
この内容に対し疑問点がない、または全て解決された後に、貸主との契約に入ります。
もし契約内容で気になることがあった場合は、重要事項説明の段階で積極的に質問をすることが大切です。
2-4. 納得した上で署名捺印を
入居者が契約書や重要事項説明書をよく読まずにサインをし、後で貸主とのトラブルになるケースがあります。
それを防ぐ意味でも、慎重に内容を確認したうえで、契約書にサインをすることが大切です。
また、事前に同意した内容と契約書の内容に相違があった場合でも、トラブルの解決には契約書の内容が照らし合わせられることがほとんどです。
トラブルを防ぐために、契約書を確認しておくことはとても重要なことなのです。
3.重要事項説明で確認すべき5つのポイント
重要事項説明も、内容が多岐にわたり、なおかつ複雑であるため、いくつかのポイントを把握し損ねる可能性が考えられます。
また、説明内容のうち、どこが最も重要な要素なのかが分からないという人もいるでしょう。
以下に重要事項説明で確かめるべき5つのポイントについて解説します。
これだけ押さえておけば、説明内容の大部分を把握できます。
3-1. 「特約」について
「特約」とは、退去時に部屋をきれいにしておくにあたってのルールのことです。
退去時の敷金が返金されるかどうかについて、特約がつけられている場合がほとんどです。
入居者は賃貸物件の部屋を出る際「原状回復義務」を負い、ある程度部屋にできた汚れや傷を補修する費用を負いますが、生活していれば普通にできてしまう汚れや傷に関しては、大家や管理会社の負担になります。
原状回復義務にかかる費用は、どこまで入居者が負担することになるのかをよく確かめておきましょう。
3-2. 契約更新時に発生する費用について
契約更新の際は、通常の家賃とは別に、更新料として家賃1ヵ月分を支払うケースがあります。
さらに「更新手数料」として、不動産会社に契約更新のための手数料を支払わなければならないケースもあります。
3-3. 保証料について
保証料も契約内容に定められています。
この費用は入居者が家賃を滞納した際にその分を立て替えてくれる保証会社に支払うものです。
保証会社により費用の払い方や立て替えの内容などが異なります。
3-4. 退去予告の時期
借りた部屋から引っ越すことが決まった際は、その旨を大家や管理会社に事前予告する必要があります。
退去予定日の1~2ヵ月前に行うことが通常です。
退去予告時期の最中は、急な引っ越しをした後でも、その分の家賃を支払う義務が発生します。
3-5. 禁止事項について
ペット、楽器演奏、ルームシェアなどは、近隣住民への迷惑という観点から禁止されているケースがあるので、事前に確認が必要になります。
4. 賃貸物件の契約手続きに必要なものは?
賃貸物件の契約手続きに必要なものを確認しておきましょう。
どれかひとつでも忘れている場合、契約ができなくなってしまうので注意が必要です。
4-1. 賃貸契約に必要なもの
マンションやアパートの部屋を借りる契約で必要なものは、あなたが会社員か、自営業か、学生かによって異なります。
共通して必要なものを以下に挙げます。
- 住民票
- 自治体で取得した印鑑証明および印鑑の実物 (店で買ったハンコを持参しただけでは契約が成立しません)
- 連帯保証人からの承諾書 (連帯保証人がいる場合)
- 銀行印
- 通帳またはキャッシュカード
4-2. 賃貸契約時に必要となるもの
・会社員の場合
源泉徴収票という、年間収入を証明する資料が必要です。
勤務先に賃貸物件への引っ越しの旨を伝え、取り寄せてもらうようにしましょう。
また、同じ会社員でも転職が決まっていたり、就職先が決まった新社会人の場合などは、新しい勤務先の内定通知書が必要です。
加えて、勤務先の給料形態も把握しておきましょう。
・自営業の場合
自営業やフリーランスで働いている場合は、確定申告書が年間収入の証明になります。
・学生の場合
高校、大学生の時点から一人暮らしをするケースもあり、その場合は保護者の同意が必要になります。
また親族を代理保証人として立てるケースが多いので、事前に引っ越しについて話し合っておきましょう。
4-3. 賃貸契約時に必要な費用
賃貸契約をするにあたりかかるお金は、概算してその物件の家賃の5~6ヵ月分と言われています。
例えば家賃が6万円の場合、30~36万円が相場です。
敷金や礼金以外にも、鍵の交換や火災保険にもお金を支払わなければならないため、契約前に見積もりとその内訳を提示してもらうことをお勧めします。
5. まとめ
賃貸契約を行う場合は、まず自身に最も理想的な物件を調べ、それをあらかじめ下見しておくことが大切です。
契約時は重要事項の説明を受ける場合が多いので、説明と契約書の内容を確かめ、疑問に思う点は質問をし、事前の説明と違う点はないか、最初から最後まで納得してからサインをしましょう。
賃貸契約に必要な予算や重要書類、印鑑なども物件探しと並行して事前に用意しておくことも大切です。
これらの基礎知識を踏まえ、入念な準備をしておくことが、今後あなたが賃貸契約をする際に起こりうるトラブルを避けるポイントとなるでしょう。




