「2020年の東京オリンピック開催の年までに、電気自動車の数を100万台まで普及させる」という目標を掲げた日本でしたが、現状はマンションのEV充電器の普及化の目途が全く立たない状況が続いています。
このマンションのEV充電設備が普及できない理由とは何でしょうか?
分譲マンションと賃貸マンションでも事情は異なりますので、比較しながら考えてみましょう。
100年に一度の大転換期を迎えたといわれる自動車産業は、電動化とAI導入の自動運転化の技術開発により、益々発展するであろうことが期待されています。
Electric Vehicle(電気自動車、EV)の普及により、ガソリン車やディーゼル車は市場に出なくなるとすら言われていますが、2018年での日本の電気自動車はどれくらい普及してきているのでしょうか。
今回はマンションに視点を当て、電気自動車の普及の現状と問題点について考えてみたいと思います。
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このページでわかること
1. マンションで電気自動車の充電は可能?
新築マンションでは、電気自動車のためのEV充電器の設置を検討することもあるでしょうが、既存のマンションでの設置数の割合は極めて低く、現在マンションに住んでいる人は電気自動車の所有は検討できない、という実態があります。
この先、ガソリン車に優先して電気自動車が市場に出回ることは既定の事実となっていますが、2018年の日本では電気自動車の購入者の9割が戸建て住宅に住んでいます。
これは電気自動車の価格が高く、戸建てに住んでいる富裕層が購入しているということもありますが、EV充電器がマンションに装備されていない、という現実的な問題もあるのです。
2. マンションに電気自動車の充電設備を導入する方法
電気自動車の普及には、充電スポットの数の増加と、マンションでのEV充電器の設備の標準化、ということがポイントになるでしょう。
実際は、充電スポットの数はガソリンスタンドに迫る勢いがあり、近年にはその数が逆転するのはもはや時間の問題となりつつあります。
残された問題は、マンションへのEV標準設置化の問題だけだといえます。
2-1. 分譲マンションの場合
分譲マンションにEV充電器を新たに設置しようとする場合は、そのマンションの理事会での決議が必要となります。
これが非常に難しい問題なので、多くのマンション理事会では議題にすら上がらないケースがほとんどでしょう。
問題は、「マンションに住んでいる人が、どれくらいの切迫性をもってEV充電器を望むか?」というのが世帯によってまるで違うからです。
たとえば「来年の春、電気自動車への買い替えを検討している」という世帯はごく稀で、ほとんどの世帯の住民が「EV充電器の設置などより、排水管を新しくする方が先だ」と思ったら、それは実現しないのです。
少なくとも、マンション理事会ではそれぞれの規定にもよりますが、最低でも半数以上の賛成が必要です。
当然設置には費用が必要で、「設置費用・ランニングコストはどの費用で負担するのか?」という話し合いが必要になります。
この場合、電気自動車を所有していない世帯では「ウチは別に必要ないよ、だから費用は負担しない」という考えになるでしょう。
それに比較すれば、排水管の老朽化などは全世帯住民の問題であり、切迫した理由になり得ます。
そのため、EV充電器の設置はマンション理事会で話題にはなるものの検討されない、というのが現実なのです。
2-2. 賃貸マンションの場合
賃貸マンションの場合は、シンプルに決定されることが多いでしょう。
分譲マンションと違い、その費用負担はマンションの所有者が行い、決定も所有者の判断に委ねられるからです。
極論すればマンションのオーナーが「これからの時代はEV充電器が必要だ、多少の初期費用は将来的には回収できるほどの付加価値を生み出せる」と考えるのであれば、直ちに工事を開始できます。
それにより、賃貸マンションの付加価値が上がり空室問題などを解決する、家賃収入を上げることができる、などの効果を見込めるかもしれません。
賃貸マンションの住民は、数年単位で当然入替りがあります。
自然と電気自動車の所有者を集めることができるようになるでしょう。
なぜなら、現在のマンションでEV充電器を備えているマンションが少なく、希少価値があるからです。
3. 電気自動車の充電設備があるマンションはどこにある?
2017年の8月に、日産自動車とNEC、大京アステージの3社が共同で、分譲済みマンションへEV充電器を実質無料で設置するプロジェクトを開始し、大きな話題となりました。
EV充電器は、こういった活動で普及させていくしか手段がありません。
マンションが多いのは、土地が少ない都内になります。
たとば東京都では、2030年までに都内の温室効果ガス排気量を削減しなければならない数値があり、電気自動車の普及はその計画には不可欠です。
そのため、普及促進に力を入れなければなりません。
EV充電器を設置する場合には助成金を出す、という仕組みを作り出してはいますが、その出足が遅いように感じられます。
現在でも、EV充電器があるマンションを検索しようとしても、EVを「エレベーター」という認識をしてしまうサイトばかりです。
電気自動車の普及によりどういったメリットがあるかということを、ほとんどの人が知らない印象を受けます。
まずは、その普及にはイメージ戦略が必要不可欠です。
電気自動車のメリットとして「消耗品が少ない」「ブレーキが減らない」「暖房の効きがスムーズ」「デフロスターの効きが良いため雪を溶かしやすく、アイススクレパーが不要」といったことが挙げられますが、こういったガソリン車に対する優位性は、まだまだ一般的に知られていないようです。
環境に優しい電気自動車は、ガソリン車からの脱却の第一歩といえます。
せひ、マンションへのEV充電器の導入促進を進める具体的な手段に取り掛かっていきたいものです。
4. マンションで電気自動車に乗るのが難しい理由と充電設備導入方法まとめ
さてここまで、マンションで電気自動車に乗るのが難しい理由を考えてきました。
やはり世代によっての考え方の違いから、EV充電器の設置普及が遅れているのが日本のマンションの実態のようです。
「電気自動車を使わない世代」である高年齢層の投票数が多いために、多数決で「要らない」もしくは「自分には関係ない話」という結論になってしまう、というのが現状のようです。
まるで日本の縮図を見たような気持ちになってしまいますが、世界的な流れとして電気自動車の普及は確実にそこまでやってきています。
そういった時流に乗り遅れないように対応する手段を考えていきたいものですね。
最後にこの文章をまとめてみたいと思います。
- 国は2020年に電気自動車の数を100万台まで普及させたい
- 電気自動車は地球に優しい
- 電気自動車は、音が静か・消耗品が少ない・暖房冷房がスムーズといった特徴もある
- 東京都は空気をきれいにするため、電気自動車を普及させたい
- 現状、戸建て住宅の持ち主しか電気自動車に乗れない
- 日本のほとんどのマンションにはEV充電器がない、設置も進まない
- マンションでEV充電器の設置が進まないのは、理事会で投票に勝てないから
- 電気自動車に乗らない世代がマンション理事会の投票権を多く持っている
- 賃貸マンションでは、オーナーによる決定が可能なのでEV充電器の設置を進めやすい
- 賃貸マンションでのEV充電器設置は差別化になる
以上、今回は電気自動車の普及について、マンションにある事情に迫ってみました。
海外では、積極的に電気自動車化は進んでいます。
未来のためにこの記事が、EV充電器の設置促進についてみなさんが考える機会となれば幸いです。




