分譲マンションは「敷地内に他の住人との共用スペースが存在している」という点が一戸建て住宅との大きな違いです。
共用スペースのひとつである駐車場は賃貸方式を採用しているのが一般的で、抽選によって決められることが多いため、トラブルに発展することも少なくはありません。
そこで、実際にはどのようなトラブルがあるのかをお知らせするとともに、その回避方法などについても解説していきます。
このページでわかること
駐車場の抽選でありがちな5つのトラブル
- 入居が遅かったことで抽選自体が終わっていた
分譲マンションの購入が遅い場合、入居するときにはすでに駐車場の抽選自体が終わっていたということもありがちなトラブルです。
郊外であれば1世帯に対し2台分の駐車スペースが用意されているマンションもあり、あとからの入居でも駐車場が残っていることはあります。
しかし、都心の場合はそうはいきません。
マンション購入のタイミングによっては、抽選にすら参加できないことも少なくはないのです。
実際に、ほかの住人より入居が遅かったために、すでに敷地内の駐車場は満杯だったという体験談もあります。
隣接している駐車場と契約できた場合でも、立地によってはマンションから駐車場までのアクセスがスムーズではないなど、不便を強いられることになります。
- 両隣を大型車に挟まれて出し入れが大変!
抽選の結果、両隣を大型車に挟まれてしまったというトラブルもあります。
大型車が隣になった場合でも、通勤で日中のほとんどは駐車していないというならそう困ることはないでしょう。
しかし、週末だけ車を使う世帯や自宅で仕事をしている人の場合は平日のほとんどの時間に大型車が駐車されている状態になるので、毎日気を使いながら車を出し入れしなくてはなりません。
なかには、白線内にぎりぎり収まるようなサイズの車を所有している人もいます。
運悪くそのような車の隣になると、乗り降りの際にドアを開けるのも気を使います。
特に小さな子どもを持つ女性であれば、子どもの乗り降りの度に冷や冷やするかもしれません。
機械式駐車場(立体式駐車場)であれば、車の高さや幅に制限を設けているのが一般的ですが、平面駐車場の場合はほとんどサイズ制限がないため、ぶつけてしまったというトラブルも起こっています。
- 固定式で居住しているあいだは場所が変わらない
契約しているあいだはずっと同じ場所を使う固定制を採用しているマンションもあります。
この場合、出し入れが難しい場所に当たってしまってもずっと同じ場所を利用するしかありません。
車のサイズによってはやむなく買い替えるか、敷地内の駐車場はあきらめて近隣に借りるしかないでしょう。
出し入れに問題はなくても、敷地から離れた駐車場に当たった場合は、ずっとそこを使うことになります。
買い物や子どもの送迎の度に、荷物を抱えたり子どもの手を引いたりして距離のある駐車場から移動するのは大変なものです。
- 機械式の立体駐車場になってしまい時間がかかる
マンションによっては機械式の立体駐車場と平面駐車場の両方を用意していることもあります。
立体駐車場は運転者が自分で機械を操作することがほとんどのため、通勤前の時間がない場合でもいちいち車から降りて操作しないと出ることができません。
また、通勤時間が重なってしまったり、誰かがトラブルを起こしたりした場合には、その時間待つことになります。
マンションで立体駐車場に当たった場合は、使うタイミングや世帯数によっては不便になることも考えておきましょう。
機械音が静かな立体駐車場も増えていますが、夜間の場合は音に気を使うこともあります。
- 高層階の住民はそもそも抽選に参加していない?
抽選制と謳っている場合でも、実はすべての住人が公平に参加していないということも、分譲マンションの駐車場ではありがちなトラブルです。
たとえば、条件の良い場所には高級車ばかり駐車されており、そこは高層階の住人ばかりだったという例もあります。
賃料や管理費に大きく差がついている場合は納得できるかもしれませんが、表向きは公平な抽選としている場合ならやはり納得はいかない人のほうが多いものです。
抽選制で駐車場を決めるメリット・デメリット
・抽選制で決めることのメリット
- 駐車場所を公平に決めてもらうことができる
抽選制で駐車場を決める一番のメリットは、公平に場所を決められるということです。
マンションの作りやスペースの取り方にもよりますが、同じ駐車場であってもゴミ集積場のすぐ隣であったりエントランスに近い便利な場所であったりと条件は違ってきます。
先着順であれば誰でも良い場所を選びたいところですし、それはそれでもめる原因になります。
そこを抽選制にすることで、誰もが同じ条件で公平に駐車場の場所を決めることができます。
- 入居の時期に違いがあっても駐車場の確保が可能
マンションが完成しても、どの購入者も同時期で契約できるわけではありません。
先着順で決めてしまうと、完成と同時に入居できる住人の方が良い場所を確保しやすくなります。
しかし、抽選制であれば、ほかの住人より多少なり遅いタイミングで入居が決まった場合でも、公平に駐車場の場所を決めることができます。
ただし、ほとんどの戸数が決まってから入居する場合にはすでに抽選が終わっているのが一般的です。
・抽選制で決めることのデメリット
- 希望した場所を契約できるとは限らない
抽選制のデメリットは何と言っても自分の希望する場所が取れないということでしょう。
特に運転に自信がない人や、子どもの送迎などでできるだけエントランスに近い場所を確保したい人にとって、希望と全く違う場所が当たってしまうことは非常に困ります。
地下に駐車場がある場合には、地下から一般道または歩道へのアプローチ次第では事故の心配も出てくるでしょう。
もちろん、マンション側の設備として事故を回避するための設備を設けていることは多いですが、それでも見通しが悪い場所はあります。
- 抽選に外れてしまうこともある
抽選制で最も困るのは抽選に外れてしまうことです。
特に都心のマンションの場合、必ずしも世帯数に対して100%の駐車場が用意されているとは限りません。
そもそも台数が足りていない場合は、当然ながら抽選に外れて駐車場を確保できない人が出てくるのは当然です。
しかし、車を所有している以上はどこかに駐車場を用意する必要があります。
万が一、抽選に外れてしまった場合は、早めに近隣の駐車場を探して契約するようにしましょう。
駐車台数が少ないうえに使いにくい立地や作りになっている場合には、あらかじめ近隣に借りてしまうのも良い方法かもしれません。
駐車場の抽選は一回だけ?やり直しはできる?
駐車場の抽選については結果に納得できないという意見も見られます。
しかし、抽選自体が公平に駐車場を決めるという考えのもとで行われているため、実際には納得がいかないという理由でやり直しをするという事例はほとんど見られません。
はじめに1回抽選したら、住み続けるあいだはずっと同じ場所を使うと考えておいたほうがいいでしょう。
しかし、新築当時に抽選制を導入していなかったマンションの場合には、先に入居した住人たちだけが条件の良い場所を占有することになり、あとから入居した住人たちが不満を抱えるという事例も少なくはありません。
こうした住人の不満を解消するために、数年置きに抽選を行う「総入れ替え制度」を導入しているマンションも実際にはあります。
この方法をとると駐車台数が世帯数より少ないマンションであっても、どの住人も公平に敷地内の駐車場を使うチャンスが出てきます。
しかし、その一方で、早くから住んでいる住人のなかには新たな不満が出てしまうこともあるのです。
たとえば、マンション購入を検討する際、良い場所に駐車場が取れたことが決め手となって契約している人もいます。
しかし、入居してから条件が変わってしまい、ずっと使えると思っていた駐車場が抽選で変わることになっては新たに不満が出ても仕方はありません。
しかも、敷地内の駐車台数が不足している場合は、抽選で外れてしまうと駐車する場所すら失ってしまうことになります。
こうした問題は場合によっては訴訟問題に発展することもあり、共用部分である駐車場ははじめから抽選制をとっているマンションが増えているのです。
使いやすい駐車場を確保したい住人のためにマンション販売業者が「駐車場専用使用権」を販売する事例もあります。
しかし、権利内容の不明瞭さや、そもそも駐車場は共用部分であることから敷地の二重売りとなるなどの問題が指摘されており、抽選制のほうが一般的になっています。
【参考サイト】
- マンション管理士・行政書士 川原一守事務所「駐車場不足が引き起こすさまざまな問題」
- https://www.kawahara-mankan.com/knowledge/share/parking/
また、世帯数に対して100%以上の駐車場が確保されているマンションや、駐車場の場所や広さがどれも同じようなタイプで公平が保たれるように作られているマンションでは「総入れ替え制度」は導入していない場合があります。
マンションの駐車場についてトラブルをできるだけ回避するには、購入を決める前に駐車場の利用規約についてきちんと確認しておくことが大切です。
抽選は初回だけなのか、それとも2~3年置きに抽選のやり直しがある「総入れ替え制度」になっているのかどうか確認しておく必要があります。
定期的に抽選を行うことになっているマンションであっても、実際には規約通りに実施されないというケースも見られます。
また、使いやすさとしては問題なくても、迷惑駐車をする人が隣になるかもしれません。
それはそれで困る問題です。
分譲マンションは一度購入してしまうと簡単に出ることは難しいため、購入を決める前にさまざまな角度から見ておくほうがいいでしょう。
駐車場に不安がある場合には、あらかじめ近隣にも借りられそうな駐車場があるかどうか確認しておくことも解決方法のひとつと言えます。
マンションの駐車場は購入前にきちんと確認しよう
分譲マンションの駐車場は抽選制が一般的です。
抽選することで公平に駐車場を決められるというメリットはありますが、希望が取れるとは限らないのはデメリットと言えます。
抽選は最初だけしか行わないマンションもありますが、定期的に抽選して総入れ替えを行っているマンションもあります。
駐車場のトラブルを回避するためには、事前に駐車場の利用規約を確認し、不安があれば近隣の駐車場を探しておくのもいいでしょう。





