賃貸物件から引越しをする場合、入居時の状態に戻して退去する必要があります。
そのために退去費用というものが必要になるわけですが、この退去費用はいくらかかるものなのでしょうか?
ここでは退去費用の相場や内訳について解説し、高くなるケースや安く抑えるためのコツを解説しています。
退去費用は入居時の契約にも影響されるので、これから物件を探す人もぜひ確認してみてください。
引越しを控えている人には少しでも退去費用を安く抑えるお手伝いができるはずですので、自宅の状態を考えつつ読んでみてくださいね。
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このページでわかること
1. 賃貸の退去費用の相場
賃貸契約をして住んでいた物件から退去する場合、一部の例外を除いて原状回復をすることが原則となっています。
つまり借りた時と同じ状態にして返す必要があり、そのためにかかる費用が「退去費用」といわれています。
そのため、部屋をどれだけきれいに使っていたかによって退去費用は変化します。
また、部屋の広さや住んでいた期間によっても請求される金額に大きな差が出てくるため、一概に退去費用の相場というものをいうことは難しいです。
退去費用は入居時に敷金を支払っている場合はそこから充てられますが、敷金だけでは足りない場合は追加で徴収されることになります。
リクルート住まいカンパニーの調査によると、追加で徴収された平均的な金額は以下の通りとなっています。
- 1R…6万9,000円前後
- 1K…7万7,000円前後
- 1DL…9万1,000円前後
- 1LDK…12万6,000円前後
- 2K…9万2,000円前後
- 2DK…11万7,000円前後
- 2LDK…14万8,000円前後
- 3LDK…16万9,000円前後
https://blog.ieagent.jp/money/tintai-taikyo-hiyou-157779
1㎡あたり1,000円の退去費用で計算されることもあるため、部屋数が増えたり広くなったりするほどに退去費用は高額になり、敷金を支払っていない場合は更に高い金額を請求されることになります。
ただし、この金額は平均値であり、賃貸契約時の条件や居住年数によって退去費用は変わってきます。
退去費用がほぼ掛からず、敷金の一部が返ってくるケースもあります。
2. 賃貸の退去費用の内訳
賃貸物件から退去する際の退去費用はどのようなことに使われているのでしょうか?
ここでは退去費用の内訳を解説し、原状回復時にどこに多くの費用がかかるのかを考えていきます。
退去費用を抑えるコツにもつながりますので、ご自分の住まいのことを思い返しつつお読みください。
2-1. 水回りの清掃費用
退去費用の内訳では「ハウスクリーニング代」の中に含まれていますが、キッチン・バス・トイレの水回りは使用状況によって高い清掃費になっていることが多いです。
自炊を行っている場合はキッチンの油汚れの清掃費、トイレ・バスの掃除不足で汚れがひどい場合はその清掃費などが高くなります。
2-2. 床・壁などの清掃費用
こちらもハウスクリーニング代としてまとめられていますが、生活環境によっては高くなることが多い項目です。
喫煙による臭いやヤニの汚れ、ペットがいる場合は粗相による汚れや臭い、カーペットに何かをこぼした際のシミやカビは入居者が費用を負担して清掃を行うことになります。
2-3. 原状回復費用
ハウスクリーニング代とは別に「原状回復費用」というものがあります。
許可されていないのに釘などで壁に穴をあけている場合や、ハウスクリーニングでは落ちない壁紙や床の臭い・汚れを張り替えによって修繕する際に必要とされる費用です。
ペットがいる場合は爪や噛み傷による破損も原状回復費用によって修繕されます。
借主の過失によってついてしまった傷・汚れ・臭いを修繕し、原状回復する費用というわけですね。
2-4. 退去費用に含まれないものもある
汚れ・臭い・傷など原状回復に必要な修繕のほとんどが退去費用に含まれていることがわかりました。
ですが、住んでいる上で仕方のない傷や劣化に関しては、借主ではなく家主(大家さん)の負担になります。
家主負担となる項目には以下のものがあります。
- 机やタンスなどの重たい家具・家電を置き続けたことによる床やカーペットのへこみ
- 畳の表替え・裏返し(次の入居者に向けて行う作業であるため)
- 冷蔵庫などの後ろ側の黒ずみ(普通に使っていても自然と黒くなってしまうため)
- 日照など、自然に生じる劣化による壁紙や床の変色
- 鍵の取り換え(破損や鍵の紛失時は借主負担)
- 経年劣化による設備機器の故障
借主の掃除・管理不足や不注意ではなく、普通に生活をしていく上で自然と発生してしまう黒ずみや劣化は家主負担になります。
同じ床のへこみでも、借主が何かを落としてできた場合は借主負担になるので注意が必要です。
3. 賃貸敷金の仕組み|退去費用の支払い方法とは?
賃貸契約を行う際に、敷金ゼロの物件を選んでいない場合は家賃の1~2カ月分を敷金として支払っているはずです。
退去費用の中の原状回復費は、この敷金を目安として考えられています。
原状回復だけであればよほど酷い汚れや破損がない限りは賄えることがほとんどです。
原状回復費を引いても敷金が残る場合は、ハウスクリーニング代も敷金から徴収することになります。
それでも敷金が残った場合は入居者に返還し、逆に足りなければ不足分を入居者に請求するという仕組みになっています。
ペット可能物件の敷金が不可の物件と比べると高く設定されているのはこの仕組みによるものです。
ペットがいるとどうしても原状回復費とハウスクリーニング代が高くなってしまい、退去後だと退去費用を支払ってくれない人もいるのであらかじめ多めに預かっておくというわけですね。
退去費用は管理状況によっては敷金では足りずに追加で10万円以上が請求されることもあり、次の物件への引越し費用と重なって支払いが難しくなってしまうこともあります。
そのような場合は不動産会社や家主の判断にもよりますが、分割での支払いが可能になることも多いです。一括での支払いが難しい場合は必ず早めに相談するようにしましょう。
4. 賃貸の退去費用が高くなるケース
退去費用の請求は退去から1カ月程度で届くことが多く、引越しの忙しさで忘れていた頃にやって来ます。
出費が多いタイミングに更に大きな額が請求されるとかなり辛くなってしまうので、以下のようなケースに当てはまる場合は退去費用が高くなる可能性があると思って準備をしておきましょう。
4-1. 入居時の敷金がゼロ円だった場合
賃貸敷金の仕組みの項目でもお話をしましたが、退去費用は入居時に渡している敷金が最初に充てられます。
入居時の敷金がゼロ円の物件でも退去費用がゼロになるわけではないので、退去後に必ず退去費用が請求されることになります。
どんなにきれいに使っていても5万円前後、この後の項目に当てはまる場合は更に高額の退去費用が請求されますので、敷金を渡していない場合は退去費用を準備しておきましょう。
4-2. 契約書に特約が記載されている場合
原状回復費の内、借主が負担する費用は前述したように不注意や過失・管理不足によるものが基本です。
しかし、入居時に交わした賃貸契約の内容次第では、借主の負担が大きくなる場合があります。
通常であれば家主負担となる畳やふすまの交換、床や壁の自然・経年劣化など、普通の賃貸契約では借主が負担しなくてよい原状回復費を借主が負担する特約が定められている場合、退去費用は大幅に高くなります。
敷金礼金ゼロの物件や、家賃が相場よりも安い物件には特約が付いていることがあるので、賃貸契約を結ぶ際にはよく確認してくださいね。
4-3. ペットを飼育している場合
犬や猫を飼育していると、どんなに躾が行き届いていても汚れや臭い、爪の後などが付いてしまいます。
特に臭いは一緒に暮らしていると分かりにくいです。
こまめに掃除を行っていても臭いは付きやすいので、ペットと一緒に住んでいる場合は退去費用が高くなると考えておいた方が安心です。
特に猫は爪による傷がつきやすく、原状回復費が高くなる傾向が強いです。
ペット可能物件のほとんどは敷金が高めに設定されているので、渡している敷金で賄えることも多いですが、万が一に備えて退去費用を用意しておくようにしましょう。
4-4. 自炊をしていた場合
最近は男性でもお弁当を作ったり、水筒を持って行ったりと食費を節約するために自炊をする人が増えています。
料理をすると必ず油を使うことになるので、キッチンはどうしても汚れていきます。
換気扇も自炊をしない人の部屋と比べると何倍も汚れています。
こまめに掃除を行っていれば退去費用が跳ね上がるということは少ないですが、そうでない場合は古くなった油汚れや換気扇の掃除の費用を取られるので退去費用が高くなってしまいます。
4-5. 部屋の中で喫煙をしていた場合
煙草の煙は臭いとヤニを天井・壁・床に付着させるので、それを除去するためのハウスクリーニング代が高くなります。
酷いヤニ汚れや臭いがこびりついている場合はクロスの張り替えも必要になってくるため、思っていた以上の退去費用を請求されることがあります。
窓から煙だけを出すようにしていても、いつの間にかヤニや臭いが付着しています。
室内で煙草を少しでも吸っている場合は退去費用が高くなると考えておいた方がよいでしょう。
5. 賃貸の退去費用の負担が少なくなるケース
反対に退去費用の負担が少なくなるのはどのようなケースなのでしょうか?
高くなるケースは多かったですが、負担が少なくなるケースは少なく、2つのパターンだけです。
- 部屋を綺麗に使っていた場合
部屋を綺麗に使っていたり、出張や外泊が多くてあまり部屋を使わなかったりすると、劣化や汚れが少ないので原状回復費やハウスクリーニング代が安くなり、退去費用も低く抑えることができます。
- 古い物件の場合
築40年以上の物件や取り壊しが決まっている物件で次の入居者がいない場合などは、原状回復を重視しないので退去費用がとても安くなります。
特に取り壊しが近い物件から退去する場合は退去費用が一切かからない場合もあります。
6. 賃貸の退去費用の負担を軽減する方法
退去費用はできるだけ安くし、負担を軽減したいものですよね。
そのためには前述したような取り壊しが近い物件を選ぶのも1つの手段ですが、なかなかそういった物件には巡り合うことができません。
普通の物件に住みながら退去費用を抑えるには「掃除をしてきれいに使う」「物件を大切に使う」ことが最も効果的です。
キッチンは使う度にリセットするつもりで掃除を行い、バス・トイレも汚れが溜まる前に掃除をしていればほとんど劣化しません。
掃除以外ではスリッパを使ったり、換気をまめに行ったりすることも床の汚れや臭い対策に効果的です。
壁に何かを設置する場合も痕が残らないシールや突っ張り棒を上手に使い、借りていることを意識して傷付けないように大切に使うこともとても重要です。
神経質になりすぎる必要はありませんが、少し意識しておくと綺麗な状態を保てて住んでいるあなた自身も気持ちよいはずですよ。
もしも納得できない額の退去費用が請求された場合は、管理会社や家主と交渉することもできます。
特にハウスクリーニング代は内容が不透明なことが多いので、敷金を渡していたにも関わらず家賃以上の額が請求されている場合は内訳を確認してみるとよいです。
本来は家主負担となる部分が請求されている場合は減額してもらうことも可能です。
7. 賃貸の退去費用の相場と注意点まとめ
賃貸物件で借主を悩ませることが多いのが更新料と退去費用です。
どちらもうっかり忘れていると突然大きな額を請求されることになり、慌てたり支払いができなかったりしてしまいます。
更新料はどうしても必要になるものですが、退去費用は日々の暮らしを見直したり、少し意識を変えたりするだけでも抑えることができる出費です。
働いていると時間が取れないことも多いですが、できるだけ週に1回は部屋全体を掃除する日を作るようにしましょう。
それだけでも汚れや臭いが溜まりにくくなるので、ハウスクリーニング代を抑えることができます。
もうすぐ退去をする予定がある場合は、汚れが目立つ場所から少しずつ掃除をしていくと退去費用をカットできます。
とくに自炊をしている人はキッチンの掃除を徹底的に行うのが効果的なので、バス・トイレと合わせて汚れていないように見えても掃除をしてみてください。
入居時の状態に近ければ近いほど退去費用が安くなり、敷金が戻ってくる可能性も出てきます。




