同棲中のカップル、お子さんがまだ小さい家族、ルームシェアやちょっと贅沢な一人暮らしなど、2DKは幅広い層に人気があります。
しかし一つ気になるのが、2DKの退去費用です。
「部屋がちょっと広いから、退去費用が高くなりそうで心配…」という方のために、今回は退去費用のおおよその相場と起こりやすいトラブルをご紹介いたします。
1. 2DKの退去費用の相場はいくら?
ネット上で見られる数字や実際の退去時の体験談などを総合すると、2DKを退去する際の費用は30,000~40,000円あたりが相場のようです。
六畳一間のアパートよりは少し高くなりますが、それでも部屋が多いから倍の費用などになる訳ではありません。
2. 2DKの退去費用の内訳
次に、請求される退去費用の中身を見ていきましょう。
契約にもよりますが、基本的には以下の2点がポイントとなります。
・修繕費
・ハウスクリーニング、害虫駆除代
修繕費は、次にその部屋を使用する借主が快く暮らせるように、部屋の様々な不具合を直すための費用です。
戸のスレやパッキンの傷み、壁や床のヘコミ・キズ・汚れから、入居時に付いていた備品類の故障など、細かな所まで請求対象となります。
ハウスクリーニング・害虫駆除も同じ目的から行われます。
「部屋がそもそも汚れてないし、掃除もしているのになぜ払わなければいけないのか」という声もあるでしょう。
しかしこの点については残念ながら、契約時の条件に「退去時のハウスクリーニング代は借主が負担する」よう最初から書いてある場合がほとんどです。
ですから決まり、常識として飲み込みましょう。
お部屋の広さ、数にどうしても比例しやすいのは、後者のハウスクリーニング代です。
どれだけきれいに使っていてもここで費用が上乗せされるので、狭い間取りの部屋より退去費用が高くつくのはいたし方ないことです。
3. 退去費用が高い?修繕費用の相場とは
2DKのハウスクリーニング代が、もっと小さな部屋よりも高くなる点は問題ないとして、修繕費用はどうなのでしょうか。
この点については、通常何の問題もなく使用していればおよそ20,000円前後か、それより安い場合が多いようです。
実際にネットなどの体験談をみても、修繕費用の請求が10,000円を切るようなことも多く、20,000円より安く済む場合も多くなっています。
しかしこれは、部屋をキレイに使用していたり、立会人との交渉で掛け引きが上手くいった場合の話であり、時々この値段を大きく上回るというケースが生まれます。
故意の損傷があった場合は別として、それでは不当な請求が起こらないようにするには一体どうすれば良いのでしょうか。
4. 賃貸退去時の「原状復帰」ってなに?
交渉をクリーンなものにし、不当な退去費用請求がなく気持ち良く退去するためには「原状復帰」の原則を抑えておかなければなりません。
シンプルに「部屋を借りた時と同じ状態で返す」というルールと捉えて良いでしょう。
この観点から、修繕費として借主への請求対象になるものと、ならないものを区別します。
大まかに分けると、全ての住居の不具合は以下の2つのどちらかに該当します。
・経年劣化
・故意の損傷や破損
まず経年劣化ですが、こちらは特に事故などなく普通に住んでいても起こる不具合を指します。
窓周辺箇所の日焼けや家電排熱による軽度の焼け、浅い戸のスレや壁・床の薄い色落ちなど多岐に渡りますが、これらは全て誰がどう住んでも起こるものであり、使用する上でいたし方ないと見なされます。
ですから借主への請求の対象にはならず、修繕は全て貸主の負担となります。
また、もし目立った汚れが出てきた場合でも、5年を超えるなど長い居住年数がある場合は、この点も加味するのが常識です。
もしこの点を無視して高額請求を受けた場合は、立会人に居住年数をちゃんと確認するようおすすめします。
故意の破損・損傷と見なされるものは、タバコのヤニや明らかに借主の不注意によるキズや汚れなどです。
この場合は素直に認めないと貸主との関係が悪化し、良い事はありません。
自ら申告してスムーズな交渉になるよう心がけてください。
この「原状復帰」の原則は、近年になって行政・法改正により明文化され、ますます基準が明確になっています。
これは借主にとって、不当な請求を跳ね返すことができるようになったという点で、非常に有利な展開です。
大まかで構わないので、国土交通省による「原状復帰をめぐるトラブルとガイドライン」を是非一読しておいてください。
5. 退去費用でよくあるトラブル一覧
退去費用交渉で起こるトラブルの代表例は、壁や床の張替えです。
壁や床の修繕には数十万円の大きな費用がかかることが多く、借主が泣き寝入りする事になるのはほとんどにおいてこのパターンです。
ここで原因別に、対策を考えておきましょう。
・色落ち、黄ばみ
壁の色落ちや黄ばみはハッキリとした基準がなく、そこにつけ込んで高額請求される事がとても多いのです。
このトラブルを避けるためには、ホームセンターなどでクリーニング用品を購入し、退去費用交渉までに出来る限り清掃をしておく事です。
もし一人暮らしの場合2DK清掃は結構な負担になるので、できれば家族や友人に協力を依頼しましょう。
一人だと体力・集中力を維持するのが難しく、間に合わなかったり見落としが発生するからです。
・タバコや油汚れ
部屋で喫煙していたり、油汚れを定期的に清掃していないと大きな弱みとなります。
汚れの程度や居住年数に関係なく、これを理由に不当請求を受けても強く言い返せません。
対策としては、もちろんまず部屋で喫煙をしないことです。
タバコに含まれるタールは接着剤のようにベトベトした成分なので、黄ばみや汚れを全て取り除くのはまず不可能だと覚えておきましょう。
また油汚れについても仕方ないと高をくくるのではなく、出来る限りクリーナーで清掃をします。
油は放っておけばおくほど固着して取れにくく、堆積するのでやっかいな存在です。
日頃からこまめに清掃しておくことが大切です。
もし万一喫煙していたり油汚れの清掃をしていなくても、まだ争点は残っています。
それは、
- 壁・床の交換で本当にここまで費用がかかるのか
- 居住年数が1年未満など短い場合、本当に交換が必要なのか
という2点です。
ここに関しては貸主と借主で言い争っても無駄なので、敷金回収代行業者に依頼しましょう。
第三者が間に入ることで、基準をニュートラルにして無用なトラブルを避けることができるからです。
手数料や交渉成功時は追加報酬金が発生しますが、そこは我慢しましょう。
料金相場は回収した敷金の20%前後を見ておきましょう。
あくまでそもそもの落ち度は借主にあるので、このくらいの代償は覚悟しましょう。
・畳などの汚れ
日焼けや少々のスレは経年劣化とみなされます。
何かをこぼしてしまったシミや落下物によるキズ、重い物を引きずってしまった跡などは当然ながら借主の負担となります。
ここで気をつけたいのは、壁の場合と基本的に同じですが、特に畳の交換費用が「汚したり傷つけたものだけ」でなく「全て交換」となっている場合です。
借主が負担しなければならないのは、借主の過失による畳だけです。
当たり前のように「全部交換しなければなりませんね」「1枚だけ交換すると変」など根拠の薄いデタラメな交渉を持ち掛けられた時は即刻交渉を中断し、徹底抗戦の姿勢を取ります。
この場合、有効となるのは前述の敷金回収代行業者のほかに、国民生活センターへの相談も挙げられます。
専門の相談員が消費生活に関わる様々な相談を受け、必要な対処方法を一緒に考えてくれるとても有り難いサービスです。
自分だけではどうにもならない場合は、まずはホットライン188に電話して最寄りのセンターの案内を受け、この国民生活センターへ足を運びます。
・冷蔵庫焼け
冷蔵庫は使用している限り、常に排熱しています。
主に熱は背面から出ていくので、これが壁面に当たり続けると「冷蔵庫焼け」を起こし、壁が灰色や黒色に変色します。
それでは、この現象は全て借主側に落ち度があるのかというと、実はそうでもありません。
何故なら、冷蔵庫は現代の生活において使用がもはや必須のこととなっており、その上での汚れは前述の「経年劣化」と見なされるからです。
居住年数も加味しながら、少しくらいの冷蔵庫焼けは見逃すのが常識であることに留意します。
ですが、ここで注意したいのが冷蔵庫の位置と使用年数です。
冷蔵庫の位置があまりにも壁面に近いと、冷蔵庫焼けを起こしやすく、家電そのものとしての作動効率も悪くなります。
せめて手が一つ入るくらいのスペースを壁との間に空けておきましょう。
続いて使用年数ですが、こちらは年数の経った古い冷蔵庫ほど熱をたくさん排出するという点に注意します。
いくら安いからといって、適正年数を過ぎた製品や故障寸前の製品を使用していると、あっという間に壁や床が真っ黒になりますよ。
これは嘘ではなく、本当にビックリするくらい黒くなります。
・水周りの汚れ
シンク・風呂場・洗面所など水周りの水垢やカビは残念ながら、使用者が管理を怠っているものと見なされます。
よほど湿気の多い地域や部屋は、その旨を訴えると考慮に入れられる場合もありますが、そうでない場合は要注意です。
対策として、特に冬場の結露は毎日必ずタオルで拭き取っておきます。
部屋の内外の温度差で結露が発生すると、特に窓のゴムパッキンなどはあっという間に劣化し、カビが発生します。
こうなるともう手遅れなので、今のうちから朝に一度窓の結露を拭き取る習慣をつけておきましょう。
いずれのトラブルも、あまりにも交渉が難航してきた場合は、内容証明郵便や少額訴訟という手が考えられます。
内容証明郵便は、必要事項と借主の主張を記入した書面を3部、全く同じものを用意して郵便局へ申し出て、貸主・郵便局・借主の3者で共有するという方法です。
強制力は裁判などと比べると小さいのですが、郵便局という第三者をはさみ、書類に公的な性質を帯びさせる事でその後のやり取りがスムーズになります。
これは貸主への牽制となり、もし裁判沙汰になった時に、必要書類と一緒に添付すると効果的です。
手続きの際には、ネットに無料のテンプレートがありますのでこちらを活用すると良いでしょう。
この他に、貸主(送り先)の住所を記した封筒と手数料(1,000~2,000円ほど)、印鑑が必要となります。
次に少額訴訟についてですが、これは600,000円以下の債権回収をめぐって簡易裁判で訴訟するものです。
裁判と聞くと何か物々しい印象を受けますが、少額訴訟は審判が一回のみで手続きも非常にスムーズで、手数料も10,000円かからない程度なので、そこまで気構える必要はありません。
しっかりと拘束力のある手法をもって短期間で話が終わりますので、退去費用に関するトラブル解決にピッタリの方法と言えるでしょう。
6. 2DKの退去費用とトラブル事例まとめ
2DKの退去費用の相場は、普通に使用していて30,000~50,000円ほどです。
この額を大きく上回る場合は、言われるがままになるのではなく然るべき手段を取りましょう。
友人や家族、専門家への相談も臆する事なく行ってください。
大切なのは、一つでも納得のいかない事があれば「サインしない・承諾しない」ことです。
退去費用見積もりは、借主が書類にサインをしなければ成立しません。
黙ってサインするのではなく、一つ一つの事項について質問・主張を確実に行います。
こうする事でずいぶん立会人を牽制する事ができますし、しつこい・面倒くさい・手強い相手を演出することで、向こうも手を引いてくれる場合が非常に多いのです。
たった一言で数万円も退去費用の額が変わる、などという事は普通に起きます。
無知・優柔不断な印象を与えないようにしましょう。
もし言い合うのが面倒くさい、嫌な場合は国民生活センターや、書類でのやり取りにいきなり飛んでも問題はありません。
とにかく、安易にサインをせずに交渉を止めればよいのです。
もちろん、何でもかんでも文句をぶちまけると、逆効果や余計なやり取りが増える場合もあります。
ここでご紹介した知識や国土交通省のガイドラインを参照し、退去費用交渉前にしっかりと予習しておく事をお忘れなく。
裏付けのある主張は貸主への大きな牽制なのです。
また住居に関するトラブルは、借主側の日頃の心がけによって大部分を防ぐ事ができます。
- 清掃
- 冬の結露拭き
- タバコを吸わない
の3点をベースに、退去時の事まで想定した生活を送りましょう。




