賃貸マンションの定期借家制度とは?契約時の4つの注意点を確認!

通常の賃貸借契約は、2年または3年など決まった期間で満了になり、その契約の更新は借りている人の自由に選択できる「普通借家契約」のケースが多いです。

しかし、最近多くなってきたのが「定期借家契約(ていきしゃっかけいやく)」という制度です。

普通の賃貸借契約との違いは何か、そのメリットとデメリットなどを掘り下げてみていきましょう。

 

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1. 賃貸マンションの定期借家制度とは?

「定期借家制度(定期建物賃貸借契約)」とは、その名の通り「借りる事ができる期間がいつまでと決まっている賃貸借契約」のことを指します。

この制度の歴史は割と新しく、2000年3月1日の「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」に基づいて始まった制度です。

賃貸物件を検索していて、2LDKの素敵なマンションにも関わらず、同じ様なマンションと比べても家賃が安い物件が見つかったとしましょう。

実は詳細をよく見てみると、「定期借家」と書かれているかもしれません。

定期借家のひとつの特徴が「家賃が安い」ことです。

ではなぜ安いのか、その理由などを見ていきましょう。

1-1. 定期借家と普通借家の違い①更新の有無

普通借家の場合

契約期間が2年であることが多く、2年ごとに更新の手続きをする必要があります。

借りている人が自由に更新するかしないかを選択できます。

お部屋によって、連絡をしなければ自動的に更新されるとみなされることもあり、解約する際は所定の期間までに解約の連絡が必要となります。

ちなみに更新するかしないかは、大家さんか不動産管理会社から前もって連絡が来ますので、そこで更新の有無を伝えてください。

約1.5ヶ月前に「更新するかしないか選択してください」という内容の書面と、返信用のはがきや封筒が入っている一式が届きます。

大家さんや不動産管理会社によって更新の有無を聞かれる方法に違いはありますが、概ねこの流れです。

定期借家の場合

更新できる契約とできない契約の2パターン存在します。

  • 更新できない定期借家契約

契約期間に◯◯日までと記載がある契約で、短期間であるケースが多く見られます。

例えば「2020年3月31日までの定期借家契約」となっている場合、その日までしか借りることはできません。

その日以降は海外出張していた大家さん家族が帰国してくるので、その部屋を賃貸に出すことをやめる、といった理由があります。

その他に、古い建物で取り壊しの予定があるから、それまでで良ければ住んでください、という定期借家契約もあります。

その場合飛び抜けて安く住むことができる場合が多く、引っ越し費用を考えてもお得になるので、古くても平気な人や引っ越しが億劫でない人にとったら掘り出し物件です。

そもそも定期借家契約が多くなったのは、古いマンションや家を取り壊したり、古くなった室内の大規模リフォームをおこなったり、古いものを再生する意識が強くなった背景があります。

  • 更新できる定期借家契約

前述の更新できない理由のある定期借家契約とは違い、定期借家契約なのに更新ができる場合があります。

ただし更新には、借りている人と大家さんの双方の合意が必要となり、大家さんの都合で更新不可となるケースもあります。

それは、家賃の支払いが遅れる、近隣に迷惑を掛けるなど、借りている人が迷惑な人であると判断された場合です。

普通借家契約であれば借主は守られていて、余程のことがない限りは追い出されませんが、定期借家契約は貸主が更新を拒否をしても問題ないことがほとんどです。

普通に生活していれば更新可能ということですね。

ですので、定期借家制度が標準のマンションは優良な住民が多く住んでいるという事にもなります。

1-2. 定期借家と普通借家の違い②契約期間

普通借家の場合

普通賃貸借契約の場合、2年または3年の契約期間が定められています。

その契約期間が満了になれば、また新たに2年または3年の賃貸借契約を交わすことになります。

更新されず追い出されることはありません。

定期借家の場合

決められた契約期間はなく、5年でも1年でも半年でも、どんな期間が定められていても問題はありません。

多くの場合は大家さんの都合でそうなっています。

借りる人もその期間だけ住む方が都合が良いということであれば、定期借家は家賃が安く設定されていることが多いので良い選択でしょう。

なぜ安いのかはメリットとして後述します。

1-3. 定期借家と普通借家の違い③契約方法

普通賃貸借も定期借家も、必ず書面で契約をする必要があります。

したがって、「普通借家契約だと思って借りたのに、実は定期借家契約だった」というケースはありません。

仮に書面での契約がなかったとしたら、大家さんが「定期借家契約だ」と主張したとしても、普通賃貸借契約として扱われます。

定期借家契約を結ぶ場合、賃貸借契約書とは別に「定期借家契約であることを説明する書面」に署名捺印が必要です。

これは定期借家契約では必須の書面で、この書面がない場合は定期借家としての契約は無効として扱われます。

書面が交わされていないと、契約が終了したので出ていってくださいと言うには正当な事由が必要になり、無い場合は立ち退き料を借りている人に支払わなければなりません。

1枚の簡素な書面で、賃貸借契約書に署名捺印する前に説明を受けます。

下記住宅について定期建物賃貸借契約書を締結するに当たり、借地借家法第38上第2項に基づき次の通り説明します。

下記物件の賃貸借契約は、期間の満了により賃貸借は終了しますので、期間の終了の日の翌日を始期とする新たな賃貸借契約(再契約)を締結する場合を除き、期間の満了の日までに下記住宅を明け渡さなければなりません。

<住宅>

  • 名称:◯◯マンション ◯号室
  • 所在地:東京都中央区◯◯1-1-1

<期間>

  • 始期:2019年◯月◯日から
  • 終期:2023年◯月◯日まで

大家さんや不動産管理会社により、書面の呼称が少し違ってくるようですが、上記内容に通り、説明を受けた覚書といったイメージです。

ここで確認されることで重要なことは以下3点です。

  • 定期借家契約であるということ
  • 更新できないこと
  • 契約満了日を持って賃貸借契約は終了すること

これを理解した上で賃貸借契約を結びます、というものになります。

1-4. 定期借家と普通借家の違い④途中解約

普通借家の場合

途中解約はいつでも可能です。

契約次第のため一概には言えませんが、規定がなければ違約金などのペナルティはありません。

フリーレント期間がある物件だと、違約金があるケースもありますが、中途解約ができないわけではありません。

よくある例として、「フリーレント1ヶ月、1年未満の解約で1ヶ月分の違約金が発生」があります。

たまに、「2年未満の解約で違約金家賃の1ヶ月分発生」というお部屋もありますので、注意してくださいね。

もちろん、フリーレントがなくても短期解約違約金が発生する物件もあります。

途中解約の場合は、1ヶ月または2ヶ月前までに申請しなければなりませんので、前もって解約の連絡をしましょう。

定期借家の場合

定期借家の場合は、下記の条件付きで途中解約が可能です。

  1. 200㎡未満
  2. 居住用として使用している(店舗・事務所は不可、兼住居はOK)
  3. 病気や転勤、介護などでそこに住み続けることが困難になった
  4. 特約に途中解約不可などが設けられていない

この条件は借地借家法で定められており、どの定期借家契約でも同じです。

更新可能として定期借家契約を結ぶ場合は、基本的に上記条件の1.2.4.は満たしているはずですので途中解約は可能と言えます。

ただし、こちらも1ヶ月または2ヶ月前までに解約の申請をしないといけません。

普通賃貸借契約では、借りる人が有利になるケースが多いのですが、定期借家契約は同じようにはいかないところがあります。

1-5. 定期借家と普通借家の違い⑤契約終了時

普通借家の場合

契約満了日の1.5ヶ月から2ヶ月ほどで、大家さんや不動産管理会社さんから更新時期のお知らせが借りている人に入ります。

更新するかしないかは自由に返信できます。

更新しない場合は退去日を決め、日割り家賃の計算をしてもらいましょう。

定期借家の場合

契約期間が1年以上であれば、大家さんや不動産管理会社さんから契約が終了する旨の連絡が借りている人にお知らせされます。

契約満了日の1年前から、遅くとも6ヶ月前には連絡があります。

1年以上の契約期間の場合は安心ですが、それより短い契約期間の場合はスケジュールに入れてしっかりと管理してください。

3. 定期借家の賃貸マンションの4つのメリット

3-1. 家賃が安い

多くのケースでは家賃を相場より安く設定していますので、考えているよりグレードの高い住宅に住める可能性が高いです。

なぜなら、定期借家にする何らかの事情があるからです。

例えば前述の様に、近い時期に取り壊しをすることが決まっているため、その時期が近づくまで賃貸物件として活用したい時にもこの制度が使われます。

「古い家で取り壊し前だけど、最後まで住んでくれたらありがたい」という気持ちで賃貸に出されるので家賃がとても安く設定されています。

他には、転勤などのやむを得ない事情で持ち家を賃貸に出したけれど、ゆくゆくは帰ってきて自分や自分の家族で住みたいと思っている方もこの制度を使います。

その場合は「戻ってくるであろう時期までという短い期間限定」で募集しますので、短期間でも住みたい気持ちがある借主は限られてきます。

そして、定期借家の事情を良く知る方は、借主にとって不利な制度であることを知っているため、選択肢から除外します。

引っ越しは時間もお金も借りる人にとって大きな負担になります。

それを何度も繰り返したい人は少数派でしょう。

更に、定期借家は法人での賃貸借契約ではあまり利用されません。

法人名義での契約の際には「法人既定」という会社で賃貸物件を借りる際の決まりごとがあり、それに「定期借家契約は不可」と入っていることがほとんどです。

これらを考慮すると、定期借家は「入居者を集めにくい」特徴があります。

一部の層にしか受けず、しかも相場と同じ値段であれば選ばれる土台にも乗らないことから、手っ取り早く家賃を下げることで、入居者を集めたいという思いがあるのです。

家賃が想定よりも安ければ定期借家でも選択肢に入る、という方が現れやすくなるからです。

3-2. 期間限定で住む人にとって最適

賃貸物件を探している方の中には、住む時期がある程度決まっている人もいます。

仕事の都合上転勤をするけれど、1年しか住まない、とか半年程度シェアハウスとして利用したいなどです。

また、持ち家の建て替えなどの事情で一時的に住む家が必要な人にも最適です。

このように短期間だけ住めれば良い人にとっては良い選択肢です。

3-3. 住民の質が良い可能性が高い

一般的に賃貸物件を借りる時において、一番の心配な事は近隣の住民です。

みなさん全員が良い方であると信じたいところではありますが、残念ながら様々なトラブルに見舞われることもありますよね。

マンションやアパート、もしくは戸建住宅が密集しているところにおいては、騒音が一番の問題です。

そこで、揉めごとに発展してしまうこともあります。

非常識なくらいの大音量を出したり、大音量で音楽をかけたり、子どもが深夜なのに叫んだり走り回ったりして騒いでいる等です。

上記の場合はトラブルになるとほどんどの人が思うと思いますが、その一方で、音に過敏すぎて少しの音でも騒ぎ立て、頻繁に文句を言う人がいるのも事実です。

なぜこのようなトラブルがあるかと言うと、一般の賃貸物件は基本的に借主の立場の方が強いからです。

貸主が困った借主に対して、簡単に退去を申し出ることはできません。

しかし、定期借家であれば貸主の判断で、契約期間満了をもって借主に退去を申し出ることができます。

だからこそ、問題を起こす住民の方が居座りにくい状態にすることができます。

3-4. 母子家庭や生活保護者も借りやすい

母子家庭の方や生活保護の方は、支払いが滞る可能性を危惧されて賃貸物件が借りにくいところがあります。

県営などの公営住宅も借りることはできますが、中にはこのような住宅ではないところを借りたい方もいらっしゃるでしょう。

そのような方も住みやすい物件が定期借家です。

そして、家賃を一括前払いすることも可能なため、月々の家賃を下げることも可能です。

母子家庭の方は特に、慰謝料などでまとまったお金はあるけれど、月々に稼ぐ金額は少ない方も多いです。

そのような方にとっては、この制度は有益です。

4. 定期借家の賃貸マンションの2つのデメリット

4-1. 一般借家に比べて、更新が難しい

もし更新後に住み続けたいと望んだとしても、更新することが難しい可能性が大きいです。

建て替えや取り壊しが決まっている場合は更新は無理だと考えたほうが良いです。

その一方で、取り壊しなどもない、尚且つ貸主借主双方が合意をすれば更新の可能性も出てきます。

4-2. 途中解約が難しい

一般借家であれば、途中解約も容易です。

急な事情の変化に対応しやすいところがあります。

しかし、定期借家の場合、途中解約は余程のことがない限りは解約が難しいです。

例えば「間取りが気に入らないから引っ越したい」等と言う程度の理由では引っ越しをすることはできません。

したがって、入居を決めたらその期間中は必ず住むと決める必要があります。

ただその一方で、広さなどの条件はあるものの、やむを得ない事情と判断されたら途中解約も可能です。

5. 定期借家の賃貸マンションを契約する場合の4つの注意点

定期借家の賃貸マンション契約は一般借家と明らかに違うため、注意点も様々あります。

その注意点を見ていきましょう。

5-1. 契約時はしっかりと、契約内容を確認しよう

ごくまれに、定期借家のことをあまりご存知でない方は、一般借家と同じような認識で住んでいる方もいます。

そのような方は契約期間満了のお知らせが届いてから焦ることがあります。

定期借家と知っていて住んでいる方はそのようなことはないと思われますが、特約などを確認することも大切です。

それは、中途解約が容易ではない一面があるのですが、特約として中途解約について書かれている場合があります。

人は生活している以上、いつどうなるかは予測不能なところがあります。

そのため、もしかしたら中途解約をする事態になる可能性もあります。

中途解約の特約がどのようなものかはしっかりと確認しましょう

5-2. 家賃滞納をすると退去をさせられることが

家賃滞納は貸主にとってリスクになり得ることです。それは一般借家において言えます。

基本的に借主の立場が強いため、家賃滞納があっても、そう簡単に追い出すことはできません。

しかし、定期借家は少々貸主が有利なところがあります。

したがって、家賃滞納があれば、退去させられます。

期間が短いという傾向はあるのですが、その一方で貸主と借主が納得をすればまた契約ができる可能性があります。

この時に家賃滞納などの問題行為があれば、貸主の方からまた契約しないと拒否されても、借主側は反論できません。

一般借家のようにはならないため、もし再び契約をして住み続けたいのであれば、貸主の方に自分が良い借主であると認識してもらう必要があります。

5-3. 契約期間後に居座ると、損害賠償の請求がある事も

一般借家においては、借主の居座りが非常に頭を悩ませる問題になっています。

場合によっては、立退料を支払ってでも立ち退いてもらうというケースもあります。

しかし、定期借家はそうは行きません。

期間限定で物件を借りているため、その期間が切れた後は居座る権利がないとみなされます。

そして、一般借家のように立退料を請求する権利もありません。

むしろ、居座ったがために新たな住民募集ができなかったことに対しての損害賠償請求の可能性が出てきます。

仮にその物件が気に入ったとしても、住み続けることは難しく、期間が切れて更新できなかったら速やかに引っ越しをする必要があると認識することが大切です。

5-4. 中途解約時に家賃を請求される可能性も

確かにやむを得ない事情がある場合は、中途解約をすること自体はできます。

しかし、そうなってしまったときは、契約期間の残りの家賃を支払うように言われる可能性があります。

そのため、もしもの時はそのような支払いがある可能性がある事は知っておきましょう。

ただし、中途解約に対する特約を付けることができるケースが多いです。

「絶対にこの期間は住む」と思っていても、事情が急に変わることはよくあります。

やむを得ない事情として「介護、療養、転勤」があります。

介護や療養は、体調不良や急な大病は誰しも突然やってくるケースが多いです。

転勤も昨今はいきなりそう言われてしまう可能性があります。

したがって、皆が皆、急に事情が変わることはあるのです。

そんな時に中途解約ができるとはいえ特約があると非常に助かります。

6. まとめ

貸主の立場が強くなりがちな定期借家制度ですが、とはまた違うメリットもたくさんあります。

その一方で、事情が違うが故のデメリットもあります。

定期借家はあまり流通しておらず、不慣れであることから怖いと思われがちです。

しかし、家賃が安い等の良い点も多いです。

そのため、貸主の利益が多い制度ではありますが、借主にとっても利害が合致しているのであれば、検討の余地はあります。