賃貸住宅の場合、引っ越し(部屋からの退去)をする時には原状回復をすることが借りる側の義務になります。
引っ越しをするとなれば当然、新しい部屋の契約費用や引っ越しにかかるお金などもあります。
ですからできれば修繕費を請求されず、敷金が戻ってくるようにしたいものですよね。
そこで今回は原状回復で一番多い「壁紙に空いた穴」について解説!
自分で補修をする方法や注意点、修繕費用を請求される目安などをまとめて紹介します。
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このページでわかること
1. 賃貸の壁紙に空いた穴を補修する方法
補修材を使う
壁紙の穴の中でもサイズが小さい画鋲の穴は、市販されている「穴の補修材」を使えば簡単に直すことが出来ます。やり方はとても簡単です。
穴が開いている部分に補修材を埋めます。
余分にはみ出てしまった部分は乾く前に拭き取ります。
こうして自然に補修材が乾くのを待てば、補修完了です。
ボンドで穴埋め
同じく画鋲程度の小さな穴であれば、ボンドを使って穴埋めをする方法もあります。
木工用ボンドであれば透明なので穴の場所がバレてしまいますが、乾いたときの色が壁紙の色に似ているボンドを使えばほとんどバレません。
専用のパテ材を使う
壁紙の穴補修専用のパテ材を使えば、やや大きめの穴でも補修することはできます。
ポイントはパテ材の色です。
壁穴補修専用のパテ材にはいろいろな色があります。
そのため壁紙の色と同じ色のパテ材を使えば、多少大きめの穴であっても目立たなくすることが出来ます。
キレイな仕上がりを目指すのであれば、パテ材を穴に注入したら乾く前にへらを使って表面を平らにします。
できるだけ早く作業を終わらせたいのであればドライヤーなどを使って乾かす方法がありますが、自然乾燥させた方が仕上がりはキレイです。
2. 賃貸の壁紙に空いた穴を補修する場合の注意点
壁紙の穴の種類によっては補修の必要がないこともある
賃貸住宅では退去するときに原状回復するのが基本です。
もちろん壁紙に穴が開くということは、「あなたが開けた穴」と考えます。
ですから原則としては修繕するのが借主の義務になります。
ただし原状回復については、昔からトラブルも多いです。
そのため国交省では賃貸住宅での原状回復についてガイドラインを公表しています。
(1)原状回復とは
原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。
⇒ 原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化
(国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について)
ここが解釈のポイントです。
「原状回復」といわれると、「借りた時と同じ状態に戻すこと」というイメージがあります。
ところがこのガイドラインからも分かるように「通常の使用においてできてしまった穴はこれに含まれない」となります。
問題は「通常の使用でできた穴の判断」です。
単純に言えば「画鋲やピンでできた穴=通常の使用でできる穴」となります。
この程度の穴は普段生活をしていれば当然できる範囲の穴と考えます。
ところが重さのある照明や額を壁に飾るとなると、さすがに画鋲ではその重さを支えられません。
安全に取り付けるとなれば、ネジなどのように奥までしっかりと固定されるものを使います。
ですがこれは「通常の使用でできる穴」とは言いません。
壁紙の穴の大きさも画鋲などと比べると大きいですし、下地の板にも大きな穴が開きます。
そうなるとこの場合は補修が必要になります。
つまり壁紙に穴をあけてしまったとしても、穴の種類によって修繕が必要なものとそうではないものに分かれるのです。
「壁に穴が開いている」としても、すべてがあなたの責任で修繕しなければいけないというわけではないのです。
自分で補修したために修繕費用を請求されることもある
少しでも修繕費用を抑えたいのであれば、「自分でできる範囲は自分で修繕しよう」と考えるのは当然です。
ところが自分で直したことが原因で、逆に修繕費用を請求されてしまうこともあります。
例えばパテ材を使って穴の修繕をしたとしましょう。
壁の穴はきれいにふさがれていても壁紙の色と明らかに違う色であれば、見た目は明らかにおかしくなります。
持ち主があなた自身であれば問題はありませんが、賃貸住宅は大家さんが持ち主です。
ですから大家さんがあなたの修繕した穴の場所を見て「これは現状と同じとは言えない」と判断すれば、穴はふさがっていても修繕費用の請求対象になってしまいます。
特に壁紙は、部屋の印象を決める大事なポイントです。
部屋探しをする時も壁紙の色を見て決める人だっています。
まして壁紙の一部が明らかにほかの壁紙と違えば、違和感があるのは当然です。
この場合は修繕箇所が目立たなくなる範囲の壁紙の張替え作業が必要になります。
ですから修繕費用を抑えたい気持ちはわかりますが、賃貸住宅の場合は自己判断で修繕するとかえって修繕費用が高くなることがあることも覚えておいてください。
3. 賃貸退去時に修繕費が請求されるような壁紙の穴の大きさ
基本的に「画鋲」「押しピン」程度の大きさの穴は修繕費の対象になりません。
もちろん数が多くボロボロになっているようなものは対象になりまねません。
それよりも大きな穴の場合は、請求の対象になる可能性が高いと考えた方がよいでしょう。
4. 賃貸の壁紙に空いた穴を業者に補修してもらう場合の手順
基本的な補修の手順
まずは穴が開いた部分をコーキングする作業があります。
賃貸住宅の壁紙は量販されているものを使うことがほとんどですので、使用するコーキング材も壁紙の色に近い色を使います。
一般的には水性コーキングを使うことで穴の補修が出来ます。
また壁紙に穴が開いていると、釘やネジの腐食によって周辺の壁紙まで破損している場合もあります。
この場合は目立たない場所の破損であれば部分補修で対応します。
ただし目立つ場所にある場合は、破損部分を含めて㎡単位でクロスの張替えとなることがあります。
また大家さんの判断によっては、壁の穴を理由に壁全体のクロス張替えを要求される場合があります。
ただこれについては、原状回復でもトラブルが起こりやすい案件です。
そのため国交省のガイドラインでは「壁紙の補修の単位は㎡単位が目安」とあります。
そもそも壁全体のクロス張替えとなると「建物のグレードアップのための修繕」と判断します。
そのためその費用をすべて借主に請求するのは一般的ではないと考えます。
この時の修繕費用については、大家さんとの交渉次第となります。
修繕費用をお互いに折半するという場合もありますし、グレードアップのための修繕として費用は大家さんが負担することもあります。
とはいえあくまでも大家さん側の判断によるものなので、費用の目安がわかりにくいという点が問題点としてあります。
自分で修繕するときも必ず不動産会社に相談を!
自分で業者を依頼して壁紙の穴の修繕をするにしても、必ず不動産会社に相談するようにしてください。
確かに自分で業者選びをして修繕をすれば費用は明確ですし、場合によっては費用が安くなることもあります。
ところが壁紙の張替えをするということは、「あなたが故意に壁紙を張り替えた」とも解釈できます。
そのためせっかく業者に依頼して壁紙を補修しても、退去の際に「元通りにしてください」といわれ修繕費用を請求されることもあります。
さらにあなたが業者に依頼して修繕させたのですから、その費用を大家さんに請求してもい払ってもらえることはありません。
あなたの立場から言えば「きれいにしたのだから立て替えた費用は敷金から払い戻してもらいたい」と思うでしょう。
もちろんあらかじめ不動産会社を通して大家さんと費用に関する話し合いができていれば別ですが、そうでないのであれば支払われません。
それどころ勝手にあなたが業者に頼んでクロスの張替えをしたのですから、大家さんとしては「なんで勝手なことをしたの?」と逆に怒られてしまうこともあります。
もちろんこの場合は修繕にかかった費用を大家さんが支払う義務はありません。
このように壁紙の修繕に関しても、賃貸住宅の場合は必ず相談をすることが大事です。
直接大家さんと話し合いが出来るのであればそれでもかまいませんが、修繕後にトラブルとなることもあります。
ですからこの場合は仲介役として不動産会社に相談するのが一番です。
5. まとめ
壁紙の穴の補修といっても、穴の大きさや修繕の範囲によっては自分で補修しない方が修繕費用の請求額が下がることもあります。
また「原状回復」といっても「入居した時と同じ状態に戻す=原状回復」ではありません。
ただし自分で修繕する場合は、きちんと相談してからにすることが大事なポイントです。
せっかくきれいに直しても修繕箇所を「破損」と判断されてしまえば、結果的にかかった費用は無駄になります。
このようなトラブルにならないためにも、まずは相談をするということを心がけてくださいね。




