賃貸物件で立ち退き通知書が届いた!受け入れるしかないの?

賃貸住宅では、大家さん(または管理会社)からあなたに「立ち退き通知書」が届くことがあります。

実際にこのような通知書が突然送られてくると驚いてしまいますが、今すぐに家を出なければいけないということではありません。

ただしその書類には「どうして立ち退きをしてほしいのか」「今後どのようにしてほしいのか」などが書かれています。

そこで今回は「立ち退き通知書とはどんなものなのか?」という点から詳しく解説!

通知書が届いた時に確認すべきポイントやその後の対応の仕方についてもわかりやすく紹介していきます。

1. 賃貸の立ち退き通知書とは?

立ち退き通知書は、簡単にいうと「大家さんからあなたに対して立ち退きをお願いする書類」のことです。

立ち退きは「今すぐ」ではない

通知書をもらったとしても、慌てることはありません。

受け取ったとしても「来月までに出て行ってくれ」などということではありません。

あくまでも大家さんの都合でお願いしていることですから、ちゃんと立ち退きまでに猶予期間があります。

立ち退きは拒否することもできる

通知書が届いたとしても、内容に納得が出来ないことがあれば立ち退きを拒否することもできます。

もちろん拒否が出来る条件というものもあります。

まず「立ち退きを希望する理由」です。

今回の場合は大家さんの方から立ち退き(契約の解除)をしたいという申し出ですから、その書類には「なぜ立ち退きをしてほしいのか?」という理由がきちんと書かれています。

だたしこの理由の内容によっては、通知書をもらったとしても拒否することが出来ます。

拒否できないこともある

「通知書が来ても拒否が出来る」とは言いましたが、それはあなたがきちんとルールを守っていることが前提にあります。

賃貸契約をする時に、様々なルールが書かれている「賃貸借契約書」を手渡されていますよね?

これは賃貸住宅の法律のようなものですから、その内容を守らない場合は退去を命じられることがあります。

これは「立ち退き」とは違い「強制退去」になります。

でも普通に暮らしていればこういうことは起こりません。

例えば「住居以外の目的で部屋を使っている」「ペット禁止なのに隠れてペットを飼っていた」「家賃を数か月滞納している」などがこれに当たります。

支払われるお金の話もある

大家さんの都合で立ち退きを依頼する場合、基本的に立ち退き料が支払われます。

考えてみればあなたの希望ではなく大家さんの都合で出ていかなければいけないのですから、慰謝料のようなものと考えればわかりやすいでしょう。

ちなみにここであえて「慰謝料」を例に挙げたのには理由があります。

どのような損害を受けたとしても、慰謝料には「相場」というものがありますよね?

もちろん立ち退きに関する立ち退き料にも相場はあります。

確かに立ち退きを申し入れられたあなたとしては「理不尽な要求をされたのに、それに対して納得できる金額を支払うのが常識ではないの?」と思うかもしれません。

でも法律においては「立ち退きを申し入れた大家さんは必ず立ち退き料を払わなければいけない」とはどこにも書いてありません。

また「立ち退き料は○○万円とする」ということも含まれていません。

あくまでも立ち退き料を払うのは慣習であって、その費用も相場に基づいて支払われます。

それでも「立ち退きに応じてくれるのであればお支払するお金の用意があります」ということが書かれているのもこの書類なのです。

2. 立ち退き通知書の確認ポイント

6か月以上前に通知が届いているか

立ち退き通知書は、借主に6か月以上前に通知しなければ法的な効力を持ちません。

これは借主の暮らしを守るということにもつながるため、法律でその期間がきちんと定められています。

どのような理由であったとしても、正当な法的効力を持つ通知書として認められるためには6か月以上前に送る必要があるのです。

もちろんギリギリ6か月前に送っても問題はありませんが、これだと実際に借主であるあなたがその内容を確認するまでの時間が含まれていません。

「ちゃんと消印も書類の発行日も規定通り6か月前になっている」といっても、立ち退きを求められているあなた自身がその内容を確認したのが届いてから1か月後のことであれば何の意味もありません。

そこでこのような通知書は余裕をもって6か月以上前に送られてきます。

ただし最初からこの原則を守っていない通知書もたまにあります。

この場合は「通知書としての法的効力がない」と判断されますので、立ち退きを拒否することも出来ます。

そのためにも通知書が発行された日時と退去の期限とする日までが最低6か月以上開いていることを必ず確認しましょう。

立ち退きの正当な事由であるか

通知書には「なぜ立ち退いてほしいのか」が書かれています。

これはとても大事なポイントです。

どんな理由であっても、大家さんから「出て行ってほしい」といわれたら立ち退きに応じなければいけないということではありません。

立ち退きに応じる必要があるのは、「明らかに正当な事由である」と判断できる場合に限られます。

最も多いのは「建物の老朽化によって建て直しをする(大規模な改修工事をする)」です。

最近は全国各地で災害レベルの地震が多発しています。

そのため耐震強度についても昔より厳しくなっています。

また賃貸住宅には「消防法」も関係します。

この法律に基づいた建物の構造となっていない場合は、行政から改善指導を受けます。

これを受けても改善をせずに放置していると、大家さんは行政指導・行政処分を受けることがあります。

そのためこうしたことが理由で建物の立て替えをしなければならなくなった場合は、借主に対して立ち退きの申し入れをします。

ただし「グレードアップの為に改修工事をしたいから立ち退きしてほしい」というのは、正当な理由として認められないことがあります。

また「結婚した親戚の子どもを住まわせたいから立ち退きしてくれ」というのも、正当な理由とはなりません。

この場合は「ほかに住む場所がないとは考えられない」と判断できますから、契約中の借主を立ち退きさせるだけの正当性は認められません。

このように通知書を受け取ったとしても、その理由をみてあなただけでなく一般常識的に「これは正当な理由だ」と思われる内容でなければ立ち退きを拒否することが出来ます。

賃貸契約の解約手続きが必要

立ち退きというと「追い出される」というイメージがあるかもしれませんが、これは違います。

あくまでも「賃貸契約の解約(解除)」ですから、合意した場合には解約手続きが必要です。

この手続きは引っ越しをする時に一般的に行われる解約手続きとほぼ同じです。

ただし原状回復のための費用として支払った敷金は、原則返金されます。

この点についていえば、一般的な解約手続きと違うといえます。

立ち退き料について

通知書には立ち退き料についても書かれています。

立ち退き料は貸主・借主の間で最もトラブルになりやすいことなので、最近の書類では支払いの範囲まで細かく書かれています。

立ち退きをすれば、借主であるあなたに経済的損失が起きますよね?

例えば子どもの学校を転校させなければならなくなったり、荷物が多くて引っ越し費用がかさんでしまうこともあります。

このような経済的な負担は、借主としては全額支払ってほしいと思いますよね?

そこで「立ち退き料に加算する一定の範囲の負担」としてよく使われるのが「引っ越し費用」です。

ですから実際にあなたに支払われる予定のお金は「立ち退き料&引っ越し費用」が一般的です。

もちろんそれ以上の保証をしてくれる場合もありますが、それは例外と考えた方が無難です。

費用の相場としては立ち退き料が家賃の6か月分、引っ越し費用が家族で10~15万円です。

3. 賃貸の立ち退き通知書が届いた場合どうすればいい?

納得したうえで立ち退きに応じる

立ち退き通知書は、あくまでも大家さんの方から「立ち退きをお願いさせていただく」という立場で作られた書類です。

ですから強制退去とは違います。

でも立ち退きをお願いする大家さんの心境としては、「こちらの都合で住民の皆さんに迷惑をかけてしまい申し訳ない」というのが本音です。

ですから立ち退きの理由も切羽詰まった内容であることがほとんどです。

とはいえあくまでもお互いに納得しなければ立ち退きとはなりません。

実際に内容に不服があるとして裁判で争うケースも多いです。

もちろん裁判となれば時間もお金もかかります。

ですからできることであれば通知書を受け取った時点で、疑問点があれば大家さん(または管理会社)に確認を取ることが大事です。

きちんと納得できれば、このことが原因でトラブルになることはありません。

ですから少しでも不満・疑問があるうちはそれを解消する努力はしましょう。

立ち退き料の交渉は「相場」を目安にする

立ち退き料を巡るトラブルは数多くあります。

もちろん立ち退きに関する費用が高くなれば、その費用を全額支払ってもらいたいと思うあなたの気持ちもわかります。

でも実際に立ち退き料をめぐる裁判では、立ち退き料の相場よりも安い場合に行われます。

逆に相場より高く提示された立ち退き料を「もっと高くしよう」として裁判に持ち込むと、「相場よりも高すぎる」として判決で当初提示された金額よりも安くなることがあります。

ですから金額に納得がいかない場合でも、一般的な立ち退き料の相場と比較してみることが大事なポイントです。

交渉は出来るだけスピーディーに進める

立ち退きを受け入れるのであれば、出来るだけスピーディーに物事を進めていくようにしましょう。

特にシーズンによっては新居が見つかりにくい場合があります。

このような場合も「立ち退きに応じたいけれど新しい住居が見つからない」と相談すれば、不動産会社が住居探しを手伝ってくれることもよくあります。

また立ち退き料に不満がある場合も、出来るだけ早くそのことを相手に伝え交渉することが大事です。

引き延ばしたからと言って立ち退き料が値上がりすることはありません。

むしろ大家さんの印象が悪くなり、あなたが不利になることもあります。

4. まとめ

賃貸の立ち退き通知書が届いても、「今すぐに出て行ってほしい」という内容のものではありません。

また立ち退きの理由が正当と認められない場合は、立ち退きに応じないという選択肢もあります。

いずれにしても通知書が届いてから何もアクションを起こさないのはNGですよ。