賃貸の原状回復の範囲はどこまで?【障子編】

賃貸住宅を退去する時には、入居者の義務として「原状回復」が問題になります。

賃貸住宅に住んだことがある人であれば「入居した状態に戻すのが原状回復」というイメージを持っていると思いますが、これは正しいイメージとは少しちがいます。

とくに障子に関しては、障子紙や障子戸など各部位によって、原状回復の考え方がちがう場合があります。

そこで今回は賃貸の障子の原状回復について詳しく解説!

借主であるあなたが負担しなければいけない範囲や修繕にかかる費用の相場、とくに障子の原状回復でよくあるトラブルについて分かりやすく解説します。

1. 賃貸の原状回復の範囲はどこまで?【障子編】

1-1. 貸主負担になるもの

障子の汚れ

長期間住み続けていれば、障子の汚れも自然とつきます。

故意にキズをつけた場合などに生じるのが原状回復の義務ですから、障子の汚れも故意につけた汚れでないのであれば、「貸主の負担」となるのが基本です。

ですから「引越しの前に障子を貼り変えなければいけない」ということはありません。

障子の木枠の日焼け

障子は仕切りとして使うこともありますが、日よけとしての役目もあります。

とくに障子には障子紙が張られていますから、日差しが強い場所に設置することで室内に入ってくる光を柔らかくする効果もあります。

でもこのような場所にある障子の木枠は、日焼けによって変色してしまうことがあります。

この場合は、経年劣化で、「一般的な使い方をしていれば必ず起きる現象」と考えられるので、張替え費用は「貸主の負担」となります。

障子の木枠の汚れ

障子の枠は基本的に木製でできています。

この部分の手垢などの汚れは、使い続けていれば必ずできてしまうものです。

このような場合、修繕費用は「貸主の負担」と考えます。

経年劣化によって障子の木枠に不具合が出た場合

障子戸の基本は木製の木枠です。

長く使い続ければその分、床に設置している部分などは消耗します。

また、家具や梁の重量によって、少しずつ障子の木枠が変形してくることがあります。

これは「経年劣化が原因である」と考えられます。

障子の木枠は「障子戸」と呼び、建具(開閉機能がある仕切り)の一種に分類されます。

部屋に設置されている建具には、それぞれの部分に「耐用年数」というものがあります。

もちろん、障子戸についても耐用年数はあります。

ただし、退去時の修繕費用の請求となると、専用の計算式にもとづいて行います。

ですから例外もありますが、基本的には長年使い続けたことによって起きた障子の木枠(障子戸)の修繕費用は「貸主の負担」となります。

1-2. 借主負担になるもの

明らかに故意で破ってしまった障子紙

障子紙は薄くて破れやすいです。

これは間接的に日の光を室内に取り入れる役目もあるからなのですが、そのことが理由でちょっとしたことでも破れてしまいます。

とくに小さな子どもがいる場合は、遊んでいる間に障子紙に穴をあけてしまうことがあります。

しかもこれが楽しい遊びだと覚えてしまうと、あっという間に家中の障子紙に穴をあけてしまうこともあります。

子どもがやったことであってもこれはさすがに「故意の破損」と言えます。

ですからこの場合の修繕費は「借主が負担」となります。

組子を折ってしまった

障子には枠に対して格子状に細い木材が使われていますよね? これを「組子(くみこ)」といいます。

縦に取り付けられているものは「竪子(たてこ)」といい、横に取り付けられているものは「横子(よここ)」といいます。

一般的な使い方をしていても「障子紙が破れてしまう」ということは考えられます。

でも障子の重要な部品である組子が「折れる」「割れる」ということは、よほどの事情がない限り、ありません。

そこで、組子が折れたり、割れたりした場合は、借主の故意による破損と判断されます。

腰板に傷をつけてしまった場合

腰板は、障子の下の部分に取り付けられている板のことです。

最近では腰板がついていない障子も見られるようになりましたが、一般的な障子であれば必ず腰板がついています。

この部分に傷をつけたり穴をあけてしまった場合は、その修繕費は「借主が負担」と考えるのが妥当です。

この部分にキズや穴が開くことは、日常生活の中では考えられません。

ですから基本的には「入居者が故意に破損させたもの」と判断するのです。

木の枠に猫が爪を研いでしまった場合

ペット可の物件で障子があるということは滅多にないのですが、和室の窓に障子が設置されているケースはあります。

ペットの中でも要注意なのが「猫」です。

猫の爪は定期的に研がなければいけませんし、その行為そのものが好きな猫もいます。

そんな猫にとって、障子の木枠は、格好の"爪とぎ場”になります。

さすがに猫の爪でひっかかれたキズは深いので、自分で修繕するのは難しいです。

この場合の修繕費用は「借主の負担」となります。

2. 賃貸の障子張り替え費用の相場

賃貸マンションの障子に使われている障子紙は、比較的値段の安い障子紙を利用しています。

そのため業者に依頼した場合、障子1枚当たり2000~3000円程度とみておくとよいでしょう。

ただし障子紙の素材にも様々あり、中にはプラスチックタイプの障子紙もあります。

また、衝撃に強く破れにくい障子紙もあるので、こうした障子紙が使われていた場合は、材料費だけで1枚当たり5000円程度かかります。

もちろん業者に依頼する時には材料費に工賃が加わりますので、張替え費用が1枚あたり5000円を超える場合もあります。

3. 賃貸退去時の障子の修繕でよくあるトラブル

自分で障子紙を張り替えたことが問題になるケース

破れてしまった障子紙を修繕する方法として一番手頃なのは「自分で張り直す」です。

障子紙の張替え作業そのものはそれほど難しいことではありません。

また張り替える障子紙と専用の糊さえあればだれでもできますから、コストも抑えられて便利です。

ところがこれが後からトラブルになることがあります。

大家さんのとらえ方次第になるのですが、「破れていたから張り替えた」というあなたの主張に対して、「勝手に既存の障子を取り外されてしまった」と大家さんがとらえてしまう場合があります。

もしも、あなたの主張を受け入れてくれたのであれば修繕費用は掛かりませんが、後者のとらえ方をされた場合は原状回復の義務があなたに発生します。

そのためせっかく張り直した障子紙も全て取り外さなければいけませんし、元通りの障子戸になるように修繕しなおさなければいけません。

しかもこの場合は「故意に障子紙を取り外された」ととらえられていますので、修繕費用は借主であるあなたの負担となります。

障子紙と障子戸では負担の範囲が違う

障子紙と障子戸はセットで考えると思いますが、原状回復としてこの2つを見てみると「障子紙=消耗品」「障子戸=建具」と考えます。

建具の場合は基本的に貸主である大家さんが管理します。

そのためあなたが故意に破損したわけでないのであれば、修繕費用を請求されることはほとんどありません。

その代わり障子紙に関しては判断が難しいです。

障子紙は消耗品として考えるので、一般的な使い方をしていて日焼けや汚れ、変色が起きた場合の負担は「貸主」または「一部借主が負担」となります。

ところが障子紙は破れやすい性質なので、子どもが遊んで破ってしまったり絵をかいてしまうこともありますよね? この場合は「故意に破損させた」と判断されるので、消耗品であっても修繕費用は借主であるあなたになります。

この判断の違いを理解するのが難しいのですが、「よほどのことがなければ障子紙以外の修繕費用の請求はない」と考えても良いでしょう。

4. まとめ

賃貸の障子の修繕については、正直なところ大家さんの判断によるものが多いといえます。

ただ一般的な使い方をしていれば、修繕対象になるのは消耗品である障子紙なので、請求される金額がそれほど高くなることはありません。

ただし自分で修繕した場合、大家さんの判断によっては「原状回復してください」といわれることもあります。

どのように判断されるかについては大家さん次第なので、気になる場合は自分で修繕する前に管理会社に相談してみるのが良いですよ。