賃貸住宅では、貸主である大家さんから立ち退きを求められることがあります。
立ち退きに応じるにしても入居者であるあなたには新しい家を探す必要もあります。
新たに契約するときのお金や引っ越しにかかるお金も必要になります。
そのような時にポイントになるのが「立ち退き料」です。
ただ賃貸住宅の立ち退きに関するトラブルはよくあります。
特に立ち退き料に関する借主・貸主とのトラブルは多く、裁判になったケースも少なくありません。
そこで今回は賃貸住宅の立ち退き料の相場や計算方法について分かりやすく解説!
立ち退き料を巡る裁判の判例や、立ち退き料を交渉したい時のポイントについてもまとめて紹介します。
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1. 賃貸立ち退き料の相場・計算方法
立ち退き料は「発生する場合」と「発生しない場合」がある
賃貸住宅の立ち退きは、あくまでもイレギュラーな事態です。
契約期間というものがありますし、満了を迎えても契約の更新をすれば済み続けることが出来ることを契約時に確認しています。
一般的な契約の解約は、「貸主の理由」がほとんどです。
「間取りの広い部屋に引っ越す」「職場の関係で他県に引っ越す」などがほとんどの理由などで、契約の解約を申し出るのは原則「貸主」です。
でも借主である大家さんから解約を申し出ることもあります。
これは立ち退きによる解約と呼ばれるもので、あくまでも大家さんの都合で立ち退きを求められることを言います。
借主であるあなたの都合で解約する時には一般的には解約金などはありません(特約がある場合は例外)が、大家さんの都合で立ち退きを求められる場合には「立ち退き料」が発生するのが一般的です。
でも大家さんから立ち退きを申し入れられたとしても、立ち退き料が発生しないこともあります。
これはあなたが契約の違反をした場合となります。
契約違反の代表を挙げると「家賃を長期間滞納している」「管理規約違反を改善する意思が見られない」「住居以外の目的で使用している」があります。
これらは借主であるあなたの契約違反が原因となっていますので、大家さんから立ち退きを求められても立ち退き料は発生しません。
立ち退き料の相場
立ち退きとなれば新居の契約や引っ越し業者への支払いなど様々なお金が必要になります。
そのためその費用に充当してもらうために、立ち退き料を支払うのが一般的です。
ただ立ち退き料の支払い義務が法的に定められているわけではありません。
あくまでも大家さんサイドが「気持ちよく立ち退きに応じてもらうための誠意」として支払うものと考えます。
一般的には大家さんの都合で立ち退きとなる場合、現在住んでいる家賃の6か月分が立ち退き料の相場として考えられています。
立ち退き料の計算方法
立ち退き料の計算には、「立ち退きによって借主サイドにどの程度の損失を与えるのか」が計算をする時のポイントになります。
賃貸物件でも「住宅」として契約している場合、一人暮らしとファミリーでは損失の幅が変わります。
例えば一人暮らしの場合は、住む環境が変わってもライフスタイルにそれほど大きな変化は出てきません。
ところが子どもがいるファミリーの場合は違います。
小学生以上の子どもがいると、住居が変わることによって通学範囲が指定されるため転校を余儀なくされることがあります。
また保育園に入園予定の子どもがいる場合は、入園申し込みの手続きにも影響が出ます。
もしも認可保育園への入園申し込み期限が過ぎてから立ち退き要請となった場合、無認可保育園しか利用が出来なくなることもあります。
認可保育園と無認可保育園では保育料もかなり変わります。
もちろんその差額は立ち退く入居者の負担になります。
さらに立ち退き先となる新居の家賃が現在の家賃よりも高くなるケースもあります。
家賃は収入とのバランスが大事なので、家賃が高くなるとその分暮らしに影響が出ます。
さらに営業用として賃貸契約をしている場合、「その場所でなければいけない事情」も考えられます。
長年営業をしていればお得意さんも多いでしょうし、飲食関係の店舗であれば集客力の高い場所であることが売り上げにも大きく影響してきます。
このように立ち退きによってその後の生活・営業に大きな問題が起きる場合は、差額保証が必要になります。
ただし差額保証の金額は状況によって細かく判断されるため、一概に「どの程度の差額保証がもらえます」とは断言できません。
あくまでも「立ち退き後の生活にどれくらいの影響が出るのか」を総合的に判断して金額を計算します。
2. 賃貸立ち退き料の判例
経済的損失に関する判例
立ち退き料の金額について裁判で争われるケースで最も多いのは、立ち退き後の生活に大きな影響が出ることが考えられる場合です。
差額保証でも少し触れましたが、「立ち退きをしてもほとんど影響がない場合」と「立ち退きによって経済的にも大きなダメージが出る場合」に分かれます。
たとえば新しく賃貸契約をするにしても、契約にかかる初期費用はどの賃貸住宅でも必要です。
家賃が立ち退き前と同じであっても敷金・礼金の考え方は大家さんによっても変わりますし、新しい家の家賃が今よりも高ければ当然敷金・礼金の額も変わります。
またマイカーを持っている場合、駐車場の確保も必要になります。
駐車場込みの賃貸物件であれば問題ありませんが、駐車場がない場合は住宅とは別に駐車場の契約をしなければいけなくなります。
もちろん駐車場の契約も賃貸住宅の契約と同じく、敷金・前家賃は必要です。
こうした費用は全て初期費用として必要になりますから、どのようなケースであったとしても新たに賃貸住宅を契約すれば経済的な負担は発生します。
ただし立ち退き料を巡る裁判の判例では、「立ち退きによって発生する経済的負担のすべてを立ち退き料に含めて支払うのは相当ではない」とするのが多く見られます。
もちろん経済的損失の範囲は一般的な立ち退き料に加算するのが妥当です。
でも判例では。「貸主(大家さん)にも立ち退きに関する正当な事由がある」という点が考慮されます。
そのため立ち退きによって起きる経済的損失も「一定の割合で計算するのが相当」としています。
3. 賃貸の立ち退き料を交渉することは可能?
立ち退き料の交渉をすることは簡単なことではありません。
ですが交渉は可能です。
まず「正当な事由がある立ち退き請求」ということが認められるためには、貸主(大家さん)は最低でも6か月前に立ち退きについて借主に立ち退きの申し入れをする必要があります。
6か月を過ぎると法的な効力が出てきますので、大家さんの都合で立ち退きを求める場合は必ず6か月前までに連絡があります。
ただどんな理由であったとしても、いきなり「6か月後に立ち退いてください」といわれてその場で了承する人はいませんよね?
何しろ立ち退きとなればそれなりに費用が掛かりますし、立ち退きの理由がどうであれ6か月以内に確実に退去することが難しい場合もあります。
そこで立ち退きの申し入れのあと、約1か月を目安に仲介業者(不動産会社)との交渉があります。
この時に立ち退き料について交渉することはできます。
ただこの時の交渉で納得できる内容を提示できなかった場合は、裁判になることもあります。
裁判になった場合でも最終的に判決まで持ち込むということは少なく、ほとんどの場合が裁判代での和解交渉でクローズとなります。
少しでも立ち退き料を上げたい時のポイント
過去の判例から見ても、相場といわれる立ち退き料に経済的損失分を全額上乗せすることはほとんどありません。
もちろん上乗せは出来ますが、その範囲は一定の割合となります。
そうはいっても大家さんの都合で立ち退かなければならないのですから、少しでも立ち退き料は高くしてほしいというのが借主の本音ですよね?
その場合は「速やかに交渉する」ということがポイントです。
ここでの「速やかに」というのは、借主・貸主それぞれの主張をきちんと伝えお互いに納得できる妥協案を早く見つけるということです。
立ち退き料の交渉では、交渉を長引かせたからと言って立ち退き料が高くなるということはほとんどありません。
逆に貸主の印象が悪くなって、妥協案として提示された立ち退き料よりも安くなる可能性もあります。
あくまでも貸主である大家さんにもあなたに立ち退きをお願いしなければならない正当な理由があるのですから、お互いが納得できる妥協案を早く見つけて合意することが少しでも立ち退き料が高くなるポイントです。
4. まとめ
賃貸の立ち退き料の相場は、一般的に家賃の6か月分相当となっています。
立ち退きによって借主には経済的な負担が出てきますので、その差額分を上乗せして立ち退き料を支払うというのが通例となっています。
もちろん立ち退き料は交渉することが出来ます。
でもこれは相場よりも明らかに安い場合と考えておきましょう。
損失分も含めて家賃7~10ヵ月分を立ち退き料とするのが実際の現場では多いですので、これよりも明らかに安く提示されたときが交渉のタイミングと考えるのがおすすめです。





