賃貸での仮契約書、トラブルにならないための対処法

賃貸の仮契約という言葉があります。

賃貸の契約の際によく耳にしませんか?

仮契約というのは非常にあいまいなもので、「契約」であるにも関わらず、法律的な拘束力が生じるわけではないというのが実情です。

仮契約を行うとは、どういうことなのでしょうか。

仮契約書に署名捺印すれば、どのような拘束を受けるのかについて、説明していきます。

1.賃貸の仮契約書とは

1-1.申し込み「仮契約」なのか

仮契約には様座な態様があり、必ずしも申し込み=「仮契約」ではありません。

仮契約には、以下のようなケースが想定されます。

①現時点では契約条件を合意するわけではないけが、いったんは、今後は確実に取引していく意思を示すために仮契約を取り交わすというケース

②賃貸借契約に関する条件の一部は納得しているが、その他の内容について合意ができていない場合に、話がまとまっている部分と今後調整する事項を分けて判断するために仮契約を締結するケース

③不動産会社の担当者とでは合意したが、不動産会社の組織上の了承を得ていないケース

④賃貸借契約の重要な内容である対象物件、保証金額、敷金額、賃料額、契約期間、使用目的には合意しており、今後更に打ち合わせを進めるケース

⑤賃貸借契約の条項は合意して理解しているが、一部の条項について特約を検討したいため本契約を締結せず、仮契約を締結する場合(決算期上の理由や解約条項についてなど)

公益社団法人全日本不動産協会HPより引用

1-2. 賃貸でも軽い気持ちで申し込むのは危険

仮契約というのは非常にあいまいなものなので、トラブルの原因にもなりかねません。

賃貸借契約は、契約における重要事項説明を受けた後に、署名捺印し、その後賃貸借契約書に署名・捺印して初めて成立するものです。

契約の前に、「仮契約」というものを賃借人に進めてくる不動産業者は、顧客の囲い込み行為として「仮契約」を迫っている可能性があります。

申し込みを行うとそれに伴い、審査会社や保証会社、賃貸人など様々な当事者が契約に向けて動き出すことになります。

確かに紛らわしい取引を行う業者にも非はあるのですが、「どうせキャンセルすればいい」と容易な気持ちで申し込みをすると、トラブルに発展することもありますから、注意が必要です。

 

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2. 仮契約(申し込み)後の流れとは

仮契約というものは、法的効力そのものが曖昧であり、賃貸借契約の成立については不動産業者の仲介を介すならば、契約の重要事項について重要事項説明を受け、それに対して署名捺印、その後賃貸借契約書への署名捺印があって、契約の効力が発生します。

もし、顧客への営業活動の一環で、何としても顧客を逃したくないという理由で仮契約がなされるとすれば、それは重要事項説明前になるでしょう。

なぜなら、仮契約という名称であっても、もしそれが重要事項説明を受け、署名捺印を行い、その後仮契約書に署名捺印したならば、その賃貸借契約は有効に成立してしまう可能性が高いからです。

ただし、その際に

「仮契約を締結してもキャンセルできます」

「あくまで仮の契約ですから、本契約ではありません」

などと説明されたのであればそれは、虚偽の事実を伝えて契約を締結させようとしていますから、詐欺行為等に該当する可能性があります。

「仮」という言葉を聞くと、なんとなくキャンセルがすぐできるのではないかと思いますよね。

しかし、仮契約という名称でも重要事項説明と署名捺印、仮契約書への署名捺印というプロセスを経ていれば、それは有効な契約となるので、キャンセル時は違約金等を請求される恐れもあることを忘れてはいけません。

3. 申し込み後にキャンセルしたら罰金が必要なのか

公益社団法人全日本不動産協会が示した累計から考察すると、

申し込み

重要事項説明・署名捺印

賃貸借契約書への署名捺印

以上を終えた段階で、契約は有効に成立しているものと考えられます。

重要事項説明前に仮契約が結ばれたのであれば、本契約の内容について賃貸人と賃借人の合意が交わされていない以上、賃貸借契約は未だ成立していないものと判断されます。

罰金というものを請求されることがあるならば、それを支払う義務は契約が成立していない以上ない、と考えられます。

4.賃貸仮契約のトラブル事例

4-1.賃貸借仮契約後の賃貸人側からのキャンセル

・相談内容

相談者Aは引っ越しにあたり、気に入った物件を見つけて不動産会社に申し込みを行い、賃貸の仮契約を行いました。

申込金を支払い、審査も無事通過しました。

しかし、その後、賃貸人側からキャンセルして欲しいとの話を受けました。

・コメント

このように仮契約段階で、賃貸人側からのキャンセルを要望されることもあるようです。

重要事項説明を受けてなければ、賃貸借契約は未成立のため、契約は解除される可能性が高いです。

このような場合、申込金が返金されるだけではなく、もし契約に向けて引っ越し業者を取り決め、引っ越し業者に支払いをしている等の損害が生じた場合は、損害賠償請求ができる可能性も高いでしょう。

明らかな賃貸人の債務不履行については、契約解除についてどのような対応を取れるのかを、不動産会社に相談し、賃貸人に確認しましょう。

4-2.賃貸借仮契約時の前払い代金の返還について

・相談内容

相談者Bさんは、気に入った物件に入居を決めて、不動産会社のすすめもあり、重要事項説明を受ける前に、仮契約書にサインをしました。

その後、申込金として5万円を支払いました。

不動産会社からは、「申込金のキャンセル時には代金の返還ができる」とだけ説明を受けました。

その後、熟慮の末、やはり契約を見送ることにしました。

不動産業者にキャンセルを申し出ると、「申込金の返還は領収書がなければ応じられない」と言われました。

相談者Bさんは領収書を紛失していたため、預り金は返せないと伝えられました。

領収書があると返金できて、領収書がないと家主へのキャンセル料金となるという説明に違和感を覚えています。

返還請求は可能でしょうか。

・コメント

このようなトラブルについては、非常に難しい対応を迫られます。

しかし、筋が通っていないと感じる方も多いのではないでしょうか。

申込金は、預り金という扱いであると考えられるので、本来であれば契約前のキャンセルであれば返還請求可能と考えられます。

こういった業者は、本当にキャンセル料として賃貸人に支払いをしているかということについても、確認を取る必要があります。

もし解決が難しいようであれば、第三者機関に相談するなどの対応を行いましょう。

5.まとめ

賃貸借契約において、重要事項説明を聞き、重要事項説明書への署名捺印後、賃貸借契約書への署名捺印がなければ契約は成立していません。

顧客の囲い込みの手段として、仮契約と言って、契約書に署名捺印させる業者は実際に存在します。

しかし、重要事項説明が済んでない以上は、仮契約には賃貸借契約を強制させる効力はないと考えられます。

このようなトラブルを防止するためにも、容易な申し込みや仮契約は結ばないようにしましょう。