賃貸物件を借りる人の連帯保証人になることは、あらゆる可能性を考慮して判断する必要があります。
なぜなら、賃借人 (部屋を借りた人)が家賃を滞納し、本人に支払い能力がない場合、保証人が代わりに滞納分を支払わなければならないためです。
つまり、部屋を借りている本人だけでなく、その連帯保証人も責任は重大なのです。
これから新しい賃貸物件に引っ越す誰かの連帯保証人になろうと考えている人は、この記事を読んでから判断しても遅くありません。
本記事では、賃貸物件で家賃の滞納が発生した場合、連帯保証人に及ぶ責任や滞納が長引いた場合の「延滞賃料」および「損害金」などの条項、連帯保証人が財産差し押さえになるケースについても解説します。
このページでわかること
1. 賃貸で滞納した場合、連帯保証人の責任は?
連帯保証人は、通常の保証人や保証会社と違い、賃借人と等しい立場に位置する意味合いから、借りた本人と等しい責任を負うことになります。
1-1. 連帯保証人と、保証人および保証会社の違い
通常の保証人や保証会社の場合、賃借人が家賃を滞納した際に、貸主から代わりに請求されても、本人への請求を優先させられる「催告の抗弁権」や、賃借人の支払い能力を証明して自身への請求を退けることができる「検索の抗弁権」を有しますが、連帯保証人は上記の二つを行うことは一切できません。
部屋を借りた本人の家賃が払えないことを理由に、賃貸物件を貸した人から連帯保証人として請求を受けた場合は、断ることができずに払うしかありません。
1-2. 賃貸物件における連帯保証人の4つの義務
賃貸物件を借りるにあたり、連帯保証人が責任を負う義務は以下の4つです。
1. 滞納した家賃は代わりに払うこと
当然ながら、賃借人が家賃を滞納したら、連帯保証人が代わりに支払わなければなりません。
本人が夜逃げなどで行方不明になり、家賃が払える見込みがなくなった場合も同様です。
加えて、共益費および管理費も部屋を借りた本人が払えない場合は、連帯保証人の責任になります。
しかし水道代や光熱費は、部屋を借りた人が単独で供給会社と契約することになるため、連帯保証人の責任が及ぶことはありません。
2. 原状回復費
賃借人が部屋を出るときは、その部屋をマンションやアパート側がきれいにするための予算を退去費用として賃借人に請求します。
敷金から差し引かれ、残った分は賃借人に返されますが、敷金を超えた退去費用は、賃借人が払わなければなりません。
この支払いに賃借人が応じることができない場合、連帯保証人に請求されます。
3. 契約解除後に払う家賃
契約期間を過ぎても、賃借人が部屋を出ない場合もあります。
そのときは、契約解除日から明け渡しまでの期間において、家賃の2倍に相当する額の賠償金を請求されることがあります。
これも、連帯保証人の責任の範囲内です。
4. 賃借人の賠償責任
部屋を借りた人の不注意により、火事などで部屋が焼けたり、家屋が損壊したりした場合、貸主から弁償金を請求されます。
賃借人がこれを払えない場合も、連帯保証人に請求が及びます。
2 どのくらいの滞納で連帯保証人に連絡がくるの?
マンションやアパートの経営体制がしっかりしている場合だと、1ヵ月の家賃を滞納しただけで連帯保証人への連絡を考える貸主もいます。
いずれにしても、部屋を借りた人が家賃などの必要な費用を滞納した地点で、貸主は連帯保証人への請求権利を有します。
部屋を借りた本人の経済状況などを確認する意味合いでも、普段から定期的なコミュニケーションを取っておくことが重要です。
3. 滞納が続いた場合の「延滞賃料」と「損害金」
家賃の滞納が発生した場合、「延滞賃料」と「損害金」という二つの支払い義務が発生します。
3-1. 延滞賃料
延滞賃料とは、部屋を借りる契約期間内に住んでいる期間のうち、決められたときに払われていない家賃を指します。
契約書に定めたとおりの金額を指す場合がほとんどであるため、これ自体に対する上乗せ額は存在しません。
3-2. 損害金
損害金とは、部屋を借りる契約期間が終了したにもかかわらず、それを超えて住んでいた期間があるために、大家さんに与えた損害額を指します。
例えば、7月31日に契約が終わったにも関わらず、更新などの手続きもせずに、9月15日までその部屋に住んでいた場合、2ヵ月の家賃に当たる損害を大家さんに与えていることになります。
このようなケースは、大家さんだけでなく次にその部屋に入る予定の人がいる場合、その人にも重大な迷惑をかけます。
この場合、賠償金の意味合いが強いため、契約期間外に住んでいた分の家賃に加えて、大家さんの裁量などにより金額が上乗せされる場合が多いのです。
4. 「賃料額の2倍の損害金を支払う条項」とは
賃貸物件を契約する際によく定められるものに、賃料額の2倍の損害金を支払う条項があります。
これは、契約解除から大家さんへの明け渡し (部屋を返す)までの期間は、不当に部屋が独占されているものとして、その期間分の家賃の2倍を損害金として、大家さんに払う義務を負うことを意味します。
「家賃の2倍を払う」ことをあまりに高いと感じる人もいて、過去には同取り決めが消費者契約法に違反しているとして、裁判が行われたことがありますが、合法という判決が下っています。
有効な請求とはいえ、部屋を借りた本人や連帯保証人にとって、このようなことはなるべく避けるべきです。
連帯保証人は部屋を借りた人に対し、契約終了日に部屋を明け渡せるよう協力することも重要と考えられます。
5. 連帯保証人が財産差し押さえになるケースも!?
賃貸物件を借りた人が家賃などを滞納したために、連帯保証人が財産を差し押さえられるケースもあります。
しかしほとんどの場合は、すぐに財産が差し押さえられるわけではありません。
家賃滞納が分かった場合、最初は催告及び通知書が賃借人に送られます。
それに賃借人が応じない場合、内容証明郵便、それでも支払いが済んでいないと裁判に関わることになります。
上記のいずれかのタイミングで、大家さんや賃貸物件の管理会社は、賃借人ではなく、連帯保証人に対する請求に切り替える場合があります。
ここで連帯保証人に何のアクションもない場合は、裁判に持っていかれ、判決が決まり次第、財産差し押さえをはじめとした強制執行に移されることが多いのです。
このような事態を避ける意味合いでも、連帯保証人は、部屋を借りた本人が家賃を滞納したときのために、常日頃から財産上の備えをしておく必要があります。
6. まとめ
部屋を借りた人が家賃を滞納した場合、連帯保証人が存在すれば、その人が代わりに大家さんや賃貸物件の管理会社から請求されることがあり、その場合はすぐに応じなければなりません。
もし拒絶していると裁判にまで持って行かれ、貸主側によほどの落ち度がない限り敗訴するでしょう。
判決により強制執行が下された場合、連帯保証人に財産差し押さえが行われてしまいます。
そのような事態を避けるため、普段から代理請求に備えて、いつでも借りた人の賃貸物件に関わる相応のお金を払えるよう備える必要があります。
もしその責任を果たす自信がない場合は、これから部屋を借りる人の連帯保証人になることは避けるべきです。
連帯保証の依頼を受けたときは、丁重に断り、可能であれば通常の保証人や保証会社へ相談するなどの他の提案を行いましょう。




