部屋を借りるための契約を交わすときには、借りる本人の身分証明や収入の証明だけでなく、連帯保証人が必要な場合があります。
しかし連帯保証人を探すときには連帯保証人にはどんな役割があるのか、また連帯保証人は誰でもなることができるか疑問に思うことがあります。
今回は賃貸での連帯保証人について、連帯保証人が必要な理由、連帯保証人になるための条件、さらには連帯保証人が見つからない場合について詳しく紹介します。
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このページでわかること
1. 賃貸の連帯保証人とは?
保証人とはある人の身元や債務などを保証する人という意味があります。
誰かからお金を借りた場合には、決められた期限までお金を返す義務があります。
しかし状況によっては決められた期限までお金を返すことができない場合もありえます。
そうしたリスクを考えて、お金を貸す人は期限までにお金を返済できなかったときに、借りた人の代わりに別の人がお金を払うという契約を交わします。
それが保証人にあたります。
アパートやマンションを借りる場合でも賃貸トラブルが生じることがあります。
たとえばアパートを借りている借主が期限までに家賃を払うことができずに滞納した場合や、アパートの設備を何らかの理由で破損してしまい多額の賠償金を支払わなくてはならない場合などのケースがあります。
そのような重大なトラブルが起きても必ず返済できるように、部屋を借りる前にあらかじめ本人に代わって支払いができる人を決めておきます。
アパートやマンションなどの賃貸借契約では、そのような人について連帯保証人という言葉を用います。
1-1. 連帯保証人制度について
日本では部屋の貸主の家賃収入やアパートの修繕費用などを守るために連帯保証人を立てることについて、連帯保証制度として法律で定めています。
国土交通省が定める賃貸住宅標準契約書の第16条には連帯保証人についての内容が次のように言及されています。
「連帯保証人は、借主と連帯して本契約から生じる借主の債務を負担するものとする。」
つまり賃貸契約をした借主が何らかの事情により返済が不可能となった場合には連帯保証人が借主に代わって返済しなければなりません。
借主が家賃などを払えなくなった場合には、請求書が連帯保証人のもとへ送付されます。
その場合には連帯保証人としての義務を果たさなければいけませんので支払う必要があります。
連帯保証人が家賃を借主の代わりに支払った場合やアパートの設備の破損についての弁償金を支払った場合には、貸主に支払った金額を借主に請求することもできます。
法律上ではこのことを求償権といいます。
求償権は返済することができなかった借主だけにではなく、他にも連帯保証人がいる場合には連帯保証人を頭数で割った金額を他の連帯保証人に請求することができます。
連帯保証人が家賃を借主の代わりに支払うことを拒否することはできません。
しかし支払わなければならない金額が大きい場合には連帯保証人に支払う意思があっても不可能な場合もあります。
その場合には任意整理や自己破産が必要になる場合もありますので注意が必要です。
このように連帯保証人から見るとほとんどメリットがないため、連帯保証人となったものの解除したいと思う場合もあります。
しかし連帯保証人の契約を解除するためには債務が無くなった状態でなければなりません。
賃貸契約の場合、借主が住み続ける場合には常に家賃という債務が発生するので、連帯保証人の契約の解除はきわめて難しいといえます。
もしどうしても連帯保証人の契約を解除したい場合には、部屋の貸主との合意があれば行うこともできますが、その時には別の連帯保証人を代わりに立てるなどの措置が必要となります。
連帯保証人に関する法律は1896年に定められた民法に基づくものですが、2017年に民法が改正されました。
それによって連帯保証人に関する内容についても変更されました。
改定された賃貸住宅標準契約書の第17条には連帯保証人についての内容が以下のように言及されています。
「連帯保証人は、借主と連帯して、本契約から生じる借主の債務を負担するものとする。本契約が更新された場合においても、同様とする。前項の連帯保証人の負担は、頭書及び記名押印欄に記載する極度額を限度とする。連帯保証人が負担する債務の元本は、借主又は連帯保証人が死亡したときに、確定するものとする。連帯保証人の請求があったときは、貸主は、借主に対し、遅滞なく、賃料及び共益費等の支払状況や滞納金の額、損害賠償の額等、借主の全ての債務の額等に関する情報を提供しなければならない。」
以前の賃貸住宅標準契約書では借主が支払うことのできなかった全ての金額を連帯保証人が代わって支払う義務がありましたが、改定された賃貸住宅標準契約書では連帯保証人が負担する義務のある金額について限度額を設けることができるというものに変更がなされました。
限度額を設けたならば変更されることはありません。
たとえば借主が部屋の更新をした際に家賃が上がった場合でも、連帯保証人の限度額を増やすことはできません。
この改定された賃貸住宅標準契約書は2020年の4月1日に施行されます。
1-2. 保証人と連帯保証人の違いについて
連帯保証人に近い言葉として保証人という言葉があります。
連帯保証人と保証人は同じ意味だと思う人が多いですが、法律上ではまったく別の扱いになります。
部屋を借りている借主の支払いに関する保証をするという意味では同じですが、保証するタイミングや保証しなければならない金額などで大きく異なります。
保証人は分別の利益、催告の抗弁権、検索の抗弁権の3つの点での優遇があります。
・分別の利益
分配の利益とはある債務を複数名の保証人によって保証する時に、保証人が負うそれぞれの債務は主たる債務を保証人の頭数で割ったものにとどめるというものです。
例えば、不動産の借主が100万円の家賃を滞納したために保証人に支払いの義務が発生した場合、もし5人の保証人がいる場合には保証人の人数で割った金額、20万円分の金額についての支払いのみが必要となります。
他の80万分については他の保証人に対して支払いの義務があるため、支払う必要はありません。
・催告の抗弁権
催告の抗弁権とは、保証人に債務の請求が来た場合でも、最初に債務者に請求を行うよう抗弁できる保証人の権利のことを意味しています。
例えば、不動産の借主が100万円の家賃を滞納したために保証人に支払いの義務が発生した場合、最初に借主が返済できるかの返済能力を調査します。
借主が100万円以上の財産を所有していて返済能力があると証明できる場合には、保証人は支払いを拒否することができます。
そして借主は返済能力があるので、借主から返済してもらうか、それができない場合には借主の財産を差し押さえるように主張することができます。
・検索の抗弁権
検索の抗弁権とは、保証人に債務の請求が来た場合でも、最初に債務者に請求を行うよう抗弁できる保証人の権利のことを意味しています。
例えば、不動産の借主が100万円の家賃を滞納したために保証人に支払いの義務が発生した場合、最初に借主の居場所を確認します。
そして借主が行方不明だったりすでに破産していたりしていなければ、借主に請求するようにと主張することができます。
連帯保証人は分別の利益、催告の抗弁権、検索の抗弁権についての権利を持っていません。
そのため不動産の借主の連帯保証人が他にもいるとしても、人数割りではなく連帯保証人の1人1人が借主の滞納した家賃について支払う義務が生じます。
また借主が返済できるほどの財産を所有していたとしても借主の滞納した家賃の請求を拒否することはできません。
そして貸主が最初に連帯保証人に借主の滞納した家賃を請求しても拒否をすることはできません。
このように連帯保証人の方が支払いの義務に関してかなり重く定められています。
また支払い義務に関しての範囲もかなり広いものになっています。
時には借主の返済能力がないために支払うことができないケースもあります。
そのような場合には借主が破産などの手続きを行うこともありますが、そうなったとしても連帯保証人には支払いの義務が残ります。
例えば借主が破産手続きを行って支払いについての義務を免れたとしても、連帯保証人に対する支払いの義務は消えることはありませんので、借主の滞納した金額の全てを支払う必要があります。
借主が個人民事再生手続きを行った場合には、借主は貸主に対して滞納した家賃を減額することができます。
そうすると貸主は借主ではなく、連帯保証人に借主の滞納した金額の全額の支払いを請求することができます。
そのために不動産の部屋の賃貸契約を交わす場合には、保証人ではなく連帯保証人を必要とする場合がほとんどとなります。
1-3. 連帯保証人は必ず必要なの?
不動産の賃貸契約を交わす際に貸主は保証人を必要とするか決めることができます。
もし貸主側で連帯保証人を必要としなければ、借主側は連帯保証人を見つける必要はありません。
また貸主側が連帯保証人ではなく保証人だけを必要とする場合にも、借主側は連帯保証人ではなく保証人のみで契約を交わすことができます。
しかし不動産の賃貸契約ではほとんどの場合、連帯保証人を必要とします。
貸主の立場で考えると、借主が頻繁に家賃を滞納したり、建物を乱暴に扱われたことによって設備を破壊されたりしまっては困ります。
家賃収入が入らないだけでなく場合によっては修繕費などを支払う必要もあります。
貸主としてはそうしたリスクを負わないためにも連帯保証人を立てるように要求します。
2. 連帯保証人の条件
連帯保証人の条件については法律では定められていません。
そのため借主が選んだ人なら誰でも連帯保証人として立てることができます。
しかし多くの不動産会社では連帯保証人の条件を定めている場合がほとんどです。
連帯保証人を立てる場合の条件として以下の点があります。
- 部屋の借主の親族であること
- 部屋の支払いが滞納したときに支払うことのできる定期的な収入がある
- すぐに連絡が可能な場所に住んでいる
連帯保証人については借主に対して責任を負える可能性が高い人が条件となります。
そのため両親や兄弟などを連帯保証人として立てることが求められます。
不動産会社の多くは2親以内の親族を連帯保証人として要求します。
会社の上司や友人、さらには恋人については認められない場合もあります。
連帯保証人として求められるのは、不動産の借主が滞納して返済が困難になったときに必ず借主に代わって支払うことです。
そのために毎月の安定した収入やある程度の貯蓄額が必要となります。
場合によっては連帯保証人の勤務先や年収、さらには年齢や貯蓄額について質問される場合もあります。
そのため両親が年金暮らしで年金額がそれほど多くなく、貯蓄額も多いとみなされない場合には連帯保証人として認めてもらえないこともあります。
また両親に安定した収入があったとしても、高齢の場合には認めてもらえないこともあります。
収入が安定している親族の場合でも過去に家賃の滞納やクレジットカードについての支払いの滞納などのトラブルがあった場合には、連帯保証人として認めてもらえない場合もあります。
過去の滞納に関するトラブルの記録は金融機関に残っている場合も多いので、信用面で不安がある場合には連帯保証人としては難しいこともあります。
連帯保証人として適しているのは、借主との間にトラブルが生じた場合にすぐに連絡を取ることができる人です。
そのため親族で一定の収入のある人でも外国に住んでいる場合には連絡がとりにくいため連帯保証人として立てることは困難です。
同じように留学や仕事で日本に住んでいる外国人の場合は海外に住む両親や兄弟を連帯保証人として立てても不動産会社に認められることはありません。
連帯保証人を立てる場合には安定した契約者に近い親族で収入があり、身元がはっきりしていて、金融トラブルの無い人が適しています。
3. 賃貸契約時に連帯保証人が準備する書類
賃貸契約のときに必要な連帯保証人の書類には以下のものがあります。
3-1. 印鑑証明書
印鑑登録証明書については基本的には発行から3カ月以内の印鑑登録証明書が望ましいです。
また提出の印鑑登録証明書はコピーではなく原本が必要になります。
さらに登録する印鑑は三文判などではなく実印が必要となる場合が多いです。
3-2. 連帯保証人の本人確認証明書
本人確認証明書で有効となる書類は運転免許証、顔写真つきの住民基本台帳カード、パスポート、健康保険証などがあります。
ただし健康保険証の場合には、顔写真つきの身分証明書が別途必要となる場合もあります。
住民票については本人確認証明書として使用することができません。
国籍が外国の方については外国人登録証明書か外国人登録原票記載事項証明書が必要となります。
ただし外国人登録原票記載事項証明書の場合には、パスポートが別途必要となる場合もあります。
本人確認書類についてはコピーの提出で可能ですが、書類は全て期限内ものでなければなりません。
また外国人登録原票記載事項証明書については発行から3カ月以内のものが望ましいです。
大学生や専門学校生の場合には学生証も必要となる場合があります。
3-3. 収入証明書
収入証明書で有効となる書類は源泉徴収表、住民税課税証明書、確定申告書などがあります。
源泉徴収表とは、源泉徴収したときの所得税額が記載された書類のことです。
基本的に源泉徴収表は勤務先で入手することができます。
源泉徴収表は毎年の年末に入手することができますが、紛失したとしても再発行してもらうことは可能です。
またすでに退職している場合でも以前勤務していた職場に連絡すれば再発行してもらうことはできます。
住民税課税証明書とは、住民税の課税額が記載された書類のことです。
住民税課税証明書は納税を証明する年の1月1日の時点で住んでいた市町村の役所で入手することができます。
もし1月2日以降に別の市町村へ引越しした場合には、前の市町村の役所で入手する必要があります。
確定申告書は1月1日から12月31日の1年間の所得から計算された税金の申告書のことです。
この申告書は税務署に提出しますが、複写については個人で保管することができます。
確定申告書を収入証明として提出する場合には受領印が押された確定申告書の複写を提出することになります。
また連帯保証人の方が年金受給者の場合は収入の証明として年金受給書を使用することもできます。
賃貸契約のときに必要な連帯保証人の書類は上記の3種類の書類ですが、賃貸契約の契約先によって必要書類は異なる場合があります。
また状況によっては契約者と連帯保証人の関係を証明するために戸籍抄本などが必要な場合もありますので、契約の際には必ず確認するようにしましょう。
4. 連帯保証人を立てられない場合
連帯保証人が立てられない場合として次のケースが挙げられます。
- 両親が高齢な上に親戚もいない
- 両親や親戚が既に亡くなっている
- 外国人のため親族が日本にいない
- 両親が親族がいるものの、年金生活者や収入が少ないために連帯保証人の基準を満たさない
このようなケースの場合には連帯保証人を立てるのは極めて困難です。
そのような場合には別の手段を用いることができます。
4-1. 家賃保証会社を連帯保証人とする
家賃保証会社とは部屋を借りる時の連帯保証人を代行する会社のことです。
家賃を滞納して支払いが難しくなった場合でも家賃保証会社が借主に代わって支払いを行ってもらえます。
家賃保証会社を利用するときには、保証料金をあらかじめ家賃保証会社に支払います。
また家賃保証会社を利用するときには契約が必要となりますので、契約前に審査が行われます。
審査の内容は以下の通りです。
- 雇用形態を含めた職種
- 年齢
- 収入
- 以前に部屋を借りたことのある場合には家賃滞納履歴
収入に関しては年収が低くても一定の収入が毎月あれば問題はありませんが、以前に家賃を滞納したことのある方は信用の点でかなり問題視されて、審査に落ちる場合もありますので注意が必要です。
家賃保証会社は高齢者や外国人をはじめ、多くの方に利用されています。
家族の事情で難しい場合には家賃保証会社も一つの方法として検討してください。
4-2. クレジットカード払いが可能な部屋を借りる
不動産の賃貸物件の中にはクレジットカード払いもOKな部屋もあります。
クレジットカードを利用するためには、基本的にカードの審査が行われます。
クレジットカードの審査では収入や雇用状態、過去のクレジットカードに関する支払いの滞納の有無などが調べられます。
そのためクレジットカードを所有しているということは支払い能力があるとみなされて保証人が不要となる場合もあります。
ただしクレジットカード払いの場合には、不動産会社によってはクレジットカード利用の手数料がかかる場合もあります。
5. まとめ
連帯保証人に関する制度は民法でも定められているため、不動産会社が連帯保証人を立てるように要求する場合には拒否することはできません。
一方で連帯保証人は部屋の契約者が家賃や弁償金などの支払いが困難になった場合には必ず支払わなければならない義務があります。
そのため連帯保証人は慎重に選ばなければなりません。
連帯保証人は契約者の親族で収入があり、なおかつ連絡のすぐ取れる人がふさわしいでしょう。
もし何らかの事情があって連帯保証人を立てるのが難しい場合は家賃保証会社に連帯保証人になってもらうことや、連帯保証人の不要なクレジットカード払いの物件を選ぶこともできます。
状況に応じてそうした方法も利用してください。




