賃貸における連帯保証人とは?どんな責任があるの?

不動産の賃貸における「連帯保証人」

名前は知っているけど…という方が多いのではないでしょうか?

賃貸における普通の保証人と連帯保証人の違い、連帯保証人にはどのような責任があり、どのような人がなることができるのかについて解説していきます。

1. 請け負う範囲はどこまで?

アパートやマンションを賃貸で借りる際は、必ず連帯保証人をつけることが慣例となっています。

連帯保証人の責任の重さを端的に表現するのであれば、部屋の借主本人と全くおなじ責任を負うことになります。

連帯保証人をつける理由は、貸主の立場を考えればすぐにわかります。

もしあなたが物件を賃借人に貸して家賃を支払わなかったり、部屋を損傷して修繕が必要になった場合、なんとしても支払いをしてもらいたいと思いますよね。

そんな時本人が家賃の滞納分や修繕費を踏み倒すために夜逃げすれば、現実問題として本人を探し出してお金を取り返すのは大変な時間と労力がかかります。

もし本人がみつかったとしても、一文無しではお金を請求しても回収できない可能性もあります。

しかし連帯保証人がいれば、連帯保証人は夜逃げした借主と全く同じ責任を負うことになるので、連帯保証人にすべて請求して代金を回収することができるのです。

そのため連帯保証人の責任は大変重いと言えるでしょう。

2.  保証人と連帯保証人では責任の重さが違う!

良く耳にする「保証人」と「連帯保証人」とでは、一体何が違うのでしょうか。

実はこの二つの言葉には天と地ほどの責任の重さの違いがあるのです。

2-1. 連帯保証人には「催告の抗弁権」がない

連帯保証人には催告の抗弁権がありません。

これは具体例で考えると大変わかりやすいので保証人と比較して考えてみましょう。

・例1

賃借人Aは、3ヶ月分の家賃30万円を滞納している。

賃貸人Bはなんとか未払い家賃を払ってもらいたいので、保証人Cに家賃の支払いを賃借人Aの代わりに行うように請求した。

この時保証人Cは、賃貸人Bの請求をつっぱねることができるのです。

これを催告の抗弁権と言います。

「確かに私はAの保証人だが、まずはA本人にきちんと請求を行ってから私に請求してください。」

と、主たる債務者である賃借人Aに請求するように促すことができるのです。

しかし、もしCが連帯保証人であった場合は話が大きく変わります。

賃貸人Bから家賃の支払い請求があった場合「まずは本人であるAに請求してください。」

と言えなくなってしまうのです。

つまり、連帯保証人は保証人と異なり催告の抗弁権がないため、圧倒的に不利な立場と言えるでしょう。

2-2. 「連帯保証人には検索の抗弁権がない」

・例2

賃借人Aは3ヶ月分の家賃30万円を滞納している。

賃貸人Bはなんとか未払い家賃を払ってもらいたいので、保証人Cに家賃の支払いを賃借人Aの代わりに行うように請求した。

なお、賃借人Aは預金30万円及び、普通乗用車を所有している。

このようなケースでは、請求を受けた保証人Cが保証人であれば検索の抗弁権という権利が認められています。

賃借人Aに執行が容易に可能な財産(預金や車)がある場合「まずはAの財産から回収してください。」

と、賃貸人Bからの請求をつっぱねることができるのです。

つまり、賃借人Aに対して預金を回収するなり、所有している車を売ってお金を作らせるなりしてくれと言えるのです。

しかし、もしCが連帯保証人であれば検索の抗弁権が認められていません。

これにより、どんなに家賃未払いの張本人である賃借人Aが財産を持っていても、賃貸人Bの請求に応じて支払いをしなければならないのです。

もちろんその後は賃借人Aに対する立替分の求償権も認められていますが、それを加味しても保証人と比較すると不利な立場であると言えるでしょう。

3. 連帯保証人になれる人

連帯保証人は非常に重い責任を負うことになりますから、親・兄弟姉妹・親族に頼む人が多いです。

というより、通常親族でなければ承諾を取り付けることが難しいのが現状です。

しかし、法的には親族でなくてはならないという制限はありません。

職場の上司や友人などに頼むケースもあるようですが、実際は貸主側から連帯保証人は3親等以内の親族としているケースが多いようです。

貸主にとって連帯保証人は、家賃未払い等のリスクを防ぐために立てておきたい人なので、できるだけ回収の可能性が高い親族を連帯保証人にすることが多いようです。

4. 収入が少ないと連帯保証人になれない!?

連帯保証人は賃借人に代わって未払い家賃当の支払いをすることが求められるので、一定の支払い能力が必要となります。

もし自分がアパートを借りる際に親が現役で会社勤めをしていれば、毎月の給料が安定した収入と判断されるため、連帯保証人として認められやすいと言えるでしょう。

しかし親が高齢で収入が少ない場合、連帯保証人として認めてもらえないこともあります。

また親の方がアパートを借りる際に、子供を連帯保証人にする場合があります。

この時子供が会社に勤務して安定した給与収入を得ている場合は、連帯保証人として認められやすいです。

しかし子どもが学生であったりする場合は、連帯保証人としては認められにくいでしょう。

賃貸借における連帯保証人の要件は、家賃に対する支払い能力を備えているかが非常に重要となります。

収入さえあれば良いというわけではなく、相応の支払い能力が求められるのです。

5. 連帯保証人の依頼の流れ

もしあなたが賃貸物件を探している場合、必ず連帯保証人が必要になります。

そのため、先に親や親族に同意を得ておけばスムーズに話が進みます。

連帯保証人が決まったら、不動産会社との契約書類に必要事項を記入してもらう必要があります。

連帯保証人となる人は、年齢や勤務先、年収などを契約書類に記入することになります。

本人の証明書類として、免許証や保険証、住民票などの提出や、収入証明を求められることもあります。

そして、賃貸契約書の連帯保証人の欄や承諾書に署名・捺印を行います。

この際は印鑑登録している実印を使用し、印鑑証明の提出が求められます。

もし連帯保証人が遠方に住んでいる場合は、必要書類を郵送して手続きを進めることになります。

万が一書類に不備があった場合には訂正もお願いしなければならないので、時間に余裕を持って手続きを行う必要があります。

5-1. 全体の流れ

(1)申し込み

気に入った物件の申し込みを行い、申込書を記入します。

(2)審査

上記の申込書をもとに入居審査が行われます。

この時本人と連帯保証人の勤務先や年収など、審査に必要な情報を記入します。

その後は入居審査となり、これは不動産会社、物件オーナー、保証会社などによって行われます。

この時に連帯保証人の支払い能力が審査されます。

(3)契約書記入

審査が通った後は、契約前に重要事項説明を受けます。

そして、賃貸借契約書に記入をします。

この時連帯保証人も署名捺印が必要になります。

6. まとめ

連帯保証人は通常の保証人と異なり、催告の抗弁権や検索の抗弁権がなく賃借人と同様の責任を負うことになるため、非常に重い責任を負うことになると言えます。

連帯保証人になることができる人に法的な制限はありませんが、きちんと家賃の支払い能力のある人、安定した収入でなければ審査に通りません。

重い責任があるため多くは親族にお願いすることが多いようです。

連帯保証人は賃貸借契約書の連帯保証人記入欄に自筆で署名し、実印の捺印も必要です。

免許書、住民票、印鑑証明などの証明書類の提出が必要になります。